慶應大学 小論文対策 第二十三章 慶應SFCの対策について

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第二十三章 慶應SFCの対策について

 

はじめに
 以下の内容は、本章の最後にご紹介する内容ですが、最初にご紹介しておきましょう。慶應大学SFCが、どのように学生を選抜するのかについて、慶應大学のウェブサイトに書かれています。アドミッションポリシーというのは、「入学者受け入れ方針」のことです。もっと限界まで誤解を恐れずにカンタンに言えば、「合格・不合格を決める際の判断基準」と言えます。

 

※蛍光ペンは私が引きました。

 

【総合政策学部】
------ここから-----
総合政策学部アドミッションポリシー
総合政策学部は「実践知」を理念とし、「問題発見・解決」に拘る学生を求めます。問題を発見・分析し、解決の処方箋を作り実行するプロセスを主体的に体験し、社会で現実問題の解決に活躍する事を期待します。従って入学試験の重要な判定基準は、自主的な思考力、発想力、構想力、実行力の有無です。「SFCでこんな事に取り組み学びたい」という問題意識に基づいて、自らの手で未来を拓く力を磨く意欲ある学生を求めます。
-----ここまで-----

以下と比較してみましょう。

 

【環境情報学部】
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環境情報学部アドミッションポリシー
ひとつの学問分野にとらわれることなく幅広い視野を持ち、地球的規模で問題発見・解決できる創造者でありリーダーを目指そうとする学生を歓迎します。環境情報学部の理念や研究内容をよく理解した上で、「SFCでこんなことをやってみたい」という問題意識を持って入学してくれることを願っています。SFCの教育環境や先端プロジェクトなどあらゆるリソースを積極的に活用し、「自らの手で未来を拓く力を磨いてほしい」と期待しています。
-----ここまで-----



ここに書かれている内容について、本章では、対策案とセットで解説を行います。

 

23-1 原因を掘り下げても評価が下がる
 何らかの問題が発生する時には、必ず原因があるのであるからして、原因の原因をたどっていくと、より一層根本的な原因にたどりつく・・・・などということは全くありません。これはよくある根本的なSFC対策の間違いの一つです。
 本来、順番にお話しすべきですが、ウェブブックという少し変わった本なので、先に第26章を読んでみましょう。「よくある勘違い」という項目で、動画を含めて詳しく解説しています。
 原因は勝手に推測しても意味がありません。原因はリサーチして突き止めるべきものです。問題解決が難しいのはこのリサーチのプロセスです。単に勝手に推測するだけなら、小学生でもできます。試験にはなりません。
 巷に出回っている解法理論は、筑波大学の名誉教授が不適当と言っているように、機能しないものがたくさんあるので注意が必要です。
 原因の原因をたくさん考えていると、何やら深いことをやっていると感じる人もいるようです。原因を考えない考察よりも、原因を考えた考察の方が、ハイレベルなのだろうと考えている人もいるようです。

 

 この点については、次の章で詳しくお話ししますので、この章では、大切な部分だけについて概略を述べます。次の章は、以下のページになります。

 

「大丈夫」「上がる」「伸びる」というセリフが危険?

 点数が上がるなら何でもいいと思っているあなたが知っておくべきことがあります。 「点数が上がる」と言わない指導者はいません。点数が上がるどころか、むしろ点数が下がることも珍しくはありません。本当はどのように考えなければならないのかを以下のサイトで詳しく説明しました。



・点数が35点程度まで下がってしまう事例。
・慶應主席合格の弁護士が思考をパターンにはめるな!という理由とは?
・受かる指導・落ちる指導

詳しくはこちら

 

※ただし、設問で、「原因を考えた上で解決策を述べよ」などと、明確に指示がある場合はこの限りではありません。適当に考えた原因も教員の力で優劣をつけるとの趣旨だと理解しましょう。

23-2 巷の理論は「ごちゃまぜ理論」
 この手の指導を行う講師の指導内容を精査すると、いろいろと勘違いをしているのがよく分かります。問題解決の思考プロセスと、論文執筆の作法をごちゃまぜに考えてしまっている人、学術の作法と、問題解決学の作法をごちゃまぜにしてしまっている人、有名な大学教員が書いた小論文の解答例を表面的に受け取ってしまい、勘違いしている人などです。
 物事を考える際に、どのように考えればミスを減らすことができるのかということや、プレゼンの問題で評価を受けること、論文テストで高い点数をたたき出すことは、別の問題です。全部ごちゃまぜにすると、原因を考えて、対策案を考えて書くと高評価につながるというトンデモな理論が生まれるのでしょう。おそらく世界的に見ても、このようなハチャメチャな状態が起こっているのは日本くらいだと思われます。

23-3「SFCは問題解決を志向するので問題解決をなぞれ」の嘘とは?
 よくある言説は、SFCは問題解決を志向する学部なので、問題解決学の思考アプローチをなぞればよいというものです。この言説が危険なのは、問題解決の思考アプローチをなぞってしまっているところです。なぞることには意味がありません。
 問題解決のプロセスにはステップがあります。しかし、それはあくまでもステップにすぎません。実質的に重要なことは、問題解決を図る上で、問題を見て、分析する過程で、論理と感性をフルに働かせることで、妥当な分析を行うことです。妥当な分析とは、高度な分析のことです。高度な分析とは、間違わない、正確な分析のことを指します。つまり、この分析のプロセスで、原因を考えてみたり、原因の原因を考えてみたりしている時点で、アウトだということです。なぜならば、原因を考えても、原因の原因を考えても、「より一層根本的な原因」にはたどりつけないからです。
 どういうことなのか気になる人は以下の動画を見てみましょう。

 

【要点】なぜ本質的な問題に対処する必要があるのでしょうか?



再生速度変更可能です⇒

 

 なぞることに意味が無いとはこのことを指します。単に問題解決学のプロセスだけをマネても意味がまったくないということです。

23-4 できなくても、悩まなくてOK
 そもそも、問題解決に関しては世界一という評価を得ているマッキンゼーなどの機関は、世界を代表する大企業から、問題解決の依頼を受けて、一か月に数千万円請求して、正確な分析結果と戦略の立案を請け負っています。みなさんが、今目の前の問題を正確にすぐに分析できないからといって、何も悩む必要はありません。できなくて当たり前です。また、手っ取り早い分析法など存在しません。分析力はスキルの問題であり、受験業界に関して何が問題かと言えば、その分析についてのスキルアップを指導できる人物が限られていることが問題と言えます。

23-5 中途半端な問題解決法がはびこっている
 よくあるハウツー本や、よくあるSFC対策の指導が不適当であるのは、問題解決そのものをかなり中途半端に理解してしまっているからです。
 問題を解決するプロセスが原因を明らかにした後に、対策案を立案するのだから、原因を考えてみようなどというのもその典型と言えます。もともと、問題解決に、原因が必要などというのは、理論にすぎません。威力のある解決策を思いつけばそれでいいのです。問題が消し飛ぶほどのインパクトのある施策が打てればなぜ問題が発生していたのかなどどうでもいいことです。

 

 もう少しいい方を変えれば、対策案の方向性を考える時に、原因ありきになっているという原因至上主義的な思考プロセスは、問題を解決する上で障害になることすらあるということでもあります。自分の発想力が原因にしばられてしまうと、うまく考えることができなくなってしまうこともあります。



 例えば、アップルの創業者故スティーブ・ジョブズ氏が、当時のアップル社の業績を回復させるために、問題点を無視し、新規事業に事業リソースを投下し、業績をV字回復させたのは有名な話です。問題を解決するために、問題点を見なければならないなどというルールはどこにも存在しません。理論にすぎないのです。

 

 原因を書いているので、正解チックなことを書いているなどとはゆめゆめ思わないようにしましょう。特に〇〇の原因は〇〇だなどの主張(意見提示)は、なんら主張に新規性がなく、(たくさんある原因の中の一つがこれだなどと言っても当たり前すぎる)と思われるのがオチなのでやめましょう。意見に新規性が無いのは、論文としては価値が無いというのが一般的な論文の評価軸です。論文の命は独創性です。

 

 一般的に、大学側は、受験生の素養を見たいのに、受験生の側は受かることだけを考えています。受験生は受かるための正解チックなことに興味があるので、正解チックなことを書こうとします。しかし、その正解チックなことを書かせるのであれば、そもそも小論文試験という科目を用意する意義が大きく損なわれるため、大学側はみなさんに「正解チックなこと」を書こうとする態度で試験にのぞんでほしいとは考えていないでしょう。このような点にも注意が必要です。

23-6 何が分かれば意思決定できるのか?

受かりたければ、(何が分かれば意思決定できるのか?)と頭を働かせる

 試験にもすぐに役立つ重要な視点をお話ししましょう。問題解決の勘所の中で重要なことは、「何が分かれば意思決定できるのか」です。物事の原因を考える前に、こちらを考える必要があります。試験で議論のお題を解くにせよ、プレゼンの問題を解くにせよ、問題発見・問題解決の問題を解くにせよ、みなさんがそこでやるのは、「意思決定」です。

 

 慶應SFCは全部同じと考えていると、見失う視点があります。例えば、2013年の総合政策学部の問題で、「キーワード」を書かせる問題がありますが、この問題については、なんのことなのか、出題意図をまったく読めない人も多いようです。問題解決のステップをあらく理解しているとまったく理解できなくなるのはこのようなことです。

 

 物事を分析的に見て、戦略を立案する際には、「何が分かれば意思決定できるのか」という視点が必ず必要になります。その理由は、私たちはどのような情報でも、ほぼ無限に手に入れることができるからです。例えば、あなたがもし仮に総理大臣だった場合、日本の経済を立て直すのに、どのような情報が必要でしょうか。このような問いは言い換えれば、日本国が発展するために、何らかの施策を打つ際に、重要となる前提は何かということです。問題の原因が何かではありません。原因を考える前に、現状を分析する必要があります。原因というのは、現状分析の一つの手段に過ぎません。日本を取り巻く問題はほぼ無限に存在するので、何が問題なのかを把握する必要があります。
日本の経済を立て直すのであれば、情報収集が必要でしょう。しかし、政治や経済について、情報を集めると言っても国家が集めれば、何十万、何百万というデータがカンタンに集まってしまいます。情報が多ければ多いほど、頭は混乱してくるでしょう。頭が混乱する人は何も分析などできないのです。言い換えれば、何が重要な情報で、何が重要な情報ではないのかを見極めていくステップが必要になるということです。その必要不要の見極めは、情報のあたり付から始まります。

 

 原因至上主義的な原因ありきの思考方法と、状況分析の思考法の違いはどこにあるのでしょうか。両者の違いは、何が問題なのかという問題を発見することができる思考と、問題を発見できない思考の違いです。かんたんに言えばこういうことです。

 

・原因ありきの思考・・・何が問題なのかについては、前提として固定されている。
・状況分析の思考法・・・何が問題なのかは、まだ定義されていないからこそ分析が必要。

 

 ここまでの話を表にまとめるとこういうことです。

 

総合政策学部 アドミッションポリシー:問題発見・問題解決

求められる能力:自主的な思考力・発想力・構想力・実行力(分析力)
環境情報学部 アドミッションポリシー:創造者・リーダー

求められる能力:(創造性・構想力)

 

 言い換えれば、「環境情報で構想を描く際に、原因を考えてから構想を描いてもいい」というだけであり、原因を考えたから一段と優れた構想になるかどうかと言えば、そうとは限らないということになります。

単なるかっこつけで使われることが多い

 むしろ、私が拙著「小論文の教科書」で述べている通り、状況分析の思考法というのは、どちらかと言えば、分析から思考が開始されるため、過去のデータを重視する質実剛健な思考になりがちです。未来志向というよりは、過去志向の思考哲学です。したがって、構想力が問われる環境情報学部では、本来原因を考えて対策案を考えるという思考はむしろ水と油のような部分(も)存在するという理解が大切になります。しかし、一般的に「分析」だとか、「戦略」などという言葉は、「フレームワーク」などという言葉と同じくどこかしら、かっこうがいい響きがあるので、誰でも好んで使いたがるのです。だからこそ、あまり分析の重要性は総合政策学部ほど高くない環境情報学部についても、分析が大切だと教える講師が出てきます。
そうやって戦略や分析などという言葉が一人歩きをはじめ、それでは「戦略」とは何か、あるいは、「分析」とは何かという本質的なことを問われた時に何も答えられない人が大変多いのです。それもそのはずです。言葉がかっこいいから戦略チックな話や分析チックな話が展開されているだけであり、そのやり方が雑で、あいまいな理解のまま、かなり適当に考察されていることがほとんどだからです。物事の本質がわかっていないということは、大変危険なことです。

 

 それでは、日本国を取り巻く状況の内、何が重要な意思決定材料になるのでしょうか。日本国の国家戦略について説明した4つの文章の中からキーワードを選ぶということは、戦略設計の重要判断基準は何かを選ぶということです。問題を解決するには、私が拙著「小論文の教科書」で説明しているように、「情報のあたり付」という作業が必要になってきます。何が大切で何が大切ではないのかについて、感性を働かせて、考える必要があります。
 何がわかれば意思決定できるのかということは、言い換えれば、重要判断基準は何かということです。総合政策学部の問題が環境情報学部と大きく違うのはこの点です。もちろん、今後は傾向が変わるかもしれませんが、少なくとも過去20年分位上の両学部の過去問題の解答例を作ってきた経験から言えば、露骨にこの点は両学部で違います。アドミッションポリシーで述べられている通りに問題が作られています。

重要判断基準を見つける能力は露骨にセンスを求められる(総合政策学部について)

 環境情報にだけ合格した人は、小論文試験になぜセンスが役立つのかあまり理解していないことがあるのかもしれません。例えば、今の日本経済を立て直すポイントとして、政治と経済を外観して何がポイントなのか言ってみてくださいと質問すれば、その人のセンスがわかります。問題を発見するプロセスで、「情報のあたり付」という作業が必要と私はここで言いましたが、情報のあたり付とは、仮説思考のことであり、感性を働かせることで、直感的に見つけることができる性質のものなのです。もちろん、感性を働かせなければどうにもならないというわけではありません。しかし、感性を働かせる人は推論能力が高まります。私は、大学院で推論能力の研究を行っていました。推論能力が高い人は、感性的に推論を働かせる人であることが私の行った研究でわかったことの一つです。小論文であなたがやらされているのは、広義の意思決定であり、推論作業です。推論作業を行う段階で、感性を働かせないということは、ほぼ確実に推論能力が下がる、思考力が下がるということなのです。かつて自民党と民主党のマニュフェストについて、重要判断基準を書かせる問題も総合政策学部で出題されていますが、これも同じです。ざっと眺めて何が重要判断基準なのかを見極めていくことが大切です。このような作業をするときの頭の働かせ方について、不適当なことを教えられていくとますます考えることができなくなっていきます。
 センスがないからセンスがなくてもどうにかなる方法にかけようと考えれば、そのどうにかなるという方法が効果的ではない場合、失敗します。センスがない場合、センスが機能しやすい思考法をマスターしていくことが有効になります。センスが求められる現場で、左脳的な分析重視の思考をすると、思考力がダウンすることは研究でもわかっています。原因が何かを考えてみるような限定的な思考は、分析的な頭の働かせ方の一形態かもしれませんが、それは左脳的な頭の働かせ方です。右脳的な感性を用いた思考を勉強していくことが重要になるでしょう。
 また、ここまでに述べてきたように、問題を発見する能力を問われている問題で、問題が何かについてすでに決めつけているような頭の働かせ方(原因が何かを考えるやり方)は、機能不全を起こしやすいと言えます。問題が何かを発見しなければならないのに、問題が発生する原因を考えようとしているわけですから、当然と言えます。これは原理的な話です。

意味付けや解釈はどうにでもなるからこそ、論理的に整合性があるかをチェック

 ここまでに私が解説してきたことは、環境情報も同じだという「解釈論」で無理やり説明されてしまうことがあるようですが、むしろ環境情報学部は、情報のあたり付などを求めず、ストレートに商品企画やサービス構想を述べさせることが少なくありません。原因が何かを考えさせられるのは(原因が何かなどどうでもいいと言ってしまえばそれまでですが、それはここまでの23-7の解説を読んだあなたなら分かるでしょう。)総合政策学部の方です。環境情報学部でも、原因を考えれば点が高いのだという解釈は、まさしくここまでに説明した意味で、「単なる解釈論」だと言えます。物事はどのようにも意味付けができるので、コレコレなのでこうなのだという人はいくらでも出てきます。しかし、私達が考えなければならないのは、その言説がトータルで論理的整合性を持つかです。総合政策学部は、特に論理が重視されます。論理思考ができない人は受かりにくい学部です。○○なので○○だという言説は溢れていますが、トータルに妥当な論理的整合性が高い言説かどうかを見極めていくことが大切です。

中性的な書き方は、(環)と(総)の両方に合格しにくい(要は中途半端になる。)

 ここまでにお話したことを、少しまとめましょう。要は、SFCは同じ学部なので、総も環も同じようにやっていけばいいという考え方は、どこがまずいかと言えば、両方とも中途半端になるので突破力が失われるということです。もちろん、どんな指針でやっていっても合格することはあるでしょう。
原因を書いて対策案を書くというやり方は、特に環境情報の場合、3年に一度ほどスポッとなかなかいい具合にはまることもあります。だからこそ私はこの点について、「本には書けない慶應小論文合格バイブル」という無料の冊子で言及していたほどです。しかし、私はメインの指導にはしていませんでした。その理由は、感覚的にやっていかないと、俗に言う「やばい」状態になる書き方だからです。

 ここで実際に問題を一つ考えてみましょう。

問題

未来の人が使う新しいバッグを考えなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかして、今スクロールして、私の答えを見ようとしていませんか?

 

 

図星ですか?
 そういうズル的なことはせずに、3~5分を使ってトレーニングしてみましょう。前の部分を読んで下さい。頭の使い方を変えるんですよ。考える練習はどこでもできますが、ここで得た学びについて強く意識付ける練習は今しかできません。強く印象づけられないと学びになりにくいですよ。

 

 

いいでしょうか?

 

 添削をしていて、それなりによく書けている答案でも、環境情報学部の問題を「原因→対策案」という形で書いている答案は何か物足りないなと感じることが少なくありません。その理由は、一言で言うと、発想がこじんまりしているということに尽きます。小粒なのです。その理由は原因主義的思考だからです。その原因主義的思考を教え込まれているので発想が貧困化してしまい、小粒な人間になってしまっているということです。チマチマ考える癖が頭にこびりつき、これが正解なのでこれしか評価されないと強く思い込んでしまっています。大変悲劇的な状況であるため、SFC受験生ならば早急に変えていく必要があると私は考えます。
 本来例えば、特定のカバンについての企画を考えるとき、最大の問題点は、「カバンが売れない」ということです。飽和状態になった市場の中で、カバンが売れない時に大事なことはまず売れるということです。しかし原因主義的思考の人は、カバンの何らかの問題点を探そうとします。人がほしいものを考える前に、今の路線(つまり、人が欲しくないものの延長線上)で考えるということです。
 実際に添削をしていて気づいたことですが、このカバンの問題点の原因は何かなどと考えている子の答案は、大変市場が狭い中で発想してしまっているものが目立ちます。例えば、バッグの中にバッグを入れている人が抱えている問題点のうち、原因は何か・・・というように、バッグインバッグを使っている人しか見向きもしないような企画を掘り下げて考えており、それが仮にまあまあだったとしても、企画としての魅力度がそもそも低くなってしまうような発想をしていることが少なくありません。
 これはSFCに合格するコツの一つですが、対象市場が小さいということは、問題解決を行う上でコスト負担者が現れにくいということなので、原理的に企画の魅力度が下がるという仕組みがあります。ビッグデータとか、Iotにからめていけばいいという発想は、この意味で、あまり効果的ではないと言えます。要はビッグデータやIot、人工知能はこれからの時代誰でも考えることなので、企画にからめること自体には意味がありません。いってみれば、単にからめた思考というのは、出版社に務めている人が、電子書籍のことを毎日考えるくらいに当たり前すぎることであり、発想に新規性が無いので、そのような点で評価するわけにはいかないでしょう。
 また、環境情報=ITかどうかが気になっている人もいるようですが、これも気にする必要はありません。例えば、今回のお題であれば、宇宙で使うバッグを考えてもいいでしょう。宇宙空間ではどのようなニーズがあるのかについて、この場合考えることが大切になります。コスト負担者の話を思い出してください。


 上記の意味で、慶應SFCは「問題発見・問題解決」で対応するなどと考えるのも、思考をこじんまりさせます。大切なことは、思考の型で対応するのではなく、スキルレベルを高めることです。受験産業の論理に振り回されないことです。

 

 

 もともと、今回のお題は、私が冬季講習用の授業を用意している際に思いついたものです。ホワイトボードに理由を考えることができないという悩みがある人がいるようなので、かっちり考えるためのコツを伝授するためにいろいろと書いていた時に思い浮かびました。今回の問題については、小論文のコンテストを実施したので、皆さんからいただいた小論文の答案をこちらのサイトでご紹介しておきますね。




 

【牛山による解答例】
 私は移動式のロボットバッグを提案したい。「移動式ロボットバッグ」とは、バッグの使用者が移動する際に、移動者について動くものである。利用者が保有するセンサーに反応し、このロボットバッグは移動する。走行はローラーを基本とするが、階段には四足歩行で対応する。走行を可能にする足元の部位は、バッグ部分と離脱可能な作りとなっている。この「足元の部位」は、自動走行によって、自宅へ帰ることもでき、呼び出しを行えば、自宅から自動走行によって使用者がいる場所までこのバッグは移動する。(通常使用の際には、バッグは使用者が椅子に座ると近くに座るように待機する。)バッテリーは未来の社会における充電ステーションで、自動で行われる仕組みである。本ロボットは一般家庭向けに開発された汎用性の高い執事型モデルであり、未来の社会ではホームサーバーと連携した人工知能を搭載している。出かける前には、このロボットバッグは、家庭内のアイテムに取り付けられた超小型のICタグと連動したホームサーバーの情報を介して、忘れ物が予想される場合、忘れ物があるリスクを主人に伝える。以上が、私が提案するロボットバッグである。
 未来におけるロボット産業の製品には、一般家庭を対象とした様々なモデルのロボットが登場していると考えられる。身辺の世話を行うロボット、愛玩用のペット型モデルロボット、自宅外での作業に耐えられる汎用性の高いパーソナルロボットなどである。汎用性の高いパーソナルロボットは、人間のパートナーとして、PCなどの外部記憶装置、スマートフォンの代わりとなる通信装置、子供などの身辺を警護する防犯装置、バッグなどの所有物を厳重に保管する保管装置、重要な判断について相談された時のための人工知能、外国人との会話のための同時翻訳機能などをワンストップ的に実装していると考えられる。未来の社会では、書籍、本などを人は持ち歩く必要がないため、最低限の小物だけをこれらのパーソナルロボットが持てばよい。したがって未来人は、一般的に手ぶらで外出していると考えられる。

 

 総合政策学部では、絶対にこういう路線では書かないと思いますが、もし私が環境情報学部を受験する際に、未来の新しいカバンを考えるなら、おそらくですが、自分についてくるロボットのバッグを提案すると思います。一般的なバッグの改良品なら、既存のバッグと競合するでしょう。また環境情報で考える意味も少なくなります。近い未来、召使のように、物を持つホテルスタッフのようなロボットは開発されると思います。お掃除ロボットは今の時代、各家庭に最低1台くらいあるかもしれませんね。将来は、一人一台の召使ロボットができると思いますね。

 馬鹿げていると思いますか?

 

 かつて車が地球の上を走ると言った人、一人一台くらい保有するようになると言った人はキチガイだと思われました。スマートフォンでネットや電話ができると言った人は奇人変人だと思われたでしょう。今の時代ドローンが商品を配達する時代です。工場の中では、ロボットが商品の仕分けを行い、自動で配送手続きが行われています。安価に歩行用ロボットが開発されれば、足に車輪がついていようがなんだろうが、かわいければ十分商品価値があるかもしれません。今の時代を基準に考える人は、SFCには向いていません。昔は、今の時代コメディアンがギャグにするほど、最先端でかっこよかったのが、「でかい携帯電話」だったのです。平野ノラさんが「シモシモ?」「ぶっとび~」「おったまげ~」と言って茶の間をわかせていますが、(信じられないかもしれませんが)あれがクールだったのです。今の時代から見れば、あの肩パッドもでかすぎる携帯電話もギャグでしかありません。ひるがえって現代社会に目を転じれば、今の時代の常識は未来人からみればギャグになるということです。今みなさんはたいへん若いので流行の最先端をいっているでしょう。しかし、将来中年になる頃には、その時の若い世代からおじさん、おばさん扱いをされ、その後、おじいさん、おばあさん扱いをされるようになります。この感覚をリアルに研ぎ澄ませ、今の時代の当たり前を頭から完全に消すことが大切です。先入観になってしまうからです。

 

 頭を働かせる時のコツの一つは、時代が変わっても変わらないことを考えることです。数千年前の王族も、自分で荷物を持つことをクールとは考えていませんでした。ブタカバンなどという言葉もありますが、カバンがブタ状態(パンパンになっていること)で、重たい荷物を苦しそうに運ぶのはクールではありません。数千年前と変わらない感覚もあるということです。それでは未来はどうでしょうか。未来人は自分で重たい荷物を持ち、コロコロさせて、キャスター付きバッグを引きずるのがかっこいいでしょうか。大きすぎるキャスター付きバッグを持っているビジネスマンはどうひいきめに見てもできる印象はありません。

 自分についてくるロボットがあれば、これは実質的なバッグになります。「名刺お願い」と言えば、スッと名刺が出てきて、「火」と言えば、タバコの火をつけてくれる。(まあ、こんなホストのような機能はいらないかもしれませんが、少なくとも100年後は絶対にそうなっているでしょう。)「灰皿」と言えば、たばこをぷかぷかしている前に、スッと灰皿がでてくるでしょう。「ありがとう」と言えば、「どういたしまして。ご主人様のためなら、火の中、水の中、なんでもやります。」などと言うかもしれません。冗談レベル75%程度に設定しておけばこんな軽口もたたくロボットになるでしょう。気に入らなければ、冗談レベルを下げれば、紳士的なロボットになるのでしょう。

 

 

もしかして、

 

そんなことがあるか!とあなたは思いましたか?

 

 

今の時代、私の家で使っているお掃除ロボットはシャープの製品ですが、関西弁機能があります。関西弁機能をオフにしておくと、「通ります~」などと言って走行し、壁にぶつかると「いてッ」と言います。関西弁モードをオンにすると、「ちょっとどいてや~」と言って走行し、壁にぶつかると「あいたっ」と言うわけです。冗談でもなんでもなく、年商数兆円の上場企業が、こういう製品を真剣に開発しているのです。人の欲求に沿うように、製品開発は進められ続けます。

 

楽をしたい、クールでいたい、楽しく過ごしたいというのは、普遍的な欲求です。こういうところから、人類の社会がどうなっていくのかを考えてみましょう。

 

ちなみに、バッグインバッグの改良品の場合、数千個も売れればよい方かもしれませんが、ロボットのバッグが受け入れられた場合、対象市場はどんなに少なく見積もっても数十億人レベルになるでしょう。今後、世界の人口が90億人を超えていきます。今の時代スマホは一人一台になっていますね。ロボットもそうなるでしょう。

 

ここまでの話で、私は何か問題の原因を考えましたか?考えていませんね。

原因を考えたら正解だとか、原因を考えたら差がつくというのは、理論です。現実にはそんなことはまったくないということです。そして、特に環境情報学部については、アドミッションポリシーにも書かれているように、地球規模で問題を解決する人材が求められています。原因を考えてはダメということではありません。要はバランスです。そして、頭の働かせ方を変えることです。

私は約1分程度でこの企画を思いつきましたが、感性的にしか考えていません。センスを働かせるように考えなければ発想は柔らかくなっていきません。

現実に答案を設計する時にはいくつか付加価値をつけ、論文の答案にふさわしいものに仕上げていきます。このあたりにはいくつもコツがあるのですが、それはまた別の機会にお話しましょう。まずは私が書いた本を読み、無料情報やメルマガの情報を得てください。そして、慶應SFCの過去問題の解答例を読んでください。これだけでも数十年分あります。

 

すぐに原因を考えてしまう原因主義的な発想は、言ってみれば、環境情報学部でおそらくはもっともほしいであろうスティーブ・ジョブズのような発想とは真逆の思考と言えます。言い換えると、カイゼン思考なのです。いいですか、ここからは思考哲学の問題なので、がんばってついてきてみてください。

 

日本からイノベーターが現れない本当の理由

 あなたが、新製品の開発について企画部に所属していたとしましょう。今目の前に、かつて主流であったMDであるとか、ウォークマンといったテープによる再生機材があったとします。この製品がうまく使えない原因は何か?というようなことをシコシコ考えても、イノベーションは生まれませんよ。そうやって、ガサーッと足元をすくわれたのが日本企業なのです。
 日本の技術力は世界でもピカ一でした。エコノミックアニマルなどと言われながらも、高い品質の製品を作り、日本企業は世界を席巻してきたのです。しかし、市場が飽和状態になり、商品に付加価値をつけなければ売れない時代になると、途端に日本は弱くなります。日本人の弱さは、改善にはめっぽう強かったものの、新時代を切り開くフロントラインで活躍する発想に秀でた人材がいなかったことにあると言えます。超成熟型社会では、日本は弱いのです。
 ルンバという掃除機ロボットが世界的な大ヒットとなりましたが、日本企業はその発売の何十年も前に、考えていたのに製品化できませんでした。掃除機については技術力があるのに、ダイソンが世界一のメーカーになってしまいました。特許技術で負けました。携帯電話は、アップルの製品が市場のほとんどを占めてしまい、PCなどのタブレット市場でも、後塵を拝しています。キンドルやマックエアー、アイパッドなどの製品を私たちは使っています。オーディオ機器はアイポッドで少し前までは決まりでした。今はスマホがあればよく、アイフォンを使って音楽を聞きます。聴き放題のサービスを提供しており強いのはやはり海外の企業です。技術力では勝る日本がなぜ勝てなかったのでしょうか。発想が貧困なのです。
 原因は何か、問題点は何かと考えるやり方は、理想的な状況はどうかという頭の使い方の真逆です。原因や問題点の選定作業をやっていくと、発想が貧困化し、その発想を繰り返す人は、小粒化していきます。

 スティーブ・ジョブズが、エンジニアに、アイパッドの中に組み込まれているネジをなくせと指示したのは有名です。エンジニアが、「社長、こんなところまで誰も見ません。」と言うと、「私が見る」と言ったそうです。これは、ものづくりに対する信念とも言えます。思考の哲学が決定的に違うのです。ディテールに神は宿るという言葉があります。日本企業がマネっ子製品を作っても何かしら海外製品に及ばないものができてしまう理由は、技術力ではなく、思考の哲学にあります。圧倒的に理想的なコンセプトで細部の細部まで作り込まれた製品は神がかった魅力を発揮し始めます。一方で、そのような理想を持たない製品、哲学がない製品は、妥協の産物であり、何らかの問題は解決しているかもしれませんが、たいした問題ではなく、コンセプトがぼやぼやなので、誰にとっても魅力的ではなくなってしまいます。このように、問題が発生する原因に対処することは大変重要なことですが、それだけでは、完璧とは言えません。むしろ、ここでご紹介したように害になることもあると覚えておきましょう。

 

製品カテゴリ
掃除機 海外企業(理想実現):ルンバで理想的な生活スタイルを実現

日本企業(原因の対策):従来品の問題点を解決した機能満載の掃除機で勝負。
掃除機2 海外企業(理想実現):ダイソンが世界一ダニとハウスダストを吸引する理想的な掃除機を開発。人々が欲しかった商品を製品化。

日本企業(原因の対策):従来品の問題点を解決した機能満載の掃除機で勝負。
オーディオ機器 海外企業(理想実現):アップルがポケットに1000曲位上入るオーディオ機器を開発。世界的大ヒットに。

日本企業(原因の対策):ボタンや機能満載のオーディオ機器で勝負。
タブレットPC 海外企業(理想実現):あったらいいなを実現。薄型PCをアップルが開発。

日本企業(原因の対策):遅ればせながら、参入するもマネっ子製品で後塵を拝す。

 

 

 この人は絶対イノベーションを起こせないなという人は、チマチマシコシコやりすぎている人とも言えます。そういう考え方が頭にこびりついてしまい、癖になってしまうと、柔軟に柔らかく自由に発想することができなくなります。SFCを受験する時に一番大切な頭の使い方は、柔らかく発想して自由に考えることです。何が答えなんですか?考える方法を教えて下さい、評価されるにはどうすればいいんですか?という問いは、受験者の心理としては、気持ちはよくわかりますが、発想が貧困化し、理想的な頭の使い方ができなくなり、ガチガチの固い考え方になるのでやめた方がいいとアドバイスしておきます。私が、SFCがどうかを気にしすぎていると合格しにくくなる、大学に媚びるなというのはこういうことでもあります。小粒化してき、発想が貧困化していきます。答えを出す方法や答えを覚えて受験するのではなく、あなたなりの世界に対する解釈、紐解き方、自由な発想をもって、未来を変えることをSFCの受験では要求されているというくらいに考えておく方がいいでしょう。要はバランスの問題です。あまりここまでにお話したことを杓子定規に捉えないようにしてください。イメージ的に言えば、環境情報と総合政策は次のようなイメージです。

 

環境情報・・・バーンと世界の問題を解決するイメージ
総合政策・・・キビキビとよい仕事をすることで問題を解決するイメージ

23-7 本は読まなくてもいいですか?

答え:本を読まなくても合格しやすいのは環境情報(今のところ)


 本を読まなくてもいいという信じられない指導があるようですが、基本的に本は読んだ方がいいです。特に総合政策学部は、政治や経済について論じることを求められるため、ある程度洞察の鋭い知の巨人と言われる人物の知見を持っていないと厳しい戦いになります。出題されているのは、トマ・ピケティー、アルビン・トフラー、カント、デューイ、アーレントなどの文章であり、数百年後の世界に名前を残す大人物です。これらの見識について自分の意見を論じる時、ウェブで集めた情報で勝負してもいいのですが、どうしても「薄っぺらい内容」になってしまいがちです。内容に厚みがないのが、ウェブの情報の特徴です。ウェブで検索してあたりをつけた後に、本で深みの部分を補うような情報収集が、今の2016年~2026年くらいまでは主流になるでしょう。それなりに骨のあるウェブマガジンなどでも、日中の安全保障や外交について論じているものはありますが、新聞記者などが書いた記事はどうしても内容がペラペラしてしまいがちです。(端的に言及しているので、申し訳ありません。)


 環境情報についても、ある程度同様のことが言えます。そもそも論を言えば、本を読むかどうかという二元論だけで考えるのは不適当です。セミナー資料でも、海外の本でも、有料のウェブマガジンでも、公開されている研究論文でも情報のソースはなんでもいいのです。要は、先端的であり、独創性があることが重要です。自分の考えることが、キラリと光るものになるためには、多くの知見が必要です。そうではなくても合格できることがあるというだけのことであり、本というメディアは、キラリと光る知見を作るツールとしてはかなり環境情報学部のような学部であっても有効です。特定の分野だけの知識しかない場合、新規な構想はあまり生まれません。知見を広げておき、いろいろと知っておくことで、他の人には見えない問題点が見えるようになります。私が特許を出願し、取得しているのも、このような問題点を見る目があったからこそです。私はSNSに関する特許を取得していますが、私が持っていたのは、経営に関する知見です。SNSだけに詳しいだけでは、このような構想を得ることはできなかったでしょう。

23-8 慶應SFC受験対策に関して重要な4点とは?

慶應SFC受験を有利にするのは、以下の4点です。


  1. 1. 基本の重要性
  2. 2. 問題解決学の重要性
  3. 3. アイディアの重要性
  4. 4. 知性の重要性




これらの4点を効率よく引き上げていけば慶應SFCにはかなり合格しやすくなります。



私は最初に、ポジショントークをしないことを約束しましょう。このような約束が重要になる理由は、自分の営為を成立させることを目的とした言説が近年目立つからです。


 生徒獲得のために、速読は意味がない、アイディアは評価されないなど、受験生が不合格になりやすくなってしまうだけのアドバイスが目立ちます。このようなアドバイスは百害あって一利なしと言えます。

23-9 基本の重要性 なぜ滑り止めで無対策なのにSFCダブル合格なのか?

 私のかつてのクライアントで、辻本さんという人がいます。慶應大学に4学部合格した子です。(法・経・総・環)
一般的な慶應SFCの小論文対策論では、慶應SFCの特殊性ばかりが強調されます。そのため、慶應SFCの特殊性に対処すれば、あなたは慶應SFCに合格できると説きます。しかし、次の部分までがセットになっていることに気をつけるべきです。慶應SFCの特殊性を教えているのは自分なので、慶應SFCに合格したければ、慶應SFCの特殊性について私に学ばなければならない・・・ということです。これが典型的なポジショントークです。

 

 ちなみに、私は辻本さんに小論文を教えていく際に、慶應SFCの特殊性について、グイグイ強調した指導をしていたかと言えば、NOです。そもそも、辻本さんの第一志望は、慶應の経済でした。したがって、一応慶應SFCも受験しておき、慶應の経済に不合格であれば、進学したいと彼は考えていたのです。ですから、慶應SFCの特殊性について、やっきになることもありませんでした。逆に言えば、だからこそ慶應SFCに辻本さんは、ダブル合格しているとも言えます。しかも、無対策で、滑り止めなのです。これはいったいどういうことなのでしょうか。不思議でも何でもありません。基本の力があれば、慶應SFCに合格するのです。
しかし、一般的に、こだわりが強い人は、特殊なので特殊なことが必要などと考えてしまいがちです。つまり、先入観です。先入観が働きすぎると、人の推論能力は下がることが分かっています。特殊性についての配点が、200点あり、それだけの試験なのであれば、特殊性についてだけ何かしらやっていても受かるのかもしれません。(雑すぎることなので、はっきりいってこのように言うことがそもそも馬鹿げているのですが)しかし、そんなバカなことがあるはずもなく、配点は公表されてはいませんが、バラバラといくつかの評価軸に分かれているでしょう。一般的な論文テストの評価軸は、構成力、内容力、発想力、表現力などです。これらをバランスよく鍛えていけば、小論文試験で高い点数を取ることができます。
上記の代表的な評価軸で、高い評価を得るために必要な能力は「基本力」と私が呼んでいるものです。「基本力」とは、すべてのパフォーマンスに大きな影響を与える能力のことです。原則として、基本の力は、論理と感性です。

 

しかしながら、恐るべきことですが、日本における小論文教育では、論理も感性も重視されません。意味が分からないとはこのことです。数学に関していってみれば、掛け算の九九や、因数分解を知らずに、数学の難易度が高い問題の練習をやらされているようなものなのです。
手っ取り早く受かるための型やフォーマット、過去問題の練習は一般的によく行われていますが、肝心要の論理をまったく習ったことすらないという学生がほとんどです。掛け算の九九も知らないで、高度な問題ができないのとまったく同じで、感性や論理に疎い人が、高度な思考をできる道理はありません。

 

 そもそも、論理的であるとはどういうことなのかについてすら理解が無いのに、論じる問題を練習しても何の意味もないでしょう。何の練習になっているのか?という話になるわけです。ただ、書いているだけです。ただ、マス目を埋める練習をしても、受かるための有効な練習には少しもなりません。

 

 同様に、物事を考えるということについて、理解が無い人、センスを働かせ、感性を働かせる手法を知らない人は、なかなかうまく考えることができません。頭を少しでも働かせれば、一応考えていることにはなるでしょう。例えば・・・

 

 手順1.ボタンを押してください。
手順2.ボタンを押すと食べ物が出てくるので食べましょう。

 

 こういう手順を覚えるのは、チンパンジーでも可能です。そのような手順を覚えて思ったことを、書くことについて、考えることなのだと、勘違いして理解してはいけません。それは考えているのではなくて、順番に思っただけです。分析をしているわけでもありません。順番に思っているだけだと理解してください。

 

 何も難しい話ではありません。例えば皆さんが、自分が好きな人にプレゼントをすることを考えてみましょう。どうやったら喜んでもらえますか?何をどのようにプレゼントすれば、相手は喜ぶのでしょうか。

 

 センスや感性を働かせるとは、このようなことを指します。難しくはないでしょう。しかし、チンパンジーには難しいことです。チンパンジーは高等生物ですが、人間のように言葉を仲立ちとして、細かく考察し、感性を働かせて、何が起こっているのかについて統合的な一般原則を導くことはできません。例えば、過去の彼氏や彼女の行動から、相手の好みを割り出し、その好みを流行の商品に結び付け、相手の心を想像し、どのように渡すことで喜びが増すのかを感じ取り、そこについて一定の解釈を行い、実行フェーズの行動プランに落とし込むということは、チンパンジーにはできないということです。

 

 人間の頭は大きく分けて、二つの考え方しかできません。論理的に思考するか、感性的に思考するかです。男性は論理的に考えることが一般的に得意であり、女性は感性が鋭く直感的に物事を感じ取り、考えることが得意であると言われています。

 

 小論文試験で問われているのは、学術論文の書き方ではありません。何も慶應SFCでは、特別なことを問われているわけではないとも言えます。商品企画を考えさせられることもよくあります。特に環境情報学部は、感性を働かせることで受かりやすくなる学部です。しかし、環境情報学部に合格した途端に、エリートっぽくふるまうようになり、分析が重要だなどと強く主張するようになる人も多いのが実情です。分析が入試の際に重要なのはむしろ総合政策学部の方です。私は感性を働かせることができた環境情報の学生はかっこいいと思いますが、世間一般的には分析的である方が、クールなイメージがあるかもしれません。そのような発言が多いのは、そのように発言する方が知的でかっこうがいいからというだけではありません。受験産業では、「これで受かる」ということが強く主張される傾向があるため、その論法にとって都合のいい雰囲気のようなものがあり、その雰囲気にそった指導が行われているのが実情なのです。つまり、受かるための受験指導ではなく、受験指導っぽいことをやるための受験指導になってしまっているということです。それはポジショントークであることが多いと私はこの「一連のウェブブック」の中で述べています。環境情報学部と総合政策学部で、カメレオンのように頭の使い方や考え方を変える方が受かりやすくなります。

 

 いいですか。大切なことをお話ししていますよ。例えば、環境情報学部で、幼児向けの映像コンテンツの企画を求められたことがかつてあります。この時に、どのように頭を働かせますか?幼児の感情をイメージできなければどうにもなりません。かっこうをつけている場合ではないのです。センスや感性を働かせるとは、こういうことを指します。特定の考え方の手順にポコポコはめて、かっこうをつけたことを言っても何の意味もありません。また、幼児の感情をイメージするというのは、やや難しい表現をすれば、市場ニーズを感じ取るということです。どのようなニーズが存在しており、どのようなサービスが満たされていないのかをしっかりと考える必要があります。ここで感性を働かせることを教わっていない人、感性やセンスは不要と教わった人は、適切に考えることができなくなります。
ここでお話しした環境情報学部の問題解説はこちらです。

 

2009年 環境情報学部問題解説
http://www.skilladviser.com/base/sixyouron/sr-2/keioukakomon/kankixyou/kan_2009.html

 

 私が、感性が大切と述べているのは、何も普通の考え方について、特別ないい方で、表現しているだけではありません。ここまでにお話しした、感性やセンスを働かせる思考の力をもっと強化する簡単な方法がたくさんあるからです。

 

 私がこのような思考強化方法をレクチャーした学生は、慶應SFCに合格後、マサチューセッツ工科大学の博士課程に進学したというケースもあります。大学に入ってからも、教わったことが考えることに役立っていると、彼は語っていました。マサチューセッツ工科大学は、世界一の理系大学です。その博士課程で学ぶことができるのは、世界の天才の中でも一握りです。彼はそういうレベルに到達できたということです。

 

 もう一度大切なことなので、確認しておきましょう。基本力とは、大まかに言えば、論理と感性です。そして、論文の作法なども基本力に入ってきます。ただし、大本は、論理と感性だということです。

 

 従来の一般的な小論文指導は、「知性軽視、基本力軽視」だと私はここまでに述べてきました。学生に考えさせず、カコモンに対応させることばかりを強調するのがこの手の一般的な小論文指導です。私は「知性重視、基本力重視」で指導を行います。
一般的に基本ができていれば、論文テストでは、65%程度の点数が取れます。これはつまり、十分に合格を狙うことができるということです。

23-10 問題解決の重要性 

 問題解決の重要性については、次章のPSA(問題解決アプローチ)のページに詳しく書きましたので、慶應SFC受験生は必ず熟読しておきましょう。合格できるかどうかはここにかかっています。



次章で問題解決を学ぶ

23-11 アイディアの重要性 

 アイディアは慶應SFC受験に関して重要ではないという指導があるようですが、これについてはどのように考えるべきでしょうか。
これについては、私が冬期講習のページに書いた文章をご紹介するのがいいでしょう。

 

------ここから引用-----
慶應SFCを受験する際に、研究計画が必要かどうかと問えば、必要ないという結論になるのは当たり前です。問題は、研究計画を書くことができたり、研究を頭に思い描くことができたりすれば受かりやすいかどうかです。答えはイエスです。

 

速読が必要かどうかと問えば、必要ないという結論になるのは当たり前です。問題は速読ができる人がダントツに受かりやすいかどうかということです。もちろん答えはイエスです。

 

読書が必要かどうかと問えば、必要ないという結論になるのは当たり前です。問題は読書をしている人が受かりやすいかどうかです。答えはイエスです。

 

アイディアが必要かどうかと問えば、小論文に必ずしもアイディアは必要ないという結論になるのは当たり前です。問題は、アイディアがある人が受かりやすいかどうかです。答えはイエスです。

 

全部同じことだと気付いたと思います。要は、ポジショントークがよく行われているということです。極論化のテクニックを使えば、相手が間違っていて、自分が正しいとなります。本当のことを教えてくれる人はあまりいません。

 

過去問題を見れば分かりますが、特に慶應SFCは仮説検証型の思考回路が試されます。研究計画もない人は試験会場で考えようとします。

 

時間切れで原稿用紙を埋めることができない人は、単に準備不足で不合格になっています。

 

試験会場でキラリと光るかどうかを試されるわけですが、情熱を持って何かを学びたい、研究したいという人を選ぶ試験になっているわけですから、準備している方が合格しやすいのです。

 

このことを知らずにあるいは、重要ではないと説かれて受験する人は本当にかわいそうだと思います。

 

試験会場で考えるしかありません。

 

試験会場で何も思いつかなかったとき、あ、牛山があんなこと言っていたなと、その場で思い出してもらうしかありません。

 

しっかりと準備して試験会場に行きましょう。
-----ここまで引用-----

次の文章も読んでおきましょう。

------ここから引用-----
研究計画レベルで構想をねっておくと、かなり慶應SFCは合格しやすくなります。過去問題をしっかり見ていけばすぐに分かると思います。チェックしていましたか?まだという人は、一度ざっと過去問題解説に目を通しておきましょう。
http://www.skilladviser.com/base/sixyouron/sr-2/keioukakomon/kakomon.html

 

慶應SFC受験に必要なのは、もう少し具体的に言えば、政策構想と、企画構想です。総合政策は政策構想があれば受かりやすく、環境情報は、企画構想があれば受かりやすいのです。日本の政治をどうしたいのかについて意見も無い人は、かなり総合政策学部に受かりにくいと言えます。政治に無関心ということだからです。無関心な人は問題意識がありません。問題意識もない人に問題は解決できません。
私が研究計画と述べているのは、この総合政策学部対策の政策構想も含みます。また、環境情報については、商品企画でOKです。これもあれば大変受かりやすくなります。

 

研究計画というのは、必ずしも実証研究のことだけを指すのではありません。しかし、残念ながらと言うべきか、実証研究のスキルがある人は大変問題を解きやすく問題が作られています。だからこそ差をつけたい受験生は、慶應SFC受験において、研究スキルをアップさせておくべきです。

 

「研究計画を作ろう」と言えば、これに反発する人がいるかもしれません。しかし、私は研究計画のための研究計画を作ろうと言っているわけではありません。研究計画を作るプロセスで、あなたが何かにワクワクし、興味がわき、好奇心を持って調べ物を行い、具体的なレベルで観察ができるようになることを期待しています。その際に、そのワクワクを実証的な研究の形に仕上げる術を私が教えます。大事なことは、自分が好きでワクワクすることに関して、研究スキルを磨くことです。好きでもないことに時間をかけろとは言っていません。
慶應SFCは自分なりになんらかのワクワクすることを持った人が合格しやすくなっています。

 

・知性を軽視する指導が多いです。
・ワクワクを否定する指導も多いです。
・基本を軽視する指導も多いです。

 

知性も、知的好奇心も、基本も、遠回りに見えて、一番の近道です。

 

自分がワクワクすることを掘り下げる、知性を強化する、基本を強化する、これらの対策によって、慶應SFCは大変受かりやすくなります。

 

私は慶應SFCにダブルで合格し、クライアントには、ダブルで合格してもらっています。また、早慶模試では全国1位になってもらい、慶應大学に合格してもらっています。

 

試験会場で、政治や商品企画について問われて、その場で考えるようでは遅いと言えます。受験前にしっかり考えておくべきです。しかし、受験前に考えてもレベルが低ければ受かりません。

 

時に慶應SFC受験を勘違いしており、夢想やファンタジーチックなことを述べれば何でも評価されると思っている人がいます。そんなことはありません。現実にあなたが何らかのアクションを起こし、未来を変えるということは、商品企画でも、政策立案でも、研究の実施でも同じです。これら3点に共通するのは問題を解決するということです。

 

・政策案は問題を解決します。
・商品企画は問題を解決します。
・学術は世の中の問題を解決します。

 

私は日々添削をしているので、肌感覚でよく分かりますが、合格レベルに達していない答案は一言で言えば雑すぎるのです。将来構想も雑、政策案も雑、研究構想も雑、研究の際の頭の働かせ方も雑、商品企画も雑・・・という形では、かなり受かりにくくなります。精緻でありさえすればいいわけではありませんが、精緻でないもの、具体性が無いもの、単なる夢想で自分が何をやれば実現できるのか説明すらできないものは、評価が下がります。

 

研究計画レベルの精緻さでこれらを見ていく塾はないようです。

 

従って私がやります。ぜひ合格を勝ち取りましょう。
-----ここまで引用-----

 

どうでしょうか。少しイメージがわいたでしょうか。
ここから慶應SFCにかなり合格しやすくなるお話をしますよ。

 

アイディアというのは、思いつきではありません。
アイディアは洞察です。以下の公式を覚えておきましょう。

 

アイディア≒洞察力≒未来を見る力(人に見えないものを見る力)

 

発明家というのは、思いつきが激しかった人なのでしょうか。そうではありません。エジソンは、白熱球の発明について、4000回以上の実験に失敗しています。ダイソンは、掃除機の発明に5000回以上失敗しています。共通するのは、未来が見えていたということです。もっと言えば、発明の構想が実現する未来が彼らには明確に見えていたということです。「もう先生、無理です、止めましょう。」と助手が言っても、耳をかさず、もくもくと実験をしたのです。

 

慶應SFCはなぜアイディア型の問題を出すのでしょうか。その理由は、未来からの人材と受験生を位置付けているためです。洞察力があり、未来を見ることができる人を合格させたいと大学側は考えています。

 

慶應SFCは仮説検証の力を見たいから指標の問題を出しているのであって、指標を作らせたいわけではありません。

 

慶應SFCは、問題を発見し、問題を解決する人材が欲しいから、アイディア型の問題を出しているのであって、思いつく練習をした人が欲しいわけではありません。

 

慶應SFCは高いレベルで問題解決を行う人材が欲しいから問題解決型の問題を出しているのであって、問題解決のプロセスを雑に答案に書くことができた人を優秀だとみなしたいのではありません。

 

表面的に考えてはダメです。

 

かくいう私は、特許を考案し、出願し、日本で特許査定を受けています。今年は、海外にも出願しました。査定を受けることができる特許を思いつく際の頭の働かせ方を、私はかなりリアルに知っています。私は発明の体現者です。憶測でものを言っているのではありません。発明を思いつく際には、思いつくのではなく、「見えた」というのが正直な感覚です。自分の知識と知識がつながり、未来が見えた瞬間です。洞察力を引き上げるには、頭の中に知見が広がらなければなりません。当たり前のことですが、頭がスカスカではその分野について未来がどうなるかなど分かりません。未来は思いつくものではなく洞察するものです。

 

この意味で、本は読まなくてもいいというアドバイスは「洞察力が無くてもいい」というアドバイスとかなり似ています。慶應SFC受験では、洞察力がないとかなり厳しい戦いになります。

 

ここでまた極論化のえじきにならないようにしましょう。
言葉で考えると本質を見失います。

 

アイディアはなくてもいい、知識があればいい

 

とか、

 

洞察力は無くてもいい、解法があればいい

 

などという言葉遊びに似た、やり取りは、全く意味がありません。そこで一喜一憂しても仕方がありません。

 

いろいろな人がいろいろな場所でこんなやり取りをしているのを一度は聞いたことがあるでしょう。要は、ほとんど受験産業の論理なのです。

 

手っ取り早い合格法があると教えられるとフラフラ~となる受験生が常にいるので、そういう受験生から騙されてしまうと言えるでしょう。

 

要は掛け算になっているだけです。

 

センス×知識×解法×アイディア×洞察力・・・

 

というように、それぞれの力があれば、それだけ一層受かりやすいということです。

 

図式化するとこうなります。

 


逆転合格を可能にする慶應SFC小論文対策<前編>

 

数式にすると


1×2×4×2×1


という具合なのか


10×7×8×6×8


という具合なのかということです。数値がそれぞれ高ければ、(スキルレベルが高ければ)なお一層受かりやすいというだけです。

 

ただし、これだけは覚えておいてください。

 

洞察力は、慶應SFC受験において、中核的な力の一つです。

構想力があれば、一発合格できるような問題がよく作られています。

 

23-12 研究計画書を作る意味
 研究計画書を作る必要はない、なぜならばそれは大学に入ってからやるべきことであり、それを大学で教えるからだ・・・という理由を述べる人がいるようです。これは論拠としては不適当です。

 

 問題は受かりやすいか受かりにくいかであって、研究計画書の作成をいつ学ぶべきかではありません。そもそも論点がズレています。従って反論する必要もありません。

 

 このように、論点で物事を捉えることができなければ思考力がグングン下がります。また、論点で物事を捉えることができなければ、総合政策学部や法学部には受かりにくくなります。気を付けましょう。論点で捉えることは、論理思考の基礎の基礎です。

 

 基本と基礎は違います。基本はすべてに影響する力であり、基礎とは物事の土台のことです。基本の力は基礎からも成り立っていますが、基礎だけで成り立っているわけではありません。
 物事を考える時に、論点で思考することができるということは、論文テストで高い点数を取るための、基本の力になります。基本の力が無ければ、受かりにくいですよ。特に、総合政策学部は、論理的に物事を考察できなければ受かりにくい学部です。過去問題に踊らされてしまっている受験生が多いようですが、発想を逆転させなければなりません。高度に論理的に物事を考えることができるようになれば、過去問題は余裕で解けるのです。
 このあたりについては、「小論文の教科書」という本や、「慶應小論文合格バイブル」「牛山慶應小論文7ステップ対策」という本に書きました。

 

 論理的に物事を考えることができれば、問題は解決してしまいます。しかしながら、表面的に物事を考える受験生は、過去問題と似た問題を解くことが練習になると思っているようです。そんなことはありません。

 

 本稿のテーマは、「研究計画書を書く意味」です。話を戻しますよ。
問題はみなさんが、研究計画書を書くことができるようになることで、慶應SFCに受かりやすくなるかどうかです。さて、いろいろな考えがあると思います。どうでしょうか。

 

 私は研究計画書の作成スキルを強化することを強くお勧めします。理由は大きく3つあります。

 

理由1:全体を見渡すことで、問題への対処力が上がる
理由2:論理的に精緻に考える力が引きあがる
理由3:構想を強化することができ、突き抜けた合格を狙うことができる(ゴボウ抜き)

 

 第一の理由は、全体を見渡すことで問題への対処力が上がるからです。私は慶應SFC進学専門塾「慶應SFC特化クラス」で、問題解決学を教えています。その理由は、問題解決学が出題されるからというわけではありません。それは物事の見方として大変表面的です。
 出題に合わせているわけではありません。そのように過去問題に振り回される対策を私はよしとしません。日本一の問題解決者を育てるつもりでやっています。誇大表現と思うかもしれませんが、実際に当塾では日本一が出ていますし、私に論理思考を教わった子は、慶應SFCに合格した後に、学生を対象としたビジネスコンテストで日本一になっています。「今からでも間に合わせる勉強法・受験法」という本の表紙に出てもらった野原さんです。
 当たり前ですが、慶應SFCは、過去問題に誰よりも対応している人を欲しいわけではありません。未来からの人材が欲しいのです。私の塾は、小論文日本一輩出、英語日本一輩出、ビジネスコンテスト日本一輩出と言えます。私が教えてダントツになってもらうことを目指しています。大学に媚びを売るのではなく、最初から大学を超える存在になってください。そうすれば、「あなたが欲しい。」と言われます。大学に媚びている人は、何を言えば評価されるの?ということしか気にしていません。そういう小粒すぎる人が目の前にいた時、大学の教員は魅力を感じるでしょうか。自分の意見が無く、こびへつらい、教員の顔色ばかりを窺うような人が未来からの人材に見えるかどうかは大変疑問です。
 研究計画を自分で立てることができるようになれば、SFCで出題される仮説検証型の思考力を見る問題に対処しやすくなります。指標を作る問題や、評価軸を設定する問題がこれにあたります。これらの問題は個別に対処しても構いませんが、それでは部分最適な頭になってしまいがちです。問いの設定から、仮説の設定、仮説検証のプロセスなどに関して総合的に学ぶことで、どのような問題が出題されても、出題意図が透けて見えるようになります。慶應SFC受験生が問題に対応できない最大の理由は全体像を把握することができず、部分最適な答案づくりばかりをやろうとしてしまうことにあります。問題が分からないのは、全体像が分からないからです。全体像が分かれば問題が分かります。問題文をいくら読み上げてもらって、細かい部分をこねくり回して後付けの説明を聞いても、その場だけ分かったような感覚に陥り、結局何もわからないのは、ここに原因があります。過去問題を読み上げてもらっている場合ではないということです。自分で読めば5倍速く読めるでしょう。速読ができれば100倍速く読めます。時間の無駄になることをやらないようにしましょう。

 

 そもそも、大学の研究者が作る問題は多くのケースで、ついつい、自分の専門領域に偏った内容になってしまったり、自分の関心領域や大学で学ぶ内容に深く関連した内容になってしまったりしがちです。言い換えれば、研究ができる頭になっていれば受かりやすい問題が作られがちということです。

 

POINT:研究計画を学べば、慶應SFCの出題内容について理解度が引きあがり対処能力が大きく引きあがる。

 

 第二の理由は、研究計画書を学ぶことで、論理的に精緻に考える力が引きあがることです。研究計画を立てることは、論理思考をかなり精緻に実践することにつながります。慶應SFCは、あなたに指標を作ってもらいたいわけではありません。ポコンポコン指標をいくら作ったところで意味がありません。そうではなく、問題を解決してほしいのです。従って、本来であれば、指標は何らかの問題を解決するために作るべきです。ところが受験生は一般的に、まず何の指標を作るべきなのかが分かりません。何の指標を作るべきかが分からないということは、出たらアウトということです。このあたりの問題は出題されるかもしれません。
 仮説検証型の能力を見るには、問題解決のプロセスの中で、どこをどう切り取ってもよいとも言えます。それは教員の勝手です。何をもって力が高いとみなすかは、教員の考え方一つです。論理的に精緻に考えるということは、上記のように、トータルに物事を考えていくことも指します。部分的に精緻に考える練習をしていても、全体的に精緻に考える練習になっているとは限らないということです。また、全体的に精緻に考える練習をすれば、全体を理解することにもつながります。

POINT:研究計画を学ぶことで、全体的に論理的に精緻に考える能力が引きあがる。

 

 第三の理由は、構想を強化できることにあります。皆さんが、もしもロボットが好きなら、ロボットについて調べてください。車が好きなら、車について調べて構いません。花に興味があれば、花のサービスについて調べるのもいいでしょう。「どの本を読んだらいいでしょうか」という質問を私はよく受けますが、その時に私が語りかけるのは、「何に興味がありますか」ということです。人はワクワクしないことに知性を発揮しにくいのです。自分が、興味があることを調べて構いません。自分が好きなことと、自分が能力を発揮できることを考え、その両方が満たされるところを活動領域にすることです。そうすれば、あなたの未来が開かれやすくなります。研究計画を学ぶことは、単に受かるための作法や受かるためのテクニックを学ぶということではありません。肝心要の情熱を学ぶということなのです。慶應SFCは、情熱を評価する(評価してくれる)珍しい大学です。情熱は人の問題解決の力を大きく引き上げます。情熱が無い人は、問題を解決できません。自分のモチベーションを引き上げることができず、他人に情熱を伝えることができず、他人を動かせず、環境を変えることができません。これは言い換えれば、問題解決の力が無いということです。ワクワクすることを強化するということはすなわち、問題解決の力を引き上げるということであり、言い換えれば、慶應SFCから見て、あなたが魅力的に見えるようになるということです。頭の良さ競争をやっているのではありませんよ。特に慶應SFCの小論文試験はAO入試と紙一重です。頭の良さ競争ではなく、魅力度競争をやっているという認識が大切です。研究計画を立案できることもあなたを魅力的にするでしょう。

POINT:構想力を強化することで、ダントツの合格につながる。

 

話に具体性がないと受からない

 慶應SFCでは、自分の意見に具体性がない場合、大変受かりにくくなります。問題を解決できる人は、物事をある程度細かく捉えており、具体的に何をすればいいのかを把握していることが多いためです。

 

 例えば、ある社会問題に対して「行政が主体となって取り組むべきだと考える」と書いても、話に具体性がないのでよくありません。研究計画的に考えるということは、具体的に考える一つのトレーニングになります。
 自分が書いている内容が具体的であるということは、「主体的に思考した軌跡」が残っているということでもあります。受験生の小論文を添削していると、積極的に細かい部分まで考えた答案と、雑に考えられた答案があることに気づきます。雑に考えると、特に慶應SFCで評価の対象となる「主体的な思考力」が無くなります。
 研究計画を仕上げるという行為は、過去問題をやり、その場しのぎで、マス目を埋めるという練習とは異なり、具体的に何を調べることで何が分かり、どのような貢献を果たすことができると考えられるのかという、およそ慶應SFCを受験する際に中核的に重要となるポイントをピンポイントで強化することができます。

23-13 「独創性」はSFC合格の中核的要素

 独創性は、慶應SFCを受験する際に、決定的に重要になるものです。そもそも、大学が問題解決について、それなりに適性がある人間を欲しているだけであれば、その適性訓練は大学がやればいいという話になります。
 ところが、問題解決の能力や独創性についての能力は複雑であり、育てることが困難です。一番簡単なのは、すでにその力がある生徒を選抜してしまうことです。見れば分かるわけです。その極みがAO入試です。慶應SFCは日本で初めてこのAO入試を導入した大学です。この点について茂木健一郎さんに「見て分かるものですか?」と質問されて国領教授は、「分かりますね。」と答えています。
 慶應SFCに受かったのだから、数段頭がいいと思いたい人はたくさんいるでしょう。私はそういう願いをいちいち否定はしません。しかし、このように知性を安易に一般化してしまう考え方は危険です。雑な考え方だからです。「慶應SFCは頭がいい人を欲している」といのは、雑な考え方です。

 

 また、問題解決の力は仮に運転免許程度の講習で、身につくようなものであれば、それは大学がやればいいという話になります。しかしそれでは、工業製品のような人材はできても、そうではない類の人材を育てることは難しいのではないかという考えがあります。
 AO入試が慶應SFCで用意され、一般入試で、1科目しか見ない体制ができているのは、このようなところと無関係ではないでしょう。
 独創性というのは、学力を犠牲にして生徒を選ぶというリスクをとってでも、なんとしてもほしいというのが、慶應SFCの本音であると考えられます。

 

独創性は研究の中核

 独創性というのは、研究力の中核的な力です。独創性が無い研究というのは、過去の研究の焼きまわしです。同じことを1億回やっても100億回やっても人類の学術も科学も進歩はしません。なんらかの独創性をわずかでも加えることによって先人の研究の上になんらかの貢献を果たすことができます。

 

独創性は問題解決の中核

 研究は問題解決です。政治や経済の世界の問題解決も、何らかの独創性によって成り立っています。問題解決能力がある人と、問題解決能力が無い人は、すぐに見分けがつきます。問題解決能力がある人は、重要なポイントをさっさと見つけます。他の人はそれが見えません。問題解決力がある人は、何が起ころうと何度でも、重要なポイントをさっさと見つけてクリアしていきます。独創性とは独自の視点ということです。換言すれば、他の人が見えなかった視点が、独創性がある人には見えるということです。もっと言えば、慶應SFCが欲している「未来が見える人」とは、独自の視点で未来の人が当たり前に見ている未来を先に見ることができる人ということです。独創性というのは、単に人とは違うということではありません。洞察力をもって物事を見ることを指して、独創性があると言います。少なくともここで問題にしている独創性とはそのたぐいのものだと理解してください。
 またセンスがあると慶應SFCの受験関して有利になるのも同じ理屈です。センスがある人は、独創性を発揮します。スティーブ・ジョブズの生み出した製品を見ればすぐに分かることがあります。大変センスがあるということです。そのセンスが、独創性を生んでいるのです。それでは、センスとは何でしょうか。センスとは才能のことだけではありません。センスが無いともうダメなんだと嘆く必要はありません。センスとは、脳の働かせ方のことでもあります。属人的な才能ももちろんあります。しかし、その才能を生み出す頭の使い方も存在しています。才能がある人は、努力をしていないと思っているのは努力もせずにセンスが無いなどと嘆いている人と相場が決まっています。センスは鍛えることができます。才能が豊かな人とは、そのセンスを誰よりも強化してきた人です。

 

知性が独創性を生んでいる

 独創性を生むのは知性です。知性は知能ではありません。論理テストなどは知能テストです。知性とは論理テストなどのミクロ的な視座の頭の使い方ではなく、マクロの巨視的な視座での頭の使い方です。全体最適と言ってもいいですし、センスを用いた思考法と言ってもいいでしょう。全体の構造をまとめると以下のようになります。




 ただし、知性を発揮する方法は、センスを発揮するだけではありません。センスを働かせる頭の使い方を学び、情報を頭の中に入れ、記憶し、熟成させ、高度に精緻に思考するという知的生産の技術そのものと言えます。換言すれば、情報の活用です。

 

 以下の図は、私が運営する「速読情報活用塾」という塾の概要を示す図ですが、この図が全体像を示しています。





 知性というものは、頭の中がスカスカでは、働きません。また、ゼロベースで物事を考えるなど、他の人とは違った形で物事を考えることが必要です。加えて、記憶を作り、知識を熟成させていくことが極めて重要です。何らかの構想や研究構想は、ある日突然天から降ってくるようにやってくるものですが、それは十分な下調べや考察があってのことです。勉強などしたこともなく、何の知識もなく、何の思索もない人の頭に、「神の啓示」のようなものが降ってくるわけではありません。脳の中では、神経細胞が記憶をつかさどっており、その神経細胞が伸びてつながらなければアイディアは生まれない仕組みがあるためです。独創性をフルに発揮したければ、従って原理的に必ず上記のようなプロセスが重要になるということです。上記の一連の流れは、あなたの中にある独創性を開く鍵となります。逆に言えば、すべて障害です。

 

障害1:本などの情報を素早く処理できない。⇒速読で解決。
障害2:理解できない。⇒理解速読で解決。
障害3:記憶できない。⇒暗記速読で解決。
障害4:批判的に考察できない。⇒クリティカルシンキングの講座で解決。
障害5:情報を整理できない。⇒情報整理講座で解決。
障害6:ゼロベースで考えることができない。⇒ゼロベース思考で解決。

 

きりがないのでやめておきますが、このように、多くの障害をクリアしていくことで、皆さんの知性がより発揮されるようになります。

23-14 知性の重要性
 特に総合政策学部を受験する人は、高い知性があればあるほど受かりやすくなります。その理由は、総合政策学部では、問題発見能力を問われることが多いためです。論理思考や知見を土台とした総合的な力が必要になります。これは、次のPSA(問題解決アプローチ)のページを詳しく見てもらえれば少しは分かりやすいかもしれません。図式化するとこういうことです。

 


逆転合格を可能にする慶應SFC小論文対策<前編>


左の、本質的な問題点の裏返しの対策をするには、「本質的な問題点」が何なのかを分析する必要があります。単に原因を推測してもダメです。ということはつまり、言い換えれば、本質的な問題点が何かを分析し、洞察する力がなければならないということです。

本質的な問題点が何かを特定できなければ、裏返しもヘチマもありませんからね。

 

 ここで、2013年度の総合政策学部の問題を私が解いているので、その解答例を見てみましょう。この年は資料がバババッと与えられ、A~Dのチームによる実質的なディベートの問題が出題されています。
私が主催する塾の違いは、解答例をどこかのおじさんに発注していないことです。だからこそ、指導に一貫性があり、解答例にもここまでに説明したすべての内容が矛盾なく入っていますよ。

 

【2013年度 解答例】
 A組は国内市場が大きく、日本は民主主義が機能しているため、日本人としての自信を回復せよと説いている。しかしながら、日本の国土は狭く、人口も他国に比して決して多いとは言えない。(図1)A組の意見は総じて楽観的であり、同時に定性的である。さらに、対策案も漠然としており、その対策案に論拠が提示されていない。現状分析及び対策案が事実に合致しておらず空理空論となっている。
 B組は現在は国家主義が台頭した時代であり、持続可能性が問われるため、国家戦略による官民の主導が重要であると説く。現状分析については、概ね事実に基づいており、問題はなさそうに見えるが、現状分析から対策案について、論理の飛躍がある。現状が厳しいので官民を国家が主導せよというのは、いささか乱暴な論調と言わざるを得ない。この対策案が有効に機能する論拠は十分に述べられていない。
 C組は、日本は国家戦略を用意したことは無かったと説き、すべての日本史の出来事は政府の受け身の結果であると説く。このような解釈は、日本が近代化に向けて行ってきた様々な政策及び外交、かつての犠牲を払った戦争等をあまりにも軽視した言説と言わざるを得ない。律令国家の成り立ちから近代憲法の制定まで、不断の努力があり、日本国は国家としての成立過程を経てきた。仮にこのようなC組の解釈が成り立つのであれば、日本は既に明治時代に植民地化されていても不思議ではない。このような事実を無視した現状認識及び現状分析に加え、C組の対策案は「等身大の幸せ作り」となっている。この対策案が資本主義経済下で生き残りをかけて死線をくぐる企業や、日々の暮らしをマネジメントする多くの国民意識から遊離した楽観的過ぎる考えであることは言うまでもない。国策論としては言説に値しない。加えて言えば、日本の幸せ度は国際的に見た場合平均的な物である。(図10)
 D組は、現代の経済を国家単位で把握することについてあえて問題提起したい。地域国家論という説がある。現在の世界経済は国家主導で成り立っているのではなく、地域経済を中心として成り立っているという考えである。世界上位企業ランキング(図3)を見ても分かるように、東京、大阪などの大都市圏に上位企業は集まっている。
 今後はこのような現状を踏まえつつ、従来の非効率的であった中央集権型の国家から、地方へ権限を委譲し、地域国家を発展させる形が、資源の配分の上でも望ましい。理由は大きく3つある。一つ目の理由は増え続ける公的債務残高である。日本の公的債務残高は国際的に見ても異常な数値となっている。(図7)従来のように地方及び中央で無駄な公益法人を作るなどの無駄な空費を抑えることが今後は重要になる。第二の理由は、ネットワークである。インターネットの普及率が日本は極めて高い。(図5)この情報インフラを活用し、企業が地方でも事業運営を継続できる仕組みが今模索されている。3つめの理由は、他国の成功事例である。シリコンバレーのような産業クラスターが、現在では飛躍的な産業、経済発展の土台となっている。特定の文化圏における背景が、産業を生み出す原動力となり得る。上記3点の理由(公的債務残高、ネットワークインフラ、産業クラスターの成功事例)から、地域国家繁栄のための場づくりを行うことが、未来の日本の為に望ましいと考えた。悲観も楽観もせず、現状に即した適切な課題設定を通して明るい日本の未来を描いていきたい。

 

 小論文としては、なかなかの大論述の問題ですね。(1500文字)考えてほしいことがあります。このページで、環境情報の解答例を紹介しましたが、頭の使い方が同じでしょうか?違いますね。解釈で、いろいろと強引に似ているとか、同じなどということはいくらでもできるでしょう。そもそも問題解決のプロセス自体は、どのようなプロセスをたどろうと、そんなのは本人の勝手なので、出題者が問題解決能力を見ようと思えば、大体似ることがあるのは当たり前なのです。しかし、アドミッションポリシーで述べられているように、どちらかと言えば、問題を発見する能力を重視する総合政策学部では、どうしても分析的な思考が求められがちです。今回の問題もそうですね。

 ところで、ここまでに原因を書いて対策案など書いているでしょうか?書いていませんね。環境情報の時もそうでしたね。ここで一度考えてみましょう。なぜ、私は今回の答案では、原因を書いて対策案を書かなかったのでしょうか。極稀に書くこともありますよ。なぜ今回書いていないのでしょうか。その理由は、原因を書いて対策案を書くというやり方はまったくもって普遍性の無いやり方だからです。PSA(問題解決アプローチ)のところで説明しているとおりです。単なる筋書きだから答案に使えないということです。筋書き、手順は頭の中でやることであり、答案に書いてしまっては意味がありません。
 本質的な問題点の定義、つまり問題発見のプロセスを総合政策学部ではやらせることが多いわけですが、ここでは、資料を基にして何が本質的な問題点なのかを考えるヒントにしてもいいですし、立論の材料に資料を使っても構いません。今回の回答例では、地域国家論で説かれている前提を本質的な問題点として定義し、そこから立論しています。ここでは資料の内容を用いて、紹介した地域国家論を補足説明し、本質的な問題点の定義が間違いのないものである裏付けにしようとしています。ところで、今回の解答例を見てもらってもわかると思いますが、本を読んでいないとこういう内容は書けません。時間が無い場合は仕方がありませんが、浪人してしまったなどという場合は、ガンガンに本を読んでいくことも大切です。

 

さて、ここでご紹介したように、上記の図のような違いが、環境情報学部と総合政策学部の間に存在していますよ。

 

ただ、この傾向はあくまでも過去20年ほどの傾向であり、今後は変わるかもしれません。どんな問題を出そうが、教員の勝手だからです。

 

ここまでに書いたことは、一般的にはあまり教えられないことです。特に総合政策学部に不合格になった人は、否定してかかる内容かもしれません。

 

しかし、これは逆のことも言えます。つまり、環境情報に求められる力もあるということです。

 

ここまでにお話ししたことは、問題解決のプロセスを雑に理解していると、よく分からないと思います。

 

思い出してください。
問題解決は原理的に二つしかありません。

 

本質的な問題点の裏返しの対策を行うか、大きなアップサイドが見込める領域について、対策を行うかのどちらかです。

 

この二つについて詳しくなっておくと、問題がいろいろと透けて見えるようになってきます。

 

もう一度言いますが、これは原理であって、理論ではありません。従って、透けて見えるのは当たり前なのです。

 

問題解決をよく理解していれば、問題解決に関する問題が出るわけですから、やりやすくなります。

23-15 非典型と多様性
 SFCに合格したい人は、この「非典型」と「多様性」というキーワードを覚えておきましょう。この言葉は、元総合政策学部長の国領教授が、茂木健一郎氏との対談の中で話す内容です。大学入試における人材選抜の基準の一つがこれです。

 

非典型と多様性とは何か?

 非典型というのは、型にはまった人材ではないということです。センター試験で満点を取ることができる人は優秀ですが、それはむしろ典型的な人材です。そうではないデコボコした尖った人間が欲しいということです。しかし、多くのSFC受験者が気にしてしまうのは、型にはまったSFC像です。慶應SFC側に気に入られたいと思うのは仕方がありませんが、そのような考えを持った瞬間に型にはまった人材像ということになってしまうでしょう。みんな同じになってしまうということです。
 SFCの合否にかかわる重要な情報ですので、この点についてピンポイントで解説する動画を用意しました。

 



再生速度変更可能です⇒: 

 

「SFCがどうかを気にしすぎるな」と私が言う理由はここにあります。大学に媚びすぎだというのも同じです。そして、自分が何に関心があるのですか?と問うのも同じです。大学側は多様性を大事にしており、非典型を大事にしているのに、「SFCは〇〇なので・・・」と受験前に同じ人間を塾が作ってしまえば、受験生は慶應SFCに受かりにくくなってしまいます。

 それではどうすればいいのでしょうか。
 最初から慶應SFCの選抜基準に合致した人材を育てるという考えは、少し危険です。選抜基準は変わり続けるでしょう。変わり続けなければ、進化しないということです。しかし、根本理念は変わりません。根本理念がクルクル変わる大学には存在意義はないでしょう。教員を全員解雇し、施設の作り直しをやるくらい徹底しなければ、根本理念を変えて別大学を作るようなことはできません。そこまではなかなかやらないでしょう。教員も全員クビになってしまうからという理由だけではありません。そのようにクルクル何をやっているのかよく分からないような目先の利益だけに捉われた学校運営に価値が無いからとも言えます。逆に言えば、受験産業の側も進化し続ける必要があると私は考えています。慶應SFC受験対策専門塾なのであれば、慶應SFCが望む人材に対する期待値を超えるレベルの人材を送り込まなければ、安定して合格してもらうこともできません。私が原則中心の考え方を大切にし、最先端の思考術や、能力開発に関する指導を行い、思考力を引き上げる試みをしているのは、このあたりに事情があります。私が運営する塾(速読情報活用塾など)では、東大医学部卒も学んでいます。

23-16 慶應SFCの合格率を2倍程度に高めるには?
 環境情報学部か、総合政策学部のどちらかだけに合格した小論文指導者がSFCの対策論を述べる際には、書き分けや考え方の違いを詳しく解説しません。分かっていないのか、ポジショントークをしているのかは、どちらでもいい話です。このような場合、単発のこの方法で受かると指導されがちです。受験生の側は言いくるめられていることが多いのかもしれませんが、大変損をする考え方です。
 合格者は両学部から出るのは、どのような塾でも起こる現象です。そもそも、特定の誰かの本を1冊だけしか読まないなどということは現代社会ではほぼないので、本を読むこともあれば、ネット検索で情報を得る人もいるでしょう。その中で、何を指針としたのかについては重要な判断基準となりえることはあっても、何を参考にしたのかなどについてはなんの判断基準にもなりません。従って、例えば慶應SFC合格者の中で私の本を参考にした人は何人程度いるかという話になれば、毎年数百人はいるという話になってしまうでしょう。この結果をもって「牛山の本を参考にした人が数百人慶應SFCに合格しているので、私の本が素晴らしい」などとは言えないということです。当たり前ですね。参考にするのと、指針にするのでは全く意味が違います。また、ネットの合格情報は、匿名や偽名の情報が多いので、あてになりません。無邪気に匿名や偽名の情報、ねつ造された合格実績などを信じている人もいるようですが、これも大変危険です。今の時代、模範解答がどこかのおじさんに外部発注され、その内容を組んで本が出版され、模範解答として塾で配布し、その模範解答を自分が書いたかのように解説が成される時代です。また、掲示板やレビューなど、人が訪問しそうな場所では、①自作自演の絶賛レビュー②なりすまし③評判操作のためのネガキャン④自社は無関係とアピールするための、かく乱を目的とした(同業者への肯定寄り意見の)書き込みなどが横行しています。加えて、これらの内、自社に都合がよいものを上位表示させ、意図的に勘違いを起こさせて本を買わせるための、掲示板操作を目的とした「仕事の発注」がお仕事サイトでなされています。

 

 

ネットの情報を信じて不合格になった若者

 かわいそうなのは、このような状況を知らず、受験を迎えてしまい、不合格となり、私の塾に入ってくる子です。このような子は、「妄信していた」などと私に当時の状況を話します。「牛山先生を信用してもいいですか」と私が質問されたとき、「信用しないで考えてください」などと話すのはこのためです。何かを信じるか信じないかの問題にしないことが大切です。何かを信じるか信じないかの問題にしている人は、上記のような信じさせるための実質的な犯罪行為に簡単にひっかかります。

 

 そもそも、私がここで解説していることも、私の現段階の考えにすぎません。(2016年に執筆しています。)従って、部分的には今後は変わるかもしれません。もし私が間違っている部分があれば指摘してください。仮に大学の教員であっても、常に自分が神仏のように絶対的に正しいなどとは考えていないものです。自分が絶対に正しいと考える考え方は、危険です。また、自分の判断が優れていると考えている人は一般的に推論能力が低いことも分かっています。クリティカルシンキングとは、批判的思考力のことであり、論理思考の基本的能力です。

 

 それでは、大学発信の情報を確認してみましょう。信用していいですか?と問われて、考えてくださいと私はお話ししましたね。

 

 考えるというのは、例えば次の慶應義塾大学が公式にウェブサイトで発信している情報の違いを考えるということです。

 

------ここから-----
総合政策学部アドミッションポリシー
総合政策学部は「実践知」を理念とし、「問題発見・解決」に拘る学生を求めます。問題を発見・分析し、解決の処方箋を作り実行するプロセスを主体的に体験し、社会で現実問題の解決に活躍する事を期待します。従って入学試験の重要な判定基準は、自主的な思考力、発想力、構想力、実行力の有無です。「SFCでこんな事に取り組み学びたい」という問題意識に基づいて、自らの手で未来を拓く力を磨く意欲ある学生を求めます。
-----ここまで-----

 

以下と比較してみましょう。

 

------ここから-----
環境情報学部アドミッションポリシー
ひとつの学問分野にとらわれることなく幅広い視野を持ち、地球的規模で問題発見・解決できる創造者でありリーダーを目指そうとする学生を歓迎します。環境情報学部の理念や研究内容をよく理解した上で、「SFCでこんなことをやってみたい」という問題意識を持って入学してくれることを願っています。SFCの教育環境や先端プロジェクトなどあらゆるリソースを積極的に活用し、「自らの手で未来を拓く力を磨いてほしい」と期待しています。
-----ここまで-----

 

 似ていますが違いますね。なぜでしょうか。まったく同じなら一つの学部でいいと思いませんか。それが考えるということです。

 

 細かなところを見ていけば、総合政策学部は、問題発見・問題解決に拘る学生とあります。これはまさしく私が次の章でお話しするPSA(問題解決アプローチ)のことです。親切に評価軸まで書いてくれています。

 

------ここから-----
従って入学試験の重要な判定基準は、自主的な思考力、発想力、構想力、実行力の有無です。
-----ここまで-----

 

 本章でお話ししたことを振り返り、当てはまることが多いことに気づく人も多いでしょう。
 私が運営する塾では、この学生選抜基準をかみ砕いて説明し、スキルギャップを埋めるためのカリキュラムを用意しています。だから総合政策学部にどんどん合格してもらっています。

言い換えれば、大学は上記の能力をテストできるなら、口述試験でも、プレゼンの試験でも、小論文試験でもなんでもいいと考えているということです。それなのに、過去問題の練習ばかりをあなたはしてしまっていませんか?大学の教員の方は、毎年同じ問題ばかりを出していれば、優秀な学生を選抜できないと思っているでしょう。どうやれば、このアドミッションポリシーで発信しているような学生を選抜できるのかと、知恵を絞っているでしょう。
 欲しい人材像が明確であればあるほど、いくらか問題の傾向が似てしまうのは、仕方がないことかもしれませんが、可能な範囲で問題を変えて、受験生の対策可能性を引き下げることもやらなければならないでしょう。
 この状況を簡単に言えば、「受験対策とのイタチごっこ」はどういう分野でも一定程度起こるということです。慶應SFCが求めていることは何だと思いますか?あなたが、SFCが望む人材になることでしょう。以下のようなことが言えると思います。

・慶應SFCが落としたい人・・・手軽な対策ですり抜けてパスすることを狙う人
・慶應SFCが受からせたい人・・・各学部基準で、評価した場合に能力が高い人材

あなたがもし慶應の教員なら次のABそれぞれの学生の内、どちらの人を受からせたいでしょうか。

A:過去問題を分析して過去問題のパターン化された練習をシコシコした学生
B:未来の問題を解決するために、問題意識を持ち、図書館で本を誰よりも読み、情報を検索し、独自の学びを他の人以上に深めている学生

 私はBだと思いますよ。あなたの考えはどうでしょうか。Bのような学生や、能力が高い学生をどうやって選抜できるかを真剣に考えているのではないかと私は思います。

 それでは、次に環境情報学部のアドミッションポリシーを見てみましょう。

 

------ここから-----
地球的規模で問題発見・解決できる創造者でありリーダーを目指そうとする学生
-----ここまで-----


 これはイメージがわかないかもしれないのですが、環境情報学部の村井学部長が「インターネットの父」などと称賛されていることと全く無関係ではないでしょう。情報環境の急速な変化は、ここわずか数十年で起こっていることなのですが、恐るべき進化を遂げています。このわずか数十年の間に人類が数千年かけて築いてきた文明や叡智が急速に情報インフラの中に統合され、新しい知の枠組みが構築されつつあります。次の時代は、ネットに接続された人工知能がプログラムを組み、人類のあらゆる諸活動を代行し、高い次元で問題が解決されていく時代です。

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグやGoogleのラリー・ペイジのような人物だけが情報環境の立役者ではないとしても、SFCが強く求める人材像の一つでしょう。私は環境情報学部にも合格していますが、もともとこの手の発想は得意であり、本章でご紹介したように、IT・SNSに関する特許も取得しています。以下の答案は、合格イメージを鮮明にするために参考になるでしょう。私の塾では、慶應大学の過去問題数十年分をすべて私一人で作っています。



------ここから-----
2016年度 環境情報学部入試問題 設問3 解答例

電子マネーや電子決済はどのような発展進化を未来において遂げているだろうか。
私は、世の中の決済割合のほとんどが電子決済化する未来がくると考える。同時に、紹介制度による代理販売報酬のフィードバックシステムや、デジタル紹介を通じた割引が一般的になると考える。例えば、飲食店で食事をした場合、知人や友人を連れていけば、割引になり、仮に連れて行かない場合でも、SNSを通じてなんらかの情報が拡散するだけでも、割引になるような世界が現れるはずだ。現状の世界で認識されている貨幣という概念が未来は希薄化し、割引や報酬のフィードバックは当たり前の世界になるだろう。
私が上記のように考える理由は、大きく二つある。第一に、従来のデジタルインフラが整っていなかった時代にはできなかった「顧客情報と報酬や割引情報のひも付け」や、現物のリアルマネーでは実現できなかったスムーズな割引、報酬の支払い、クーポン券の配布などがワンクリックで可能になるためである。仮にリアルの手帳や台帳に記録した内容を参照しながら上記のサービスを実施するのは大変な手間であるばかりか、顧客の友人、知人の情報がないため、不可能である。上記の未来が出現すると考える第二の理由は、現行の資本主義経済の限界と、極めて非効率な情報伝達インフラである。現行の資本主義経済下では、本来顧客同士が話を通じて拡散していくべき情報が広告という形で買われている。そのため、ほとんど必要とされない情報を無理やり人に届けるため、スパム同然の広告が私たちの身の回りにはあふれている。数億円の広告費を投じてもそのほとんどは望まない人に届き、これらの広告宣伝費を消費者が購入時に負担しているのが現行の資本主義経済である。当然価格は必要以上に高くなり、本来資本主義経済下で極めて大きな価値を持つ口コミなどの行為に対する報酬は皆無である。このような非効率かつ無駄の多い情報伝達システムが長期に渡り存続するとは考えられない。人類の歴史は常により無駄を省き、効果的な社会システムへと変貌を遂げてきた。
以上、私はデジタル決済の革命が起きると考える。


【余談】
今回の内容は、私牛山が特許出願し、査定を受け、国際出願した内容です。私が上記のような世界を作り出すことができるかどうかは、現時点では分かりませんが、いずれ必ずどこかの企業が上記の仕組みを作るのではないかと私は見ています。

貨幣以外のものが、経済を仲立ちする仕組みですね。

貨幣以外のものが経済を仲立ちする仕組みが完全にできる前に、もしかすると、飲食店や量販店で完全電子決済の仕組みができる可能性もあります。現行の飲食店の決済システムなどは大変脆弱です。ここに何らかの統一的枠組みが来ない方がおかしいと私はずっと前から思っていました。

ネット予約システムなどは、ネット決済してもらわなければ、キャンセルされることが多いそうです。先払いの電子決済システムであれば、このような不都合も起きません。飲食店のレジに電子マネー決済が普及するのもそう遠い話ではないかもしれませんよ。
-----ここまで-----


ちなみに、SNSの利用目的に関する調査によると利用目的はこのようになっているようです。



 

2016年度の解説はこちらのページで行っています。
http://www.skilladviser.com/base/sixyouron/sr-2/keioukakomon/kankixyou/kan_2016.html

慶應大学の過去問題20~30年分はこちら
http://www.skilladviser.com/base/sixyouron/sr-2/keioukakomon/kankixyou/kan_2016.html

 

 私は自社でいくつものソフトウェアを開発し、人工知能も開発しています。また、研究を行い、論文も当該分野について執筆しています。つまり、屁理屈で述べているわけではなく、実践者かつ体現者として解説を行っています。

 例えば、世界に存在する諸問題の内、私は「いじめ問題」を深刻な問題として捉えており、問題解決に向けてチャレンジを続けています。残念ながら私の能力不足で、日本や世界のいじめ問題を根絶することは少しもできていません。それでも、情熱を持って、若い人の命が無くなることや、苦しみを減らすこと、戦うことには、意義があると考えています。
 「お前に何ができる!お前の実力はたいしたことがないし、お前の活動など少しも役立っていない」とお叱りを受ければ、まったくその通りです。ふがいがなくて、自分が嫌になることもあります。胸をはってどうだ!と言っているわけではありません。私もチャレンジャーにすぎないのです。

 次のような電子書籍とソフトウェアも開発しています。


「どうやっていじめ対策ソフトでいじめを無くすのか」
http://www.skilladviser.com/book/ijime/ijime0.pdf

いじめ対策ソフト 
http://structure-notebook.com/diary110/login.php

いじめ対策ソフト 使い方
http://www.skilladviser.com/ijime_110.html

 

 今はこのいじめ対策ソフトを一人でも多くの人に認知してもらうためにも、ここでご紹介した特許のチャレンジ案件に取り組んでいます。仮にうまくいけば、かなり大きく問題を解決できる可能性があります。

 

 ここでご紹介したような総合政策学部と環境情報学部の違いをしっかりと認識し、考え方や、書き方で違いを作ることができれば、それだけ合格しやすくなります。あなたが総合政策学部にも受かるし、環境情報学部にも受かるということです。

23-17 添削の方向性
 ここまでに私がお伝えしている内容は、添削と無関係ではありません。一般的に、添削指導とは、みなさんが書く小論文の答案を特定の合格しやすい方向へ導くことです。ダメ出しが添削なのではありません。
 あなたが、理解していない部分に気づかせ、理解するように導かなければなりません。したがって、添削は、双方向の作業と言えます。学生も指導側も両方が、がんばらなければなりません。

 

合否に影響を与えるのは「添削の質」と「指導の質」が9割

 日本一や、全国1万人中10位、全国で1位、3位、6位、7位など、全国10位以内続出、法科大学院も次席合格で学費免除などの実績が物語っているのは、生徒をトップレベルまで引き上げるということです。他の塾と私が主催する塾の違いはここにあります。
 指導現場で行われていることをよく理解している塾の経営者は、自分の娘を自分が運営する塾で学ばせず、私に預けるということがありました。日本最大手の予備校です。当然その塾にはたくさんの先生が在籍しています。それでも私に小論文の添削を依頼されました。そのお嬢さんは慶應大学法学部に進学しています。なぜこんなことをするのでしょうか。教えることができることと、本当に点数を引き上げることができることは、同じではないからです。そのことを塾の経営者はよく理解しています。家庭教師なら誰でもできます。自分が知っていることを教えればいいので、数学の問題が分からないのであれば、問題を分かりやすく教えればいいでしょう。しかし、小論文はそうはいきません。

 

添削は何でも点数が上がるわけではない

 小論文の場合、正解が一つではないばかりか、そもそも、解答例のレベルからして違います。教える側が、何が正解なのかがよく分かっていないことすらあるのが小論文という科目です。従って大学生のアルバイトが教える場合は、その大学生は「小論文の実力が高まってきた受験生」以下の実力であることも少しも珍しくありません。サッカーやバスケ、野球ではしばしばこのようなことが起こります。加えて、小論文の解答例は、どこかのおじさんが考えて書いているものかもしれません。このような場合、当然SFCはおろか慶應を受験したことすらない人が作った解答例であり、その塾の指導方針と、その「模範解答」はまったく一貫性が無いものです。解答例と指導がズレているわけですから、大学生のアルバイトは、解答例を再現できない指導をすることになります。再現性がないことをアドバイスされる学生はどのように点数が伸びるのでしょうか。指導内容は、解答例(解答作成の指針)と一致しないダメだしをするだけになります。言い換えればそもそも慶應大学の過去問題解決などと言えば、聞こえはいいかもしれませんが、自分で解答を再現できているわけではないので、このように考えれば「模範解答」が再現できるかもしれないよね・・・という話になってしまっているということです。教えている講師がそうなのですから、その講師の下で添削アルバイトをしているその大学生が合格答案を書くことができるのかと言えば、できないということもあるでしょう。このような状態で、小論文の実力が向上する道理はありません。しかし、大学生のアルバイト代に利幅がプラスされて料金がチャージされている分、大変安く小論文対策を済ませることができるというメリットはあるのでしょう。

 

添削と指導はセットであり、別々に受けても意味が無い

 単に添削を受ければいいわけではありません。むしろ添削を受けることで、点数が下がることも珍しくありません。本来はあまりないことなのでしょうが、日本ではおかしな指導が行われているため、原因を書いて対策案を書くなど、目も当てられない答案が目立ちます。教えられた内容が、テクニック中心のものである場合、内容はどうでもよくなっており、学生は「何も考えていない」に等しい内容を書いてしまっていることが少なくありません。この場合、学生の方は悪くありません。単に、考え方を教えてもらっていないだけです。

 

環境情報と総合政策の書き分けを指導されないのは危険

 また、「環境情報と、総合政策の書き分け」や「考え方の違い」、「本質的な内容」を知らない人が添削をしている場合、当然教えることができません。導くことができないということは、生徒はあまり成長しておらず、添削のために使った時間を消費しているということです。2時間かけて作った答案を送り、成長しないのであれば、問題を解く意味がほとんどありません。
 普通に書けば50点程度もらえそうな学生が、原因を書いて対策案を書くなど、設問を無視して書いている場合、35点程度まで点数が下がります。ここまでひどい事例は、すべてのケースではないにせよ、本稿でお話しした内容をあまり理解していない添削者が添削をした場合、当然分析も分からない、論理も分からない、どう文章を組むのかも分からない、何が評価されるのかも分からないという状態で指導が成されるので、指導される側も分かる道理はありません。分からない状態で指導を受ければ、評価はあまり上がらないということです。ダメだしと添削は違います。ダメだしは誰でもできるので、小論文の添削は誰でもできます。しかし、大きく成長させることができる人はあまりいません。特に慶應SFCの小論文指導については、ここまでにお話ししたように、かなり勘違いが多いので、普通に良い小論文添削を受けるだけでは十分とは言えないでしょう。慶應SFCの特殊性を理解し、対応できるようになるための添削が理想です。

 

あなたは両学部が要求するスキルギャップを埋めることで両方の学部に合格しやすくなる

 ここでお話ししていることが、またもや表面的に捉えられると危険なので、もう少しだけ詳しくお話ししておきましょう。ここで「書き分け」と言っているのは、評価される手っ取り早いテクニックのことではありません。厳密に言えば、「スキルギャップ」のことです。
 環境情報と総合政策が似ているようで微妙に違うアドミッションポリシーを用意しているのは、言い換えれば別の能力を要求しているということです。環境情報に合格して、総合政策に落ちているという状態は言い換えれば、環境情報学部基準のレベルには到達できたが、総合政策学部基準のレベルには到達できなかったということです。厳密には上記のように表現すべきではありませんが、簡単に誤解を恐れずに分かりやすさを重視して表現すればそうなるでしょう。総合政策が問題発見や問題解決能力を重視しているということは、言い換えれば精緻な論理思考が要求されているということです。問題発見・問題解決プロセスにおける精緻な論理思考というのは、それ以外の研究スキルなどと同じと考えるべきではありません。研究スキルは狭い範囲の論理思考であり、問題発見・問題解決のスキルは広い範囲の論理思考であり、同時に感性思考なのです。(誤解を恐れずに分かりやすく言えば、このデータをどう料理するかというプロが研究者であり、そもそも質の高いデータとはここでは何かと考えて、精度の高い仮説を構築できるのが、コンサルタントなどの実務家です。)私が本の中で「情報の当たり付け」などと書いているのは、仮説思考などと呼ばれる感性優位の思考法です。慶應大学総合政策学部の過去の問題で言えば、自民党と民主党のマニュフェストについて、どのような座標軸を設定して双方のマニュフェストを評価すべきかを考察させるような問題はこの能力に該当します。ざっと両党の言い分を見て、統合的に思考することが求められています。換言すれば、物事を分析していく際の素養を見られているということです。ところが、環境情報も総合政策も同じSFCなのだから同じ能力しか試されていないのであるから、そんなことは考えなくてもよいという指導があります。私がここで両学部のアドミッションポリシーを紹介したように、もともと違う人材像を要求しているのですから、このような言いぐさは、論拠が妥当ではないと考えるのが適当でしょう。

 

過去問題を表面的に見てはならない

 過去問題を分析すると・・・などと、分析という言葉が安易に使われすぎです。レーダーチャートを作れば分析ができているなどと考えるのは大変幼稚な発想です。総合政策学部で出題された過去問題に出てくる言葉をクルクルやっても、そこで求められる能力が鍛えられるかと言えばそうではありません。
 私は何度も本稿で、「基本力」が重要だと説いてきました。大学がアドミッションポリシーで名言しているような人材像にかなった基本の力とはどのようなものかを考えましょう。
 つまるところ、問題発見・問題解決ができるようになればいいのです。どこをどう切り取られても対応できるようになっていれば合格です。それにも関わらず過去に出たパターンの焼きまわしばかりをやっていて何になるでしょう。
 問題を表面的に見るとは、問題の「形式」に捉われることを指します。要約問題が出たら、要約を練習すればいいと考えたくなるのは分かります。しかし、それでは本質を見失います。例えばかつて、カント・デューイ・アーレントの教育論についての課題文が出題され、どこが共通しており、どこが食い違っているのかを述べよという問題が出たことがあります。問題の形式に注目すれば何が同じで何が食い違っているのかを見抜く練習をすればいいという発想になるでしょう。しかし、これを基本力という観点から見た場合、別の見え方になります。カント・デューイ・アーレントそれぞれの中心命題は何かという発想や、どのように彼らの言説をグルーピングできるかという発想です。論理が基本力を支えていると私はお話ししましたね。論理的に三者の言い分を見て、感性的に情報をグルーピング化することがここでは大切です。問題発見の基本的な素養とは、雑多な情報をグルーピング化してそれらの情報に意味づけを与えることだからです。このような思考態度は、問題解決学における基本的な態度です。しかし、環境情報も総合政策も同じという理論に立脚した場合、多くのケースで求められるスキルギャップの能力ではなく、問題形式ばかりが注目され、「練習」と称してドリルが成されます。このような対策は、求められる能力を強化しにくいと言えます。その理由は、もともとよく分かっていない状態で、生徒が練習させられているからです。生徒はどのように考えるべきなのかということも知らない上に、何が重要なのかも知らない状態です。これはちょうど、何も教えられることなく、野球の試合に出された上に、監督にダメ出しの連発をされるのに似ています。
 問題の形式に注目するのは表面的なものの見方です。過去に情報をグルーピングせよという問題は出ていないかもしれません。しかし、問題発見のステップで何が重要な問題なのかを定義するプロセスでは、情報のグルーピングをどのように行い、それはなぜなのかについて説明できることが大切です。本質的に物事を捉えていかなければ有効な対策は打ちにくくなります。出題の形式はそうではなくとも、やっていることは、座標軸を作成する問題も、要約的に異同を述べる問題も、情報のグルーピングなのです。


【情報のグルーピングを実質的に要求している問題(執筆時から過去5年分)】
 2016年(総)問2 何が同じで何が違うのかを見極めさせる問題。

 2015年(総)問2 現状と課題を明らかにする指標を作らせる問題。問題が発生する要因を分解して考えさせている。要因は複数存在するため、実質的に何をグルーピングすればいいのかを考察しなければならない。


 2014年(総)問1 違いを説明させる問題。違いを見極めるには異同をグルーピング化する必要がある。


 2013年(総)問3 各組の違いを分析させ論述させる問題。異同をグルーピング化する必要がある。


 2012年(総)問1 共通する論点、異なる論点、重要だと考える論点を上げさせ、論じさせる問題。それぞれについてグルーピング化が必要。


 形式にしか目がいっていない人は、すべてグルーピング化させる問題であるということには思いが至らなかったでしょう。グルーピング化せよという問題は出ていません。あなたは過去問題をやるか、同じ形式の問題をやることばかり考えていませんでしたか?ここにある問題は、形式は違っても、すべて問題発見の力を見る問題になっています。総合政策学部のアドミッションポリシーの通りになっています。
 もともと、問題発見・問題解決とは、戦略の立案のことです。戦略の立案とは、混然一体となった複雑な状況の中から、それぞれの物事の構成要素(非線形に存在している諸要因)を見極め、問題の所在を明らかにし、対策案を立案することです。従って、これらの戦略設計のプロセスの中では、本質的な問題点を特定する作業が必要であり、この本質的な問題点を特定するプロセスとは、情報のグルーピング化にほかならないのです。単に情報のグルーピング化といっても、結局試されるのは論理思考であり、だからこそ言い換えれば、基本力が大切ということになります。グルーピングすればいいのではなく、その質が大切です。論理思考ができない人は問題の発見もできません。また、分かりやすいのは論理思考ですが、感性的に感じ取る力が少ないと、やはり分析の精度はどうしても落ちます。原因の原因を考えている場合ではないのです。SFCが膨大な資料を出す問題を作っているのは、この能力を見たいからであると考えられます。
 「慶應大学の過去問題の説明」といっても、100人の解説者がいれば、100人違う解説になります。100通りの解釈があるとも言えます。ここでご紹介したのは、問題解決の原理原則に照らした見方、考え方です。問題解決に詳しくない人、問題発見プロセスに詳しくない人は、(この2016年時点で)ここでご紹介したような説明をしないでしょう。過去問題の解説と言えば、全部同じに聞こえるかもしれませんが、中身は全く違います。だからこそ、「慶應大学の小論文の解説」を聞いているだけで安心していてはダメだということです。
 私がここでこのような解説をすると、「それではグルーピング化の練習をしよう」などという塾が出てくるかもしれませんが、それもまた表面的な考え方です。私が、グルーピング化が大切といっているのは、ここでもやはり問題解決の一面を説明しているにすぎません。本質的な部分ですが、すべてではありません。

 

同じ形式の問題をやればいいという間違い

 物事がよく分かっていないと、形式にしか注目することができません。その結果、(出題形式にあった練習をすればよいのであろう)などという仮説が導かれることになります。しかし、その出題傾向にあった練習と称してやっていることと言えば、実際問題、生徒側からすれば、その場しのぎのマス目を埋める訓練をやっているだけなのです。(これでは何の練習にもなりません。)また、ここでお話ししたような物事の本質(のほんの一例)を理解していないアルバイト学生がいくら添削をしても、(よく書けた文章だな。)(よく書けていない文章だな。)というような、まったく本質に言及できない指摘がクルクルとなされるだけです。このような受験生と教え手のまったく試験とかみ合わない作業を何十回やっても、成績の向上はあまり見込めないと言えるでしょう。「回数至上主義ではダメですよ。」と私が指摘するのはこのようなところに(も)理由があります。加えて念のために言及しておけば、個別の要約問題や指標を作る問題をやったところで、まったく同じ問題が出題されなければ対応できないばかりか、その指標を作るためのマクロな視点を指導されていなければ、「対象となる問題を構成する全体像」の中から(問題を解く場合には、出題意図を把握して)、真に有意義な指標を作るという、およそ研究活動でもっとも求められる科学的視点は得にくいでしょう。本来は、そもそも何のために指標を作っているのか、先行研究で提示されている理論的な欠点とはどのような部分にあるのかという、視点こそが高度な問題解決の現場では求められるからです。指標を作ることが目的なのではなく、指標の意味を真に問わなければなりません。これがマクロな視点であり、ゼロベース思考です。言い換えれば、私たちは指標を作るために指標を作っているのではなく、問題を解決するために指標を作っているということです。従って指標を作る問題が出題されたからといって、指標を作る練習をするのではなく、問題を解決するための指標とは何かを考える練習が必要ということになります。言い換えれば、これは研究計画書を作るということなのです。アカデミックスキル(学問的な技術)があれば有利になる受験を望ましいと私は考えているわけではありません。少なくとも過去に出題された問題を見る限りではそのように判断せざるを得ない問題が存在するというだけです。

 

過去問題をやるから対応できるのではなく、必要な能力を強化できているから対応できる

 また、マクロな視点から学びを得ておかなければ、結局問題解決学の切り口のどこから出題があるか分からないわけですから、対応力という意味では、あまり期待できないということになってしまいます。過去問題や類似問題ばかりやるということは、同じ問題が出なければ対応できないということでもあります。私が「過去問題ばかりやらなくてもいいのですよ。」と言う理由はここにあります。それよりも、基本ができていない人が、いくら過去問題と全く同じパターンの問題がでることにかけて、それをやったところで、やはり原稿用紙のマス目を埋めても、合格答案は書けないということになります。基本を軽視して、応用的なことをやっているつもりで練習チックなことをやるだけでは、変則的な問題が出た時に困ることになります。私が塾の指導方針として、「原則中心の考え方」や「本質」を重視しているのは、応用がきくからです。総合政策学的アプローチと言えばかっこうがいいと思ってはいけません。問題解決学のアプローチのうち、要は、左脳的に分析した上で、問題解決を行う場合は、必ず原理的に情報の取捨選択を行いながら、情報のグルーピング化を行い、(場合によってはなんらかの指標を基に、)本質的な問題点を定義していくプロセスが必要になるということなのです。

 

ここでご紹介したのはほんの一例にすぎず、すべてが万事この調子なのが教育業界

 なお、私がここでご紹介した事例はほんの一例です。物事を表面的に見て受験対策案がなされる場合、(授業カリキュラムの構築や、過去問題の解決、練習など)その効果は著しく低下するということです。まず私が書いている小論文の本をできればすべて読みましょう。そうすればここでお伝えした恐ろしい状況を回避し、それなりに有効な対策ができます。
塾や予備校業界は、「授業をやらない塾」の成立など、変革が進んでいます。教育産業の怖いところは、何を誰が教えても教育になってしまうというところだと昔から言われています。ハイレベルなことや、真に必要な基本を教えてもらっているのか、本当に必要なことを教えてもらっているのか、そうではないのかについて、厳しく見極めが必要です。見極めるためには、受験生の側も何かを信じるのではなく、ある程度考えていくことが大切です。とにかくよく分からないという場合は、安易に問い合わせるのではなく、(そもそも何が分からないのかが分からないからこそ問題が生じているのです。)多面的に学んでいきましょう。メルマガにも登録しておきましょう。早めに登録しておけばより多くの情報を得られます。

 

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 ただし、ここまでに述べたことはあくまでも対策についての一般論だと言えます。例えばたまたまなんらかの偶然でこの記事を入試問題作成者が見ることがあれば、(それならばその考えの反対を突いて、指標を作る問題を10連発にしよう)などと考えることもあり得るでしょう。しかし、それはあくまでも記事を見たことがきっかけとなっての思考であり、対策の一般論としては、やはり非表面的な対策の方がよいということになります。

 あなたに本を読ませまいとして、匿名や偽名でネガキャンをする人がいても、無視することです。自分の営為を成立させるために、私が書いた本をあなたに読ませまいとする人がいます。

 

知らない・理解できていない・できない状態で、できる状態の人を作ることは難しい

 小論文の添削指導は、添削と指導がセットであると私は述べるのはこのような理由からです。問題解決のやり方も、重要な勘所も知らず、それを再現できない状態で、指導者が添削指導をしても、「一般的な文章論の立場からダメな部分」を指摘されているだけとなり、高い視座から、能力養成のために、どのようなスキルギャップが存在しており、どのように考えるべきなのかを指導することはできないということです。

 

 もちろん、私がここで述べたことは、添削に関する一般論にすぎません。従って、何かしら有効なアドバイスがなされるのであれば、その点について答案が改善されていくことは十分に考えられます。物事は一般的に良い面と悪い面が存在しているのが常であり、ここでご紹介した内容は、あまりよくない側面の説明であると理解してください。

 

私はいかにして大学院で問題発見思考の科目で最優秀グループになったか

 私は大学院で、問題解決のグループワークで最優秀チームに選ばれました。「東大卒、京大卒、東大大学院修了者、医師(東大卒)、会計士、博士(東大)、難関国立大出身者、会計士」などが、他のチームにはいました。この「問題発見」の科目は、マッキンゼーのOBが講師を務め、指導後にどのチームが問題発見の精度が高いのかを観察します。
 問題発見の科目で最優秀グループになれた理由を、問題解決学の視点から言えば、情報に対する意味づけの精度が高かったということになります。情報は誰の目の前にも平等に存在しています。しかし、この情報にどのような意味づけを行うかは、人によって違います。例えば、塾が発表している合格数が多いことについて、だからスゴイと言う人もいれば、信憑性が無い、母集団の属性が違うので、解釈を導くことはできない、宣伝力と合格力が混同されてしまっていると、意味づけを行う人もいるでしょう。同じ情報を目の前にすれば、誰もが同じ結論に至るなどということはないということです。情報から導くことができる思考の精度は、広義の論理思考の精度の高さに比例します。非論理的な思考では、問題発見の力は弱くなるということです。
 私は「東大、京大、東大大学院、医師(東大卒)、会計士、博士(東大)、難関国立大出身者、旧帝国大学卒の医師、会計士」が集まるMBAコースでTOPの成績優秀者にもなっています。論文執筆、問題発見、問題解決が得意な人間です。

23-18 慶應SFCの小論文対策(方向性)
 本章でお話ししたことを大切に、SFC対策を進めましょう。対策の方向性は、何度もお伝えしているように、「基本力」を大切にして、知性を強化することです。基本力とは、論理と感性でしたね。ところが、現行の小論文指導は、まず、恐るべきことですが、(海外ではちょっと考えられませんが)論理も感性も無視しています。当然学生は、何が論理的なのかすら知りません。それで立論ができるわけがないでしょう。そういう状態で練習と称して過去問題をやっていれば合格できるかというと、できたらラッキーです。また、感性を働かせることについても理解が相当不足している人が多いです。このような状況で、先端的な頭の使い方や、よりよく考えることができる思考法を学ぶことは絶望的と言えます。従って、一般的な塾で、ここを強化してもらうことは期待しにくいでしょう。「てにをは」を教えますという塾はありますが、「てにをは」は基礎なので、基礎を強化しても受かりません。それでは、どうやって、対策を進めていくべきでしょうか。以下の本をテキストにすれば、基本力を強化できます。

 

  1. 1.小論文技術習得講義
  2. 2.小論文の教科書
  3. 3.慶應小論文合格バイブル
  4. 4.牛山慶應小論文7ステップ対策

 

 上から順番に簡単です。入門用には、「小論文技術習得講義」がいいでしょう。簡単であるということは、基礎なので役立たないなどとは考えないでください。簡単なことをひも解いて教えるのが一番難しいことです。
 一度読んで理解できないでしょうから、大事だと思ったところに線を引き、何度も読んでください。これらの本をテキストにして小論文を学ぶことです。
 大学の教員でも、自分で書いた本をテキストにできる人と、できない人がいます。自分が書いた本で講義をできる人は、体系だった指導を実現できる業績を残している人です。上記の本で学べば、少なくともここで私が解説した内容については、体系だった形で知識を習得できます。
 小論文は奥が深いので、これらだけで学びが完了するとはとても言えませんが、大事なことをマスターできます。
 2回目に読む時は、線を引いたところだけ読めばいいので、10倍ほど速く読むことができるでしょう。クルクル何度も読み、大事なところはノートにまとめましょう。

 

 慶應SFCの小論文対策はできないなどと言われることがありますが、対策は可能です。以下の3つが重要です。

 

  1. 1.適切な指導
  2. 2.適切な添削
  3. 3.適切な学習

 がんばって対策を進めていきましょう。

牛山執筆の慶應小論文対策本と書籍の動画解説


「小論文技術習得講義」

分かるから『書ける』に変わるにはどうすればいいのかを詳しく書きました。
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