方法を教えてもらっても9割の人がうまくいかない?「方法とアプローチの違い」

     




牛山 恭範 (著)


T 方法は全体のごく一部に過ぎない


 私たちが何かに困ったとき、勉強、受験、小論文対策などについて、とにかくなんらかの「うまくいかせる方法」がないかと考えられがちである。

 しかし、このように考えてみてもあまりうまくいかないことが珍しくない。

 その理由は方法は「全体のごく一部」に過ぎないからだ。全体のごく一部とは、「方法」だけで、すべてが成り立っていないとも表現できる。

 物事の結果は、意識、スキル、条件(環境)、運、流れなどによって決まっている。

 方法というのは、何らかの目的を達成する際の、アプローチの内、人の意識や思考をすべてとりのぞき、説明可能なステップだけを残したもののことを言う。この説明だけでは、何のことかさっぱり分からない人も多いだろう。

 そこで、このウェブブックでは、具体的な事例を交えながら、ここを詳しく解説したい。

 「話をすること」について、達人級の人物が、「どうすれば人とうまく話すことができますか?」と質問された時に、「アドリブでいけ」などとアドバイスすることがある。

 このようにアドバイスされた人は、不満に感じることがある。

 (「方法」をなぜこの人は教えてくれないのか?)と感じるのである。

 一方で、話すことについて達人級の人物は、「方法」ではどうにもならないことを感じ取っている。

 基本的に人と話をすることは、「単発の方法」でもなければ、「10パターン程度の方法」でもない。

 しかしながら、人とうまく話す方法は存在するのか、存在しないのかと言えば、明らかに存在する。

 それでは、なぜ「人とうまく話す方法」は存在するのに、その方法を使っても人とうまく話すことが必ずしもできないのか。

 このような混乱は、人が物事を言葉を使って考えることから生まれる。言葉は便利なものだが、思考が言葉にひきずられると、実態を見誤る。「方法がある」と言葉で表現すれば、その方法を用いることで問題が解決するように感じられる人も多いようだ。ところが現実には、いくら「東大に受かる方法」や「成功する方法」を教えてもらったところで、人はうまく物事を運べないことが多い。

 その理由の一つが、方法は、全体のごく一部に過ぎないからなのだが、詳しく以下に事例を含めて解説していこう。













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