慶應大学文学部 小論文1997年 過去問題の解説

慶應大学絶対合格情報
ここでしか手に入らない慶應合格・不合格情報、暗記法、思考法小論文対策を無料提供!
~メールマガジンについて~
メールマガジンでは、慶應大学に特化した情報をお届けします。小論文の点数を上げる秘訣や、記憶量を増やすコツなどの情報です。メールマガジンではサービス・役務のご案内もあります。その為に無料提供となっています。プライバシーポリシーはこちら・メルマガ解除はこちら

このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。 慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。

1997年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

こんにちは。 牛山です。

 

本日は、1997年度慶應大学文学部小論文問題解説です。

 

【1】問題概要

 

(1) 設問の要求

 

全体的なリアリティーとは何か、局所的なリアリティーと対比させて説明しなさい。

 

(2) 課題文概要

 

 自然科学が教えるところによれば、 世界を「時間」と「空間」によって 了解することは、哺乳類である人間の 脳が外界から取り入れる情報を処理す るモデルの構造によっているという。
 私たちは通常、地図をのぞきこむよ うに世界を見るのではなく、身の丈の 高さから世界を経験している。
 一方で地図に表現されているのは、 全体としての空間である。
 個々の身体を基準として、その近傍 に開ける空間を「局所的空間」と呼 び、それに対して全体としての空間を 「全体的空間」と呼ぶことにしよう。
 地図を持った際には、自分のいる 場所が分かった時、つまり定位がうま くいった時、周囲の環境の相貌は一変 する。それまで疎遠に見えた周囲の 環境は、突然、理解可能な手がかりに 満ちた場所になる。
 定位が成功した途端に周囲の環境は 「見える」ものになり、自身が立つ 場所も同時に分かる=見える場所に なるはずである。
 このような地図を作ることは、環境 に関する知識を記号として伝達する 象徴化の形式である。そこで表現され る空間像は、他者と共有され、他者へ 伝達される「社会的」な空間像なので ある。
 重要なことは、地図という表現がそ のような想像的な視点による空間の像 を、実際に目に見える形で表現するこ とである。
 全域的空間像には、他者とのコミュ ニケーションの可能性が内在してい る。この伝達可能性によって、全域 的空間像は自己にではなく、自己を 含む複数の身体からなる集合としての 「社会」に帰属する空間像として現象 する。
 このような空間のあり方は、私達が 「社会」と呼ぶもののあり方とよく 似ている。より積極的に言えば、 私たちが「社会」というものを了解 し、経験することの一つのあり方、 一つの様式に似ている。
 企業組織や国家、国際社会のような 「社会」を、私たちは身近に接する 他者や事物を超える諸関係の大きな 広がりとして了解する。
 人間にとっての「空間」が局所的 空間と全域的空間からなるように、 私達にとっての社会も「局所」と 「全域」という二重の現れ方をする。
 局所的空間と全域的空間という空間 の二重性は、社会的世界のもつこの 二重のリアリティーとちょうど照応 している。先に述べたように、世界 という空間を「局所」と「全域」とい う二つの水準で捉え、自らの存在を 「全域」の内部の「局所」として捉え る認知は、人間の生理学的条件に基本 的にはよっている。
 この生物学的な空間把握をいわば 母型として、人は社会的な関係の圏域 や社会的世界を、「局所」と「全域」 を持つ〈空間〉として了解する。
 社会という言葉は、地図がちょうど そうするように、けっして見晴らすこ とのできない世界の全域的なあり方を 可視化しようとする表現なのである。

 

(3) 解き方

 

今回の問題をどのように解くかですがこれは、いくつかのパターンがあります。

 

何かを説明する時には、いくつかの前提を列挙して説明するという説明方法がありますが、今回の問題の場合、

 

局所的なリアリティーと対比させて
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

という、条件がありますよね。

 

この対比関係を作りつつ、全体像をうまく説明する必要があります。

 

また、原則として好き勝手に言い換えていると、ほとんどの学生は、微妙にどんどん語れば語るほど、課題文の内容からズレていきます。

 

これは、自分の言葉で説明することで、言葉のニュアンスの問題でもあるのですが、言っていることが変わるという現象です。

 

このようなズレを防ぐために、課題文のキーワードを用いて、部分的に課題文の文章を用いるように、答案を設計していくことが一つのセオリーになります。

 

別の解答パターンについては、今回チョットあそびで作ったので、編集後記をご覧ください。

 

ちょこちょこ、面白い問題は、解答例をいくつか作ってしまったりしていますよ。

 

今回の問題の場合、まずは中核的な部位を探すことを考えてみましょう。

 

課題文の中で、全体像を説明している中核的な部分がないかを考えてみます。

 

そうすると、

 

-------------ここから-------------

世界という空間を「局所」と「全域」という二つの水準で捉え、自らの存在を「全域」の内部の「局所」として捉える認知

-------------ここまで-------------

 

などの中核的な部位があることに気づくはずです。

 

これらの筆者が述べたいことを端的に表現されている部位を文章に取り込みながら、適宜言い換えでコンパクトに文章をまとめることを考えてみましょう。

 

何もないところから、言い換えだけで表現していこうとすると、はちゃめちゃになりやすいので注意しましょう。

 

中核的な部位を見つけたら、今度は、重要な、答案に入れ込むべきポイントにマークをつけていきましょう。

 

その上で、答案に入れ込むべきものについては、入れ込んでいくという形で説明文を作ります。

 

(4) 解答例

 

 世界という空間を「局所」と「全 域」という二つの水準で捉え、自らの 存在を「全域」の内部の「局所」とし て捉える認知は、人間の生物学的な空 間把握である。この生物学的な空間把 握をいわば母型として、人は社会的な 関係の圏域や社会的世界を「局所」と 「全域」を持つ空間として了解する。 局所的リアリティーとは、自分を中心 としてその周囲を見渡す空間把握であ る。一方で全体的リアリティーとは、 地図を用いた空間把握と同じように、 巨視的な空間把握である。巨視的な視 点は、自分の存在位置を把握した際に 全体像を理解させる効用がある。同時 に、巨視的な視点に基づく意思疎通 は、他者に対する伝達可能性が優れて いる。「社会」等の言語は、世界の全 域的な在り方を可視化するのである。

 

【2】問題2

 

(1) 設問の要求

 

局所的・全域的という二重のリアリティーは、また芸術や歴史の領域においても見出すことが可能である。いずれか一方の領域を選び、具体的な対象や事例に即してこの二重のリアリティーについて論じなさい。

 

(2) 考え方

 

今回の問題では、どのようなことが語られていたでしょうか。

 

巨視的な視点と、局所的な視点の両方によって、人は世界を認識している。

 

こんなことが書かれていましたね。

 

もっと言えば、巨視的な視点は、世界をよりよく理解させる効用があるということですね。

 

と・・・・いうことは、巨視的な視点と局所的な視点の両方があることによって、その世界がよりよく伝わっている事例を考えることが大切ということになります。

 

文学部はこのように世界の見方、見え方について、問うことが多いので、いろいろな視点で世の中を見ることに気をつけておきましょう。

 

芸術の分野や歴史の分野で、巨視的な視点により、描かれた作品などはないでしょうか。

 

基本的に特に芸術の分野では、巨視的な視点によって世界が描かれていることが多いです。

 

逆に言えば、局所的な視点だけでは、後世に残る作品にはなりにくいとも言えるでしょう。

 

何かしら作品を思い描いてみましょう。

 

その上で、今回の問題の要求を考える必要があります。

 

-------------ここから-------------
二重のリアリティーについて論じなさい。
-------------ここまで-------------

 

今回の課題文は、ある意味で、二重のリアリティー論ですね。

 

二重のリアリティーについて、あなたはどのような問題意識を持ちましたか?

 

何を問い、何を考えるでしょうか。

 

どうでしょうか?

 

何も思い浮かばないでしょうか。

 

その場合、こちらのウェブブックを読んでおきましょう。

 

小論文の対策 無料ウェブブック
小論文にセンスが不要と考える危険性」と「センスを磨く7つの対策

 

考えることは、テクニック化することはできます。

 

しかし、それでは、どうにもならないことをあなたはご存知でしたか?

 

その理由はここに書いています。

 

方法を教えてもらっても9割の人がうまくいかない?「方法とアプローチの違い

 

 

本当は、何も思い浮かばないのではありません。

 

私は受験生と、約1時間程度ミッチリ話をすることがあります。

 

慶應クラスという塾の個別指導の時間です。

 

時間をかけるからこそ見えてくることがあります。

 

受験生は、うまくいかない時、端的に言えば堅くなっています。

 

よい内容をアウトプットしようとしているのです。

 

そう考えること自体が悪いわけではありません。

 

しかし、それでは、人は考えられません。

 

頭の働かせ方を教えられていないからです。

 

センスと感性を働かせなければ、世界が見えてこないのですが、そこを奪われてしまうと、完全に盲目になっていきます。

 

自分の頭で考える力を開発する必要があります。

 

自分の頭で考えない方法とは、

 

1)方法に頼る
2)手順に頼る
3)物事を見ようとしない
4)何が起こっているのか感じようとしない
5)働く力を感じることができない

 

こういうことです。

 

時間や空間や力や流れを見ることも感じることもできない世界が、

 

ハウツー化された世界なのです。

 

そこで物事に対処しようとしても、うまくいくことはあるでしょう。

 

それはラッキーです。

 

本質的に力の半分程度しか発揮できないということになってしまいます。

 

弱い力と強い力のどちらで受験する方がいいかというシンプルな話です。

 

それでは、二重のリアリティーについて、何が言えるのかをイメージしてみましょう。

 

芸術の分野の作品について、二重のリアリティーがどのようなものであると言えるでしょうか。

 

局所的な視点と、巨視的な視点の両方から何が言えるかを考えてみましょう。

 

その上で、小論文の答案構成を考えます。

 

考えてみたでしょうか。

 

いつものように、10秒でも、3分でもいいので考えてみましょう。

 

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

(3) 解答例

 

 二重のリアリティーは、芸術の分野 でどのような意味を持つのだろうか。
 作曲家の命とも言える聴覚を失った 際にベートーヴェンは「運命」を作曲 した。自分を中心とした世界である局 所的な視点から言えることは、耳が聞 こえないということである。一人の作 曲家として命を絶たれた運命は、局所 的な視点から見れば単なる悲劇に過ぎ ない。しかし、ベートーヴェンはこの 悲劇を運命という巨視的な視点から見 ることで、大きな心象を与える楽曲に 昇華させた。第一に、全体的リアリテ ィーの特徴である「全体像の理解」で ある。人は「運命」を聞き、人生の全 体像を、楽曲を触媒として理解する。 第二の巨視的な視点の特徴は他者への 伝達可能性である。「運命」という巨 視的な視点を通して、作曲家が伝えた かった世界の全体像を観客に伝える力 が彼の作品にはあった。
 以上、芸術における二重のリアリテ ィーは、世界を貫く原理を人に伝える 力があると私は考える。

 

【3】編集後記 ~読んでイメージを膨らませよう~

 

(1) 別解

 

いつものように、チョット遊びで、解答例を別に作ってみました。参考にしてみてください。

 

【問題1】
 全体的なリアリティーとは、地図を 見る時のような創造的な視点をとっ て、そこから可視化される全域的な像 として社会を概念化することで感じる リアリティーのことである。一方で、 局所的リアリティーとは、個々の体を 基準として、その近傍に開ける空間を 通して、外界を認識する際のリアリテ ィーである。このように世界という空 間を局所と全域という二つの水準で捉 え、自らの存在を全域の内部の局所と して人は捉えている。社会等の言葉で 表現される全体的なリアリティーは、 個々の人間の個別的・局所的な経験を 超えた超越的で想像的な位相、他者と 共有され、伝達されることの可能な位 相を内包している。

 

【問題2】
 芸術の領域で、二重のリアリティー について述べる。芸術の領域には、自 分自身が絵画の中に参与することで空 間を認識する局所的な視点と、全体を 見通す全体的な視点の両方が描かれる ことがある。ピカソの作品の中に、盲 人の朝食という作品がある。この作品 の中では、薄暗い部屋の中で食事をす る盲人が描かれている。目が見えない 中で生活を送り続けるという日常のリ アリティー(局所的)と、その全体を 描写することで捉える全体的なリアリ ティーが描かれている。また葛飾北斎 の絵の中には、水を扱ったものが多く あり、滝の水が流れ落ちるダイナミッ クな自然の風景(全体的)と、その滝 を眺めて昼食をする人々の視点が、滝 の下を流れる谷底の川を描写すること で描かれている。(局所的)北斎の絵 画の中では、非全体的描写があり、実 際以上に人が小さく描かれている。滝 を感じる人の衝撃的な心象、北斎の大 自然に対する畏敬の念が局所的視点に より表現されている。
 以上の考察から芸術における二重の リアリティーとは、身体的な作品に対 する参与と、俯瞰の両方を用いること で生まれる新しい視点であると私は考 える。

 

(2) いかにして力をつけるか?

 

いかにして力をつけるかについては、いろいろな人がいろいろなことを言うでしょう。

 

いろいろな表現が可能であるため、人は混乱します。

 

また、本当のことを教えてくれる人は少ないです。

 

なぜでしょうか。

 

本当のことを言わない方が、都合がいい人が多いからです。

 

これは、単純に考えれば分かりますが特定の誰かの利益は、他の人の不利益です。

 

国家を単位として見た場合に、国際的にも言えることです。

 

したがって、世の中に出回る情報や文化は、特定の人物や団体、国家にとって都合の良いものになります。

 

税金の制度にせよ、法制度にせよそれは同じです。

 

富裕層を優遇する税制や、法制度がどれだけあるかについては、枚挙にいとまがありません。

 

それでも、特定の誰かのとって都合の良い情報や取り決めがあるはずがないなどという言説は完全にどうかしています。

 

お花畑の考えと言っても過言ではありません。

 

逆に言えば、だからこそ、本当の情報は出回りにくいのです。

 

そこを見極めなければ、自分の成長も鈍ります。

 

本当のことを教えてくれる人が少ない理由にはほかのものもあります。

 

単によく分かっていないだけというケースも珍しくありません。

 

例えば、小論文の書き方や、論理そのもの、感性、思考の限界とその破り方、発想方法、アプローチ、複数の発想の違い、問題発見、問題解決、速読するということ、、、

 

これらについては、不完全な理解がたくさんあり、そのため、おかしな指導がまかり通っていることも珍しくありません。

 

迷うことがあれば、次のウェブブックを読んでみましょう。

 

慶應大学絶対合格って本当なの?

 

 

無料メルマガでも、慶應大学の小論文を詳しく解説しています

 



~なぜメルマガに登録するのがお勧めなのか?~
1.慶應受験と学習のスキルアップに詳しい人に教えてもらうので、成長しやすい。
2.点数が短期間で大きく引きあがった指導をうけることができるので、あなたも点数が上がる事が予想される。
3.慶應受験について多面的に詳しくなるので、合格しやすくなる。
4.お金が一円もかからない。(無料で教えてもらえる。)

 

《合格実績》大学受験だけではなく、大学院受験の合格実績も豊富です。

慶應大学合格/慶應大学大学院合格/北海道大学大学院合格
東京工業大学大学院合格/上智大学合格/早稲田大学合格/京都大学合格など


~メールマガジンについて~
メールマガジンでは、慶應大学に特化した情報をお届けします。小論文の点数を上げる秘訣や、記憶量を増やすコツなどの情報ですが、メルマガにはサービス・役務のご案内もあります。その為無料で提供しています。

プライバシーポリシーメルマガ解除

 

慶應大学絶対合格情報
ここでしか手に入らない慶應合格・不合格情報、暗記法、思考法小論文対策を無料提供!

メディア掲載: プレジデントFamilyClub様

 

『慶應大学に我が子を確実に合格させる教育法』

第1回 ⇒「従来の教育法では慶應に益々合格しにくくなる」

第2回 ⇒「慶應大学合格に必要な要素と中核」

第3回 ⇒「慶應大学合格に有効な受験対策(前編)」

第4回 ⇒「慶應大学合格に有効な受験対策(後編)」~「受け身の学習」から「攻めの学習」に変化させる~

第5回 ⇒「慶應小論文対策で失敗しないための根本的対策」

第6回 ⇒「信頼関係と素直な心で慶應受験に強くなる」

 

 

慶應クラスの資料請求・お問い合わせ

 



PAGE TOP
© 2007 - DIJI SYSTEM