このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
2018年度慶應大学看護医療学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2018年度 慶應大学看護医療学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
問題1
下線部の生態系とは何か、200文字位内で説明せよ。
この問題は、カンタンそうに見えて、少しやりにくい問題です。
よくある失敗は、ざっくりと本文を読み、なんとなく、こんなことが書かれていたかな・・・と記憶を頼りに適当に書いてしまうというものです。
こういう風に問題を解くと、どんなにちからがある人でも、良い答案になりません。
それでは、どうすればいいかと言いますと、課題文の中にある解答要素を組み合わせるように、説明文を作っていきます。
今回は、理解しやすいと思いますので、先に解答例をご紹介します。
問題1 解答例
生態系は生物を育む場である。雑木林、水田、草原、河川など、様々な生態系が存在する。これらの生態系は、「単品」として、森林だけが存在するケースもあるが、河川や水田、雑木林や森林が「セット」になったものも存在する。生態系の「セット」は農作物の栽培にも役立っている。周辺が森や草原に囲まれたソバ畑では、花に訪れる昆虫類が多く、ソバの実りも良くなることが分かっている。
こんな解答例になっていますね。
この解答例は、どのように「生態系」を説明しているかと言いますと、以下のように説明していますよ。
1)「生態系」の定義:生態系は生物を育む場である。・・・
2)生態系の性質:これらの生態系は、・・・・
3)生態系の性質2:生態系の「セット」は・・・
4)生態系の意味:周辺が森や草原に囲まれたソバ畑で・・・
このように、いくつかの側面から、「生態系」という言葉を説明していきます。
あくまでも、自分がどう思ったかではなく、課題文に何が書かれているかという視点で見ていくことが大切です。
少し難しく感じる人も、中に入るかもしれませんが、要は、「解答要素」となるパーツをきちんと拾い集め、特定の「概念」(ここでは生態系ですね。)を説明することが大切です。
それでは、設問2を見ていきましょう。
問題2
場の多様性が持つ恩恵をうまく引き出すために、どのような人間の考え方が必要なのか、600字以内で説明しなさい。
今回は、ダブルで説明問題が出ましたね。
基本となる考え方は同じです。
今回も、前回同様、先に解答例を見てしまいましょう。
問題2 解答例
筆者が述べる「場の多様性」の良い例とは以下のようなものである。(1)ソバの実りを良くする昆虫は、もともとソバ畑にいるのではなく、周辺の生態系に存在する。
(2)場の多様性は害虫の被害を減らす役割がある。害虫の天敵である寄生蜂が草地や森林の近くに多い。(3)様々な樹木が混在する土地は、木々の根の深さが違うため、土砂崩れに強い。(4)山火事が起こることで、部分的に若い木々が生まれ、大規模火災を防いできた。上記内容に共通する点は、人工的ではないという点である。
一方で筆者は「場の多様性」について悪い事例として人工的な多様性を挙げている。雑木林を開拓して、住宅、工場、空き地、公園などを作った場合、自然の恵みをもたらしてくれるとは考えにくい。
「良い理想的な多様性」と、「理想的とは言えない多様性」の違いは、歴史性があるかどうかであると言える。自然界には、気が遠くなるような歳月を経て完成した非人工的な多様性が存在する。これらの多様性は、上記の「良い多様性」のように、様々な恩恵をもたらすものである。従って、場の多様性が持つ恩恵をうまく引き出すためには、単に人工的に多様性を作り出そうとするのではなく、長い年月をかけて形成された自然の場の多様性をうまく活用し、「歴史性」を破壊しないように気を付ける必要があると考えられる。
なかなかややこしい感じですね。
パーツごとに分けて見ていくと分かりやすいですよ。
上記の文章は、600文字ありますから、少し長く感じるかもしれませんが、以下のような文章のパーツで成り立っています。
- 1)良い例
- 2)悪い例
- 3)良い例と悪い例の違い
今回問われていた内容は・・
《場の多様性が持つ恩恵をうまく引き出すために、どのような人間の考え方が必要なのか》
ということでしたね。
この問いをシンプルにしましょう。
極限までシンプルにすると、
「どうすればいいのか」
ということですね。
どうすればいいのか?
ということが、本文に書かれていたわけです。
どこに??
つまり、良い例と悪い例の違いを考察することによって、どうすればいいのかを課題文を通じて筆者は考察しているわけですね。
ということは、
考察の前提→結論
という流れで文章を組めばよいということです。
イメージ的には、
前提1→前提2→結論
このようなイメージです。
前提1と前提2が理由になっており、結論が導かれているので、このような考察は、大変論理的と言えます。
何かを説明することを求められた場合、論理的に説明することが非常に大切です。
それでは、課題文の中の「解答要素」を見ていきましょう。
〈良い例〉
ソバの実りを良くする昆虫は、もともとソバ畑にいるのではなく、周辺の生態系に存在する。
場の多様性は、害虫の被害を減らす役割がある。害虫の天敵である寄生蜂が草地や森林の近くに多い。
様々な樹木が混在する土地は、木々の根の深さが違うため、土砂崩れに強い。
山火事が起こることで、部分的に若い木々が生まれ、大規模火災を防いできた。
〈悪い例〉
雑木林を開拓して、住宅、工場、空き地、公園などを作った場合、自然の恵みをもたらしてくれるとは考えにくい。
もとの生態系を壊して、人間が無計画に作り出した場の多様性は、有害でさえある。
〈結論〉
種の多様性にしろ、場の多様性にしろ、歴史性の無いものは概ね不安定であり、外圧によって崩れ去りやすいものである。
なぜならば歴史がもつ膨大な時間は、様々な試行錯誤の積み重ねを通じて、今日見られる永続性のある多様性を作り出したからである。
これらを組み合わせると、論理的な説明になります。
簡単ですね。
このように、きちんと解法を理解して、我流でやり切らないことも小論文では大切です。
小論文を見ることができる人に見てもらい、添削を受けていると、どんどん上手になっていきます。
へこたれずにがんばっていきましょう!