設問Aの解説と解答例
分かち合いは、人間にとってなぜ必要であると考えられるか、二つの課題文に共通する必要性を200字以内で述べなさい。
この問題の解き方は、解答要素を引っ張り、作文する・・・・というやり方だと、限界がありますので、ある程度俯瞰して物事を見て、何が言えるのかを考える必要があります。
今回の問題は、上記の意味で、厳密な正解があるというわけでもありません。内容が間違っていれば、当然減点となりますが、解答の表現方法はいろいろとあるでしょう。
従って、述べる問題、つまり説明問題なのですが、ある程度、自由度の高い説明問題と言えるでしょう。
【解答テクニック】
今回の問題を解く上で、課題文の中で述べられている分かち合いに該当する部分に線を引いてみましょう。
すると、このような形になります。
1、トナカイの移動・・・・・・人びとにも配られる。
2、トナカイの・・・・・・・・情報を交換する。
3、悲しみや優しさを分かち合い
4、社会全体のために租税
5、生命を維持する生活活動・・・・・・共同作業で営まれる。
6、農業を基盤とした・・・・・営まれていた。
これらの文章を眺めてみて、何が言えるのかな・・・と考えます。
そうすれば、非常に共通点を見つけやすいですね。
【構成方法】
説明問題の構成は、総論、各論です。
今回の問題では、全体としての自分の結論を書き、その後、具体的なポイントを列挙すれば、自分の意見は論理に飛躍があるわけではないことを説明可能です。
それでは、解答例を見てみましょう。
解答例
分かち合いはなぜ必要なのだろうか。二つの課題文に共通する必要性は、人間社会における相互扶助の助け合いである。二つの課題文において、分かち合いは、様々な形で紹介されている。狩猟における食事、狩猟における情報交換、悲しみや優しさ、租税、生活活動、農業の事例は、助け合いの事例である。アリストテレスが述べる人間の共同性とは、このことを指していると考えられる。
設問Bの解説と解答例
それでは、設問Bを見てみましょう。
これからの社会において、本文の意味での社会サービスの重要性は増すべきか、減るべきか自由に論じなさい。
こんな問題が出ていますね。
ところで、本文の意味での社会サービスはとは何でしょうか。
課題文を見ますと、
分かち合いの思想→社会サービスとあります。
従って、ここでは、分かち合いの思想に基づく社会サービスと考えてもいいでしょう。
このように、矢印で論理図を描いていくと、課題文の論理構造を把握しやすくなるので、問題を解く時にやってみましょう。
ただ、分かち合いの精神に基づく社会サービスと言っても、ピンとこない人もいるかもしれません。課題文を読むと、
1、トナカイの移動・・・・・・人びとにも配られる。
2、トナカイの・・・・・・・・情報を交換する。
3、悲しみや優しさを分かち合い
4、社会全体のために租税
5、生命を維持する生活活動・・・・・・共同作業で営まれる。
6、農業を基盤とした・・・・・営まれていた。
このような事例がありますので、何らかの相互扶助に基づく助け合いの構造についてのお話だと理解するといいでしょう。
みなさんはどう考えますか?
今後、このような社会サービスの重要性は増すのでしょうか。
今回は、3つの解答例を作ってみました。
1、今後重要性が増す。
2、今後重要性は増さない。
3、今後重要性は増すが、著者の意見とは反対の立場である。
今回の問題を解く上で重要なのは、著者や問題制作者の問題意識です。
美しい分かち合いの精神が、現代社会では荒廃しつつあるという問題意識が、問題の背景にあります。
しかし、一方で私たちは、高度に分業化された社会に暮らしており、その価値を享受しています。
ここでの考察のポイントは、議論の重要な前提です。
私が書いた書籍を読んでいる人は、私が構造議論のチャートというソフトを開発しているのをご存知かもしれません。
物事を考察する際に役立つので、知らなかった人は使ってみましょう。
重要な議論の前提は何なのかについて、考察すると、重要判断基準が変わり、結論が変わるという不思議な現象が起きます。
この点に注意しながら、以下の3つの解答例を読んでみましょう。
それぞれ、どのような議論の前提があるでしょうか。
※どの解答例が正しいというわけでもありません。今回は考察の練習としてやってみましょう。
設問B 増すべきの立場での解答例
課題文において、著者は分かち合いの思想を社会サービスと述べている。この分かち合いの思想を土台とした社会サービスの重要性は、増すべきだろうか。私は増すべきだと考える。その理由は、資本主義経済が内包する取引性である。資本主義経済下では、経済取引は、分かち合いではなく、取引条件として認識されることが多い。ノーベル経済学賞を受賞したジョセフスティグリッツは、その著書「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」の中で、グローバリズムが飢餓輸出などの不幸を引き起こしていると指摘している。飢餓輸出は、分かち合いの正反対の現象である。世界の不平等、経済格差は、急速に進んでおり、現在では、9人に一人の子供が飢餓で苦しんでいると言われている。資本主義社会は、分かち合いの精神から大きく遊離したものとなりつつある。
以上の理由より、私は分かち合いのサービスの重要性は増すべきだと考える。
設問B 減るべきの立場での解答例
課題文において、著者は分かち合いの思想を社会サービスと述べている。この分かち合いの思想をを土台とした社会サービスの重要性は、増すべきだろうか。私は減るべきだと考える。現代社会において、善とはなにか。現代社会において、善とは、不足した食料を行き渡らせ、水の不足を無くし、人々を救うことである。分かち合いの思想とは、原始的な人間社会の基盤を前提としており、現代のように人口が爆発し、高度に経済が成長した社会には馴染まない考え方である。換言すれば、時代が変わったと表現はすることができる。確かに古い時代においては、大学教授が農業を行い、野菜を地域で分けるような必要性があったかもしれない。しかし、現代社会にでは、分業の方が合理的に多くの人を救うことができる可能性がある。
以上の理由はより、私は分かち合いのサービスの重要性は減るべきであると考える。
設問B 増す増さないの中間思想の解答例
課題文において、著者は分かち合いの思想を社会サービスと述べている。この分かち合いの思想をを土台とした社会サービスの重要性は増すべきだろうか。私は、分かち合いの思想を土台とした社会サービスは今後増すべきだと考える。ただし、ここで述べる社会サービスは、著者が工業を生活活動の分離の元凶であるかのように批判するのとは真逆の立場である。むしろ、工学的に、私たちは、共同体の原理で、分かち合いを実現できるようになりつつある。その典型例は、シェアリングエコノミーである。この新しい共同体の原理に基づいた経済活動は、インターネットの発達によって可能となった。海外では特にこの工学的なインフラが日本以上に定着しており、あらゆるサービスを安価に利用できる。加えて、人道的な寄付などの相互扶助の精神に基づく活動も、SNSを通じて工学的に行われている。
以上の理由より、私は社会サービスは今後増すべきだと、考える。