やる気を科学的に捉え学際的アプローチで解決する

 

はじめに第1章第2章第3章第4章・第5章第6章第7章第8章第9章第10章最後に

 

[ やる気をだすことを阻む6つの壁

 

 やる気を阻む壁は次のようなものがある。

 (1)遺伝子と環境
 人の判断は遺伝子と環境の相互作用の結果生まれていると言われている。したがって、ほとんどのケースで、やる気はこの要因である程度決まってしまう。この遺伝子と環境は変えることが難しいため、以下のような他の因子を触っていくことが大切だ。

 (2)ビリーフ
 人は自分の価値観や信じていることのフィルターのようなものを頭に持っている。したがって外から入ってきた情報はこのフィルターを介する。たとえば、あなたが子供に対して勉強をするように促したとする。その時に、すぐに言われたことを重く受け止め、勉強を喜んでやるだろうか?
(イエスかノーかで少しだけ考えてみて欲しい。)

 多くのケースでは、保護者の言は軽く受け止められ、勉強を喜んでやらない。その理由は、子どもの側の信念や価値観にある。そのフィルターを変えない限り、いつまで経ってもあなたが伝えることは「軽く扱ってもいいこと」であると認識されて、状況は変わっていかない。

 (3)信頼関係
 言うまでもなく、信頼関係が無ければ、ストンと心にメッセージは入っていかない。またやる気のサポートは、もっと短時間でやることができるのでは?もっと手っ取り早い解決策があるだろうと勘違いされることが多いが、それは失敗のもとであるのも、ここに原因がある。知らないオジサンといきなり電話をして、心を開いて素直に話を受け入れるなどということはありえないのは、あなたがどこかの知らないオジサンと話をいきなりすることを考えればすぐにわかるはずだ。

 (4)圧倒的なリソース
 勉強のために投入する資源は大いにこしたことはない。時間もかけない、費用もかけないということだと、勉強の環境が整っていかない。経済力がある親の子息に東大生が多いのは、学習に関する障害を親が取り除くからである。(東大生のほとんどを占めると言われている。)経済力だけで問題を解決しているのではなく、親の側が良い意味で必要最低限、干渉しすぎにならないように、必要なところで必要なだけの適切な手助けを行っている。

 (5)こだわりとプライド
 一般的に難しいと言われる試験に挑む人ほど、強いこだわりが試験に対してあり、素直になりきれないことが多い。そのことに本人が苦しむこともしばしばである。サポートを受ける前から、私は国立医学部なので特別ですよね?難関国立法学部なので、無理ですよね。だって難しいから、難しいことをやることが大切であって、難しいことのレベルが相当高い人のサポートが大切なのであって・・・と支離滅裂になっていることがある。

 ところが、国立医学部受験生でも、国立最難関理系であっても国立法学部であっても法科大学院最難関でも、東大院でも、全く関係なく、サポートを受けて大きく改善して大成功していく人はいる。問題は本人の中で大きすぎるプライドがあり、人に対して素直になりきれないことだ。むしろ真に優秀な人ほど、権威や実態の無い難しさに惑わされずに、実態を見て、目標と自分の間に存在するスキルギャップと知見に気づいていることが多い。盲目的にならないのでしっかりとモノを見て、真摯に教えを請い、私を超えていく。そうやって頼もしく成長しているクライアントやかつての生徒がたくさんいることが私の誇りでもある。どんな人でも神ではない。全知全能ではない。だからこそ、得意分野を持った人に教えてもらい、教えてもらう態度で、接するときに、二人三脚で本来の3倍も、4倍も大きな力を発揮できる。

 (6)承認(親等の接し方)
 親の接し方によっても、子どものやる気は変わってくる。基本的に人は承認欲求というものがいくらかあり、人との関わりの中で学習に意味や価値を見出していく。人に認められ、褒められることで特定の課題を好きになり、やる気が起きることもある。脳科学の側面から見れば、やる気が起きるかどうかは、脳の各部位と連動していることがわかる。

 上記の6つは、やる気の因子というよりも、障害として存在する大きな壁である。失敗の元と言い換えてもいい。
 やる気を効果的に引き上げるには、環境に支配されず、信念を書き換え、コーチや講師との信頼関係を育み、しっかりと対策を行い、こだわりやプライドを捨て、親やその他の人から適宜、適切な承認を受けることが重要だ。
















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