認知症の症状の程度や加齢に伴う認知機能の低下に個人差が見られる理由を本文の内容をふまえて200字で説明しなさい。
~全国模試小論文1位の報告を3年連続でもらっている牛山の過去問題解説ページです。~
このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
2020年度慶應大学看護医療学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
それでは、さっそく2020年の慶應大学看護学部の小論文について、問題を見ていきましょう。以下のような問題が出題されました。
問題1
解説
課題文を見てみますと、認知機能の低下に個人差が見られる理由として、以下のような関係性が記述されています。
認知の予備力というものがあり、予備力が大きい人は、認知機能が低下しない。
脳の可塑性というものがあり、脳の機能の一部が低下しても、代償が行われ、機能低下が見られない人がいる。
この内容をもっともっとシンプルに論理式で記述するとこうなります。 牛山式の論理式解法です。
認知の予備力→個人差が生まれる
脳の可塑性→個人差が生まれる
めちゃくちゃ簡単になりましたね。
これを膨らませて書けば、解答が出来上がります。
解答例を紹介します。
【解答例】
認知症の程度や加齢に伴う認知機能の低下に個人差が見られる理由は大きく二つ考えられる。第一の理由は「認知の予備力」の影響である。情報処理に必要な能力の蓄え、低下した機能の代償等の能力が高い場合に、認知機能は低下にしにくいという考え方がある。第二の理由は、「脳の可塑性」である。脳の一部の機能が低下した場合であっても、若年者では活性化が見られない脳部位が活性化する高齢者が存在する。
難しい問題かもしれませんが、解き方次第でめちゃ簡単になります。
それでは、次の問題を見てみましょう。
問題2
「脳トレの点数が上がることは、日常生活の物忘れが一つ無くなることを意味しない」のはなぜか。効果の移転の概念を用いて500文字以内で論じなさい。
解説
今回の問題も因果を問う問題ですね。
因果を問う問題は、論理式解法でかなり解きやすくなります。
課題文の内容を確認しますと、「効果の移転」という概念が説明されています。効果の移転というのは、要は脳トレの効果が様々な能力に移転するかどうかということです。
課題文の中では、効果の移転は起こらないのではないかという仮説を支持する研究報告が多数紹介されています。
要はこういうことです。
効果の移転(無関係なものは移転しない)→物忘れが無くなるわけではない。
→の部分を(ならば)と考えてみてください。
従って、この内容を膨らませて、説明すると、今回の問題はすぐに解くことができます。
ただ、ここで論理を補ってやることがここでは求められていると考えてもいいでしょう。
つまり、なぜ現実には、ほとんど効果の移転現象は見られないのかということです。
そこで、以下のようなロジックを考えることができるかもしれません。
効果の移転が見られないのは、日常生活との関連が強い脳トレが存在しないからだ。
もしそうなのであれば、
日常生活との関連が強い脳トレが存在しない→(ならば)効果の移転という理論が機能しない
という論理式が成立しますね。
この論理式に結論を加えたらどうなりますか?
日常生活との関連が強い脳トレが存在しない→効果の移転という理論が機能しない→日常生活で物忘れが無くなるわけではない
はい。 解答のロジックが完成しました。
解答例を作っていく際に、課題文の中で、上記の仮説を導く際の重要な根拠がいくつか示されていますので、自説を支える根拠として抜き出しましょう。
今回の問題は、オーソドックスな論じる問題ですから、変な構文に文章をはめて書くようなことは絶対にしないこと。
構文あてはめ型の解き方だと点数がなくなってしまいますよ。
それでは、解答例をご紹介します。
【解答例】
脳トレの点数が上がってもなぜ日常生活で物忘れが無くなるわけではないのか。
私は脳トレで要求される能力と、日常生活で要求される能力の間に連関が少ないことが原因であると考える。
効果の移転と呼ばれる概念がある。「効果の移転」とは、特定の脳トレなどの訓練が、日常生活の様々な能力に移転することを指す。この「効果の移転」については、懐疑的な研究報告が多数存在する。数字を記憶する能力を高めても、文章になると対応できないケースや、読む能力を鍛えても英語を話すことができるようにはならないケースなど、様々なケースが存在する。特定の課題を訓練したとしても、他の認知課題や日常生活機能の改善に結びつくには限界があると考えられる。
もし仮に日常生活でよく起こる「顔と名前の不一致」「顔と役職の不一致」などの記憶障害に関する脳トレがあった場合は、この脳トレで得られるトレーニング効果は、そのまま日常生活の問題を解決することにつながる。しかし、このような脳トレは一般的ではない。
日常生活で発生する問題と関連が強い脳トレが一般的に行われていない。そのため、脳トレの点数が上がっても、日常生活で物忘れが無くなるわけではないと考えられる。
論理関係をきちんと答案に反映させましょう。
そこが、点数を取る大きなコツの一つになります。