
分かるから『書ける』に変わるにはどうすればいいのかを詳しく書きました。
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18-1 軽視される論証能力(日本の論文指導がおかしな部分)
18-2 指導らしい指導が存在しない
しかし、小論文指導の世界では、型ばかりが指導され、肝心かなめの基本的な論理思考についての指導が成されません。したがって論理思考について理解を深めようとする学生はおらず、どの本を読めば合格できるのかと、的外れな質問をする学生が増えています。小論文試験でマスを埋めることができないのは、知識がないからではありません。考えることができていないからです。
そこで、この論理思考の部分を分かりやすく解説するために、拙著「小論文の教科書」(エール出版社)を執筆しました。まだ読んでいないという声も聞こえてきそうですが、ぜひ読んでおきましょう。
18-3 論拠と根拠で主張を支える
小論文試験の答案について重要なことは、論拠と根拠(データなど)で、自分の仮説を支えることです。
論拠は一般原則であるのが理想です。例えば、クラスメートに田中君という男の子がいて、彼がもてるということを主張したとします。
例)田中君はもてると私は考える。なぜならば、田中君はパンクでロックな男だからだ。
こんな文章があったとします。この文章は妥当でしょうか。あまり妥当とは言えませんね。土屋アンナさんのような人がクラスにいれば、パンクでロックな人がもてるのかもしれませんし、パンクでロックな人がかっこいいかもしれません。しかし、あくまでも一般論として、パンクな度合いが高いほどかっこいいとはなかなか言えません。それは好みの問題であり、原則とは言いにくいですね。
18-4 理由は一般原則であることが理想
一方で次のようなものはどうでしょうか。
例)田中君はもてると私は考える。なぜならば、田中君はかっこいいからだ。
どうでしょう。ちょっと説得力がありますね。なぜかと言えば、かっこいいということは一般的にもてるということだからです。このように、論拠は一般原則であるのが理想です。このような論理的な思考のことを、演繹的な推論と言いますよ。
18-5 複数の論拠、複数のデータで自説を支える
理由を考えた時に頭に思い浮かんだ概念を一般原則に近づけていくことを考えてみましょう。その上で、いくつかの理由を考えることが大切です。
基本的に、自分の主張が一つの理由だけで支えられている構図は大変脆弱な論理と言えます。いくつかの理由、事実によって、自説を支えましょう。
※ここでお話ししていることは、原則です。学部や問題によって例外はあります。
18-6 理由の妥当性、データの妥当性に注意しながらそれぞれを評価する
自説を支える理由やデータは、問いの論点とどれだけ論理的に関係があるかが重要になります。自分の主張である仮説と論理的にあまり関係がない理由を書いている受験生が大変多いです。いくつかある理由を評価することが大切です。そして、データから理由、理由から主張についての論理の飛躍があるかどうかに注意しましょう。
理由はもれなく重複なく組まれているでしょうか。このあたりについても、知らなかったという人は、もう一度「小論文の教科書」を読んでみましょう。小論文の添削指導で見てもらわなければならないのは、このような点です。アルバイトの添削だと、肝心要の論理性のチェックができないことがほとんどです。もともと、大学教育は、その論理性を強化することが一つの大きな目的になっています。そのため、論理について指導ができることが教授会で認められた教員がその指導にあたるという構図があります。
「小論文の勉強を早めに開始しておきましょう」といつも私が言っているのは、このような論理的思考力についてのスキルを養成するためです。この論理性については、論文の評価に大きくかかわるところであり、同時に実力養成に時間がかかるところです。ふてくされず、コツコツがんばることが大切ですよ。
18-7 論証能力の前にあるのは、実態を推し量る力
ここまでお話をしますと、なぁんだ小論文の勉強は細かいことばかりで楽しくないなぁと感じてしまうかもしれません。しかし、小論文試験の勉強は実社会であなたがどれだけ活躍できるかを決定づけるようなものです。
こんな風に言えば、少しは興味が湧いてくるかもしれません。一般的に頭がいいというのは、実態を推し量ることができることを指します。これはテスト以前の問題です。テストができる人は頭がいいと思われますよね。その理由はテストができるということは、実態を推し量る力もあるとみなされるからです。もしもテストができても、実態を推し量ることができないなら、それは頭が悪いと世間では評価されてしまうでしょう。
小論文試験は、他の科目のテストとは違い、この「実態を推し量る力」をダイレクトにチェックされます。要は、小論文試験ができるということは、頭がいいという評価につながりやすいということです。こんな風に考えると興味が湧いてくる人もいるかもしれませんね。
論証能力という言葉をここでは分かりやすく話すために使っていますが、ごまかしの詭弁力のようなものを小論文試験では試されているわけではありません。「伝える力」を見られています。物事を整理して、論理的に伝える力がある人は、有能であり、そうではない人は、低く評価されてしまうということです。
論理力については、小手先のテクニックだと思ってはいけません。型にはめてみたり、構文を使ってみたり・・・というのは論理力ではありません。また、単に読解するだけの力を論理力と考えてもいけません。論理力とは、分析力のことであり、人に物事を伝えて影響を与える力のことです。
【論理力とは】
小論文が慶應大学の経済学部で復活した理由についてもここではお話ししましたが、このように考えればなぜ慶應大学が日本でもっとも小論文試験を重視する大学なのかが分かると思います。
18-8 自分が書いた論文の答案構成を毎回チェック
私が主催する慶應大学進学専門塾「慶應クラス」では、小論文を書いた後、毎回必ず自分の答案について分析をしてもらっています。自分が書いた答案の論理構成をもう一度自分んでチェックし、どこが甘かったのか、より良い理由とはどのようなものか、データは適切だったかなどを振り返ってもらいます。
一般的に小論文は、「練習」などと称して無目的な練習が推奨されがちです。また、添削を受けさえすればいいと考えられるところがあり、何をどのようにチェックされても問題なしなどと考えられてしまうことがあります。これらはどちらも不適切な考えです。
無目的な練習は何も生みません。一度練習すれば、他の人の何倍も成長しなければ時間の無駄遣いです。また、添削を受けても、重要な部分について、評価できる実力がない人が指導にあたった場合、間違ったことを指導される危険性があります。また、せっかく練習したのに、重要な成長機会を逃してしまうことにつながるでしょう。大変な損失と言わざるをえません。
小論文の練習をする時には、今日お話しした点に注意して、必ず自分の論理構成について、振り返りましょう。どのように理由を書けばよかったのか、なぜよい理由を書くことができなかったのか、いかに頭を働かせれば、この問題は解決するのかなどを考察することが大切ですよ。
18-9 私の本を読んだだけで問題が解決しない時
私の塾の生徒さんと話をしていると、今日お話しした点について、問題を抱えている人がいます。しかし、話をしてみると、例外なく、理解度と記憶の度合いが欠落しているケースです。これはやや厳しい言い方です。
彼らの能力が低いわけではありません。まだ小論文を勉強しはじめなだけです。他の科目の勉強もあり、小論文の勉強ばかりをできるわけではありません。だから仕方がありません。
私が書いた本を読んでいても、今日ここでお話しした内容について十分に理解できていない場合、問題は解決しません。また、重要な部分について、記憶できていない場合問題が解決しません。
例えば、理由を書くことができない場合、何を考えればよかったのでしょうか。これは「小論文の教科書」に書いています。また間接的な説明は「小論文技術習得講義」にも書いています。
このように、小論文を書くという現実の問題を解決することができない場合、小論文の答案を通じての質問や、メール、電話などの質問で問題を解決していきます。
私が小論文の指導などについて、情報単位で考えてはいけませんよといつもお話しする理由はここにあります。情報提供だけで人は成長できません。だからこそコーチや指導が必要になってきます。オリンピックの金メダリストに柔道の方法を教えてもらえば、すぐにその人がオリンピックで金メダルを取ることができるわけではありません。何を自分が理解できていないのか、何を記憶できていないのか、どのような身体動作が備わっていないのかなどを理解して、記憶していくプロセスが必ず必要になります。自分ではわからない、気づかない、勘違いをするからこそ、コーチが必要です。ここで選ぶコーチを間違えると、不適切な内容を指導され、不適切に理解し、不適切に記憶し、不適切なアウトプットをするようになってしまいます。
「本に書かれている内容と、塾の指導内容は同じなのでしょうか」などと質問することにほとんど意味がない理由は、情報を受けても問題をすべて解決できないことが多いからです。(もちろん、情報を得なければ、もっと問題は解決しません。これは程度の問題です。)ちなみに上記のご質問の答えは、「はい」と「いいえ」ということになると思います。私がここで今日お話しした論理性についてのお話は、大変重要な原則です。ですから塾で話すこともあるでしょう。その意味では、「はい」です。しかし、ここでお話ししたことは、一般論に近いことです。現実にはいくつもの誤解のパターンや勘違いのパターンが存在します。それらの個別の問題を解決するための細かい授業も塾ではたくさん用意しています。また、今日のお話の背景や、ここでたくさん話すと「話が長すぎる」と感じて嫌がる人には伝えられない詳しい解説も塾ではやらなければなりません。このような意味では、「本に書かれている内容と、塾の指導は同じなのでしょうか」というご質問に対する答えは当然「いいえ」になります。
塾の中では、人間と人間の付き合いという色合いが濃くなると思います。公的な発言に近い部分では言えない勘所もたくさん話すことができるでしょう。これは情報発信の都合の問題でもあります。書籍は残るものなので、本音で言えないことはどんな書き手でも存在します。本には書けない内容もあれば、テキスト情報では伝えられない情報もたくさんあります。
物事を情報(いい方法ないの?という考え)だけで構成されていると考える人は問題を解決できません。理解の重要性や、記憶の重要性、スキルアップの重要性を軽視しているからです。
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