慶應大学 小論文対策 第三十三章 譲歩構文のよくある減点例と対処法

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第三十三章 譲歩構文のよくある減点例と対処法



33-1 譲歩構文を絶対視しない
 今日は譲歩構文のお話をします。日本の小論文教育では、この譲歩構文の使用を推奨する指導がちらほらあるようです。私は、「小論文指導の中核に何らかの構文指導を据えること」には、反対です。 その理由は、今まで多くの生徒さんを見てきて、譲歩構文を使いこなすことができている人をほとんど見たことがないからです。うまく使うことができている生徒さんは、20%以下だと思います。厳密には、もっと低いでしょう。どんな減点例があるのか早速見てみましょう。

 

33-2 Aさんの譲歩構文
------ここから-----
死刑制度は廃止されるべきか考えてみたい。
 確かに死刑判決を受ける犯罪者は他人の人権を踏みにじったのだから、犯罪者の人権も無視されて当然と考えることはできるだろう。また、被害者遺族の感情を考慮すると犯罪者を生かしておくことに怒りを覚える場合が多々あるだろう。しかし私達は、法を感情ではなく、理性によって扱わねばならない。私は二つの点から死刑制度は廃止されるべきであると考える。
 一つ目は、人間が人間を裁く場合、死刑という手段を用いるべきではない、という点だ。他人の人権を踏みにじった犯罪者といえども、法によって犯罪者の人権は守られている。犯罪者である以上自由の拘束は認められても、一人の人権を有する人間の、人権の根本である、生きる権利まで奪う権利を国家は持つべきではないだろう。また、刑に服役させると言うことは、罰を与えると同時に、犯罪者の更正という目的も含まれている。社会復帰は望めなくとも、死刑に処さずに刑務所内で更正させる機会は十分に与えるべきだ。
 次に、二つ目の点として、冤罪の可能性という点について論じる。近日、足利事件の犯人とされ、長年刑務所に入っていた人が無罪と証明されたようだ。このことからも法が完璧でないことが分かる。さらに昨年から裁判員制度が始まった。この制度の目的の一つは、裁判に市民の視点を取り入れることだ。
 もちろん、この制度に利点はあるだろう。しかし、市民は法の専門家ではない以上、裁判を客観的に見ることが出来ずに情が入り込み、大小はあるにせよ、主観が入ってしまうことは止められない。この為、少なからず裁判員制度によって冤罪の可能性は高まってしまうだろう。このように、法が完璧ではなく、冤罪の人を死刑にするという取り返しのつかない可能性を含む死刑制度は廃止すべきだろう。正義を担う法が、罪の無い人を殺してしまうことほど不正義なことはないだろう。
 もちろん、大罪を犯した犯罪者を社会復帰させるわけにはいかない。死刑制度の変わりに、終身刑の導入を考えるべきだろう。終身刑の導入によって極刑を宣告された犯罪者にも生涯をかけての更正を促せるし、冤罪の場合にも死刑を執行してしまうより過ちは少なくてすむ。
 したがって、死刑制度は廃止されるべきだと私は考える。
-----ここまで-----

 この答案はとてもよく書けています。1点だけみんなの勉強のために改善ポイントをここで指摘します。この答案の場合、譲歩構文が本論(論証する段落)ではなく、 最初の段落に使われています。自説を支える論拠が最初の結論のところに出ており、言いっぱなしになってしまっています。赤文字の部分は個人的自論ですので、 説得力が下がってしまいます。
 法的な判断は理性でなされなければならないという考え方は一般論としてはOKだと考えられることが多いでしょう。しかし、陪審員制度など、 法的な枠組みを社会にどのように根付かせるべきかという法議論の場では、不適当だと考えられることもあります。
 陪審員制度の意義は、市民の感覚を重視し、感覚的(感情的)判断、価値観を審議に反映させることができる部分にあると言われています。

 

33-3 Bさんの譲歩構文
------ここから-----

 現在の日本は、絞殺刑による死刑制度を採用している。「重大な殺人による被害者の死には、死をもって償うべき」という考えがあるからだ。しかし、私はこの制度に反対で、死刑制度は無いほうがいい、と考える。
 そもそも死刑とは、国家権力による殺人である。その存在意義は、被害者や遺族の恨みを晴らすためや、殺人に対する応報のためだ。確かに死刑は、社会の一般人に対しても、「人を殺すと死刑になるかもしれない。」という一種の予測可能性を担保し、犯罪を予防することができる。しかし、それらは国家権力による殺人を正当化する理由に過ぎないのではないだろうか。実際の死刑執行の現場では、死刑囚の顔に布を被せ、ロープを首に通す。次に、複数の警察官がそれぞれのボタンを同時に押す。そのうちのどれか一つが死刑囚を落下させるボタンで、そのボタンによって絞殺刑が執行される。警察官にとっては、自分が押したボタンが直接的に殺人に関与したかはわからないが、「もしかしたら自分の押したボタンが原因で人を殺してしまったかもしれない。」と良心の呵責が生まれ、警察官に大きな精神的負担が生じるおそれがある。また、遺族にとっても、死刑によって報われるとは一概には言い切れない。死刑になってしまえば、殺人犯の身体的な苦しみは一瞬で終わる。遺族によっては、「一生かけて罪を償ってほしい。」、「社会的制裁を死ぬまで受けてほしい。」と考える人たちもいる。

 以上より、死刑制度はないほうがいい、と私は考える。死刑制度によって、重大な殺人を犯したものには、死をもって償わせることで、被害者も遺族も報われ、社会の犯罪の予防にも繋がるんだといって、国家権力による殺人を正当化するべきではない。殺人犯には、一生をかけて罪を償わせることで、被害者や遺族も真に報われると思う。殺人犯に対しても十分に反省する機会を与えることで、自分がやったことに対する報いを受けることができるはずだ。

-----ここまで-----

 この答案も大変よく書けています。1点だけ、譲歩構文について、改善ポイントを一緒に学びましょう。この解答例では、「確かに~」の下りで、確証がないことを言い切ってしまっています。何らかの主張を展開すれば、論証責任が発生するのですが、言いっぱなしになっており、そのままスルーして話が進んでいます。さらに、「しかし~」の下りで、疑問形で自説を述べているので、自分とは反対の意見を持っている人の論拠をたたくこともできていません。従って、有効な反論はできていません。


 

33-4 Cさんの譲歩構文使用例
------ここから-----
現在、日本では死刑制度が採用されている。しかし、この制度に対して反対の声をあげている人が、増加しているという事実がある。たとえ犯罪者であっても、その生命を奪ってはいけないと考えているからだ。では、死刑制度は人の生命を奪うものだから、絶対にあってはならない制度だと言い切れるのだろうか。
 たしかに、重大な犯罪を犯し、人の生命を奪った犯罪者だって、一人の人間であり、一人の尊い生命を侵すことは許されないという意見もわかる。しかし、死刑制度はあったほうがいい、と私は考える。
 なぜなら、死刑制度を採用することによって、社会一般人に対する一種の見せしめとなり、犯罪を未然に防ぐことができるからだ。現に法律によって、人の生命を不当に奪った者には、死刑が宣告される可能性があることを示しているし、社会人一般にも容易に想像することができる。また、自分の生命を大切に思っているならば、人を殺して自らの命が刑罰によって奪われないように歯止めがかかるだろう。死刑ではなく無期懲役にすれば、人の生命は奪われずに、犯罪者は反省することができるという意見もあるが、現行法上の無期懲役では、刑期に問題を起こさず、一定の期間を経れば刑務所を出ることができる。遺族の立場に立って考えると、「なぜ自分の大切な人を殺されたのに、犯人は平然と暮らしているのだろうか。」とやるせない気持ちになるだろう。また、これによって遺族が報復行為を行う可能性が生じるおそれが絶無とはいえない。
 したがって、社会一般人の犯罪の防止や、遺族らによる報復活動を未然に防ぐために、死刑制度はあったほうがいい、と私は考える。
-----ここまで-----


 こちらの答案も、よく書けています。1点だけ、譲歩構文の部分についてだけ、改善ポイントをみんなで一緒に学びましょう。 今回の答案でも、「確かに~」の下りで意見を述べているだけになってしまっています。反対意見を述べるのであれば、その反対意見の説得力を大きく低下させなければなりません。それができないなら、反対意見を取り上げるべきではありません。全体として印象がよくならないのであれば、反対意見を取り上げた意味が無くなり、確かに~の下りの意見の方がもっともだ・・・などと思われてしまえば、印象が悪化しただけになってしまいます。特に今回の答案では、極刑で人の命を国家が奪うことは非人道的であるという正当な意見を反対意見として取り上げています。この場合、相当説得力があることを述べなければ、この意見を覆せません。仮に譲歩構文で無理やり書くのであれば、命が尊いからこそ、極刑が必要という下りを端的に読者に分からせる必要があるでしょう。しかし、今回の答案ではそうなっていません。従って、譲歩構文を使うことでむしろ印象が悪化しています。無くてもいいものであれば、貴重な文字数を使うべきではありません。文字数はあなたの力をアピールするために与えられた有限かつ貴重なものだと考えましょう。

 

33-5 牛山の解答例と簡単な授業
こちらのページで、「小論文で社会問題を考える」というシリーズで、このテーマを扱っています。

 


「死刑制度の存置問題の是非」
http://www.skilladviser.com/base/brogteki/sr.html
2010年ぐらいに書いた記事ですね・・・懐かしいです。



33-6 当てはめテクニックで考えない
 小論文の書き方と言えば、構文にはめることだと考えている人もいます。このような考え方は高い点数を狙いにくいのでやめましょう。大事なことは、構文ではありません。大事なことは、妥当性です。妥当性は、論理的かどうかで決まってきます。共感できるかどうか、論理的かどうかです。共感は感性が大切になります。従っていつもお話しているように、「基本力」の論理と感性が大切になります。
 構文にはめることだけを教わった人はあらゆる文章を構文にはめていきます。それしか教わっていないし、それで点数が上がると教わってしまったのですから、そうなります。しかし、今回一緒に勉強したような失敗をほとんどの人がやってしまいます。能力が高い学生でも、このように構文にはめることを教わってしまうと、能力を発揮しにくくなってしまいます。本質的に頭の働かせ方が不適切だからです。
 どうやって「確かに~しかし」の形に文章をはめようかな・・・と考えるとそれ以外に目がいかなくなってしまいます。
 そうではなく、論文全体のアウトライン、型、論理的な妥当性、論理の骨組み、感情への配慮、強いメッセージの打ち出し方、問題の分析などが大事です。

33-7 譲歩構文そのものが間違いではない
 勘違いしないでいただきたいのですが、譲歩構文を使えば不合格になるわけではありません。譲歩構文を使えば、点数が下がるわけではありません。大部分の生徒さんの場合、使いこなすことができないというだけです。適切に使えば、悪いものではありません。しかし、一方で、適切に使ったからといって、評価がうなぎのぼりになるわけでもありません。

 譲歩構文を使うことが目的化しないように、適切な使用を心がけましょう。

 33-8 小論文を参考書のルート学習で処理しようとしている人へ
 小論文を参考書のルート学習だけで処理しようとしている人は、注意が必要です。譲歩構文とネタ、おさらい論文を指導する本を推奨されている場合、一般的にここでご紹介した答案例よりも、ずっと深刻な問題を抱えるようになってしまいます。ルート学習が推奨される背景には、なんら理論が無い場合が少なくありません。理由は無いけど、この参考書がオススメ・・・などということが少なくないということです。あなたが気にしなければならないのは、どの参考書を読むかではなく、なぜ妥当なのか、なぜ妥当ではないのかという理由の方です。今回の授業では、事例を通して妥当性について解説をしました。
早目に軌道修正しましょう。

 

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