慶應大学文学部 小論文1996年 過去問題の解説

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1996年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

こんにちは。 牛山です。

 

本日は、1996年度慶應大学文学部小論文問題解説です。

 

【1】問題概要

 

(1) 設問の要求

 

-------------ここから-------------
問題文(A)(B)(C)を読み、以下の問1、問2のそれぞれについて答えなさい。

 

【問1】
三つの文に描かれた生き方の共通点と相違点を明らかにしなさい。

-------------ここまで-------------

それでは、それぞれの課題文のあらすじをご紹介します。

 

 

(2) 問題文(A)あらすじ・要約

 

 坂東玉三郎と著者は食事をする。その時に、話した内容は、演劇のことから文学部こと、人生のことへと及び、夜が更けるのも忘れるほどであった。

 

 この時に著者は、坂東が、人生に生きる哲学をかたくなまでに持ち続ける人物であることを知る。

 

 坂東は、この世は愚劣なものであり、自分はそのような醜い愚劣な世界で生きたくない、などと述べた。

 

 著者はこのような言葉を受けて、坂東は人間の正体を見てしまったのではないかと推察する。

 

 著者は、坂東について、以下のような考察を行う。

 

人間というものは醜い。偉そうなことを言う男も、美しく着飾っている女も一皮めくれば欲と色の塊だ。既に幼年にして、そういう人生を見てしまった彼は、芸術の世界に、この醜い世界とは違った別の美しい世界を創りだそうとしているのであろう。

 

(3) 問題文(B)あらすじ・要約

 

 著者は三重県の半島に浮かぶ流木を見て、尾形亀之助という人物を思い浮かべる。

 

 尾形亀之助とは、明治三十三年、宮城県の大金持ちの長男として生まれた男である。尾形亀之助は、山頭火のように、住所不定に憧れ、死ぬ死ぬと周りに吹聴しながらも、実際は自死することかなわず、持病の喘息を飼いならしながら、二度結婚、どちらの女ともさしてうまくいかず、奔放な生活を繰り返したあげく四十三歳の若さでこの世を去った。最後の日はろくに食事も取らず、真っ白い洗面器を便器にして、ほとんど餓死に近い衰弱死を迎えた。真冬の夕刻のたったひとりの死だった。

 

 尾形亀之助の詩集に収められた詩は、短い詩ばかりである。

 

例えば、「昼」という作品では、『昼は雨 ちんたいした部屋 天井が低い おれは ねころんでいて蝿をつかまえた』これだけの詩である。

 

 彼は昼という詩を他にもかいており、その内容は次のようなものである。

 

 『太陽には魚のやうにまぶたがない』『昼の時計は明るい』このように詩と読んでいいかどうかと思える作品を彼は残している。

 

 どの作品からも無為と虚無を生きる男の、うつうつとした姿が浮かんでくるところが共通している。

 

 しかし、彼の捉える世界の形があいまいかと言えば、寝転んでいる男の目に映る世界はひどく明晰で、昼の雨の中を生気に満ちてよぎる蝿がいて、昼の時計は午後の斜めの陽をあびてぼうぼうと燃え、太陽もまばたきをせずに燃え上がっている。

 

 子供あるいは聖者のような生き方があるだけ。孤独でありながら、しかしなにもかもがくっきり見える静寂の世界。そういう恐ろしい世界に尾形は四十三年生き、ついに燃え尽きて幻の昼の中に沈んでいったのである。

 

 

(4) 問題文(C)あらすじ・要約

 

 柴田収蔵という、あまり熱心とはいえない医者が幕末にいた。

 

 柴田収蔵は、生来の酒好きで、日々大酒を飲み、患者がやってきてもしばしば大酔中という医者だ。

 

 この男が酔っていない時に熱中したのが、地図の製作だった。彼は、四十歳で病死している。

 

 著者はこの柴田収蔵の日記二巻を購入して読んでみることにした。その内容は以下のようなものであった。

 

 柴田収蔵は、外国のことを書いてある本があると聞くと、借りてきては、書写する。地図の書籍を借りてきて写すことを繰り返した。

 

 柴田収蔵は、二度の江戸遊学で、蘭医学を学び、あわせて、様々な世界地図を手に入れて帰村した。

 

 熱心な医者ではなく、酒と地球図にかけている時間が多い男であった。当時としては、柴田収蔵は、日本一正確な地図を作成している人物であった。

 

 柴田収蔵は、精巧な地球図を作ることにこだわっていた。尾形が作る地図はあくまで実用本位ではなく、当時としてはほとんど実用の意味を持たない。実に正確なものであった。

 

(5) 考え方

 

今回の問題は、共通点や相違点を見つける問題ですね。

 

共通点や相違点は、文章の細かい所をいくら目を皿のようにして見ても見つかりません。

 

一歩引いて物事を見るように、文章を観察する必要があります。

 

そこで感じ取ったものを言葉に変換するプロセスに慣れていく必要があります。

 

共通点や相違点については、複数列挙して構いません。全部で3つくらいにまとめるといいでしょう。

 

4つ、5つと並べても構いませんが、あまりたくさん並べても細かいことを言いすぎている印象が残ります。

 

原則として、この手の問題は視点の良さを見ることがねらいですので、いくつか列挙していけば視点の良さをアピールすることができます。

 

それでは、あらすじの文章を見て、探してみましょう。

 

 

 

解答例をご紹介します。

 

(6) 解答例

 

 三つの文に描かれた生き方の共通点 は、大きく三つある。第一の共通点 は、物語の登場人物が、物事の本質を 捉えようとしている点である。第二の 共通点は、世の中に対して、肯定的な 見方だけに偏らず、否定的な見方もし ている点である。第三の共通点は子供 のように真摯に自分が熱中する物事に 接する点である。
 三つの文に描かれた生き方の相違点 は、大きく三つある。第一の相違点 は、真面目さである。物事に対する真 面目さは、三者三様である。第二の相 違点は、熱意の度合いである。尾形亀 之助は、大きな熱意がある人物とは言 えない。第三の相違点は、真剣さの度 合いである。尾形亀之助は、物事の本 質を捉えようとするが、そこに真剣さ はない。

 

【2】問題2

 

(1) 設問の要求

 

それぞれの文の筆者が対象をとらえる際の姿勢について、考えるところを述べなさい。

 

(2) 考え方

 

この問題では、3人の登場人物が対象をどのように捉えているのか、それぞれ、3人について述べていくことを求められていますね。

 

この問題はあなたの洞察力を見る問題です。

 

また、文学部で学ぶ素養がどれだけあるのかを見る問題でもあります。

 

全ての学部の中でもっともセンスを要求されるのは文学部です。

 

感性は本来人が思考をする際に、必ず必要になるものなのですが、文学部では、その感性そのものが研究対象となることもあり、このように感性的な問題が出題されることがあります。

 

間違ってはならないのは、文学部ではないなら、感性は必要ないということにはならないということです。

 

ものを考える際に、人は感性的にも考えることができ、同時に、論理的にも考えることができるのですね。

 

感性を働かせない人の思考力は落ちることが実験で分かっています。

 

今回の問題では、3人の登場人物が、それぞれどのように感性を働かせてものを見ようとしているのかをあなたは感じ取る必要があります。

 

例えば、問題文Aの坂東は、どのように世界を見ていたでしょうか。それはなぜでしょうか。どのように物事を感じ取るからそうなるのでしょうか。

 

このようなことをあなたが感じ取り、その上で、その感じ取った内容を言語に変換していく作業を行います。

 

大事なことは「感じ取ること」が先であり、言語化は後だということです。

 

何も感じ取っていないのに、言葉を振り回していると、頭でっかちなわりには、実態から乖離した内容になりがちです。

 

あなたは今までセンスを殺すような指導ばかりを受けてきていなかったでしょうか。

 

センスを殺す指導とは、物事に対する感じ取り方を無視して、「方法」に頼るような頭の働かせ方です。

 

このようなことをやっていると、何百回思考を行っても、同じようなアウトプットしかできません。センスを鍛えていくことなしに、センスが求められる問題に対処するのは、効率も悪いアプローチです。

 

センスを磨くためには、多くの対象に触れる中で、自分の感性を磨いてく必要があります。また、センスを働かせることが必要です。

 

美容師の人は、人混みの中で、髪型を見ます。ファッションに興味がある人は人混みで、人の服装に気を払うでしょう。役者は姿勢や、物腰、態度に気を払います。話すことを仕事にしている人は、人の話し方に興味があります。こうやって感性を磨き、センスを磨いていく中で、人は物事に熟達していきます。何もないところから突然センスが発揮されることはありません。誰もが皆、見えないところで努力しているのです。

 

あなたが、もし、何かに秀でて成長したいと感じているのであれば、センスを磨くことが大切です。

 

時には、センスはつかみどころがなく不満に感じることもあるかもしれません。

 

そのようなときに、くさらず、ふてずに、継続的に続けることができるかどうかが極めて重要です。

 

今回の問題について言えば、感性とは
想像力です。

 

行間をあなたの想像力で補うことが必要になります。

 

登場人物に成り代わり、あなたが、登場人物だとすれば、その世界の中で物事をどのように見て、どのように感じ取っているのかをイメージすることが大切です。

 

どのような価値観の人が、どのように感じ取ることによって、どのように考えて、どのように行動し、どのような言葉を発するのかまでを総合的にイメージします。

 

そうやって、自分なりに見えた世界を言葉にやはり変換していきます。

 

こちらのウェブブックも読んでおきましょう。

 

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それでは問題について考えてみましょう。

 

-------------ここから-------------
それぞれの文の筆者が対象をとらえる際の姿勢について、考えるところを述べなさい。
-------------ここまで-------------

 

あなたが、まず物語の登場人物になりましょう。

 

イメージしましたか?

 

その上で、何をどのように感じ取っているでしょうか。

 

登場人物の彼らの目から、世界はどのように見えるでしょうか。

 

何を気にしており、何に執着しているでしょうか。

 

何に無関心でしょうか。

 

想像力を働かせましょう。

 

課題文の中のどこにも答えはありません。

 

あなたがイメージするヒントになる言葉があるだけです。

 

そのヒントから、イメージを膨らませて、考えることが大切です。

 

それでは、いつものように、10秒でも3分でもいいので、考えてみましょう。

 

 

解答例をご紹介します。

 

(3) 解答例

 

 坂東玉三郎が対象を捉える際の姿勢 は、美意識に基づいている。人生観や 世間のしくみについても坂東は、特定 の美意識を通じて見ており、彼の美学 に反する「この世」を愚劣なものであ ると嘆いた。
 坂東とは対照的に、尾形亀之助が対 象を捉える際の姿勢は、主観的な美意 識を取り払ったものである。尾形亀之 助の言葉には、詩であるにも関わらず 飾り気が無い。生き方や物の見方、精 神性についての美意識を取り払うこと で物事の本質に迫ろうとする尾形の姿 勢が伺える。
 柴田収蔵が対象を捉える際の姿勢 は、実態の把握にこだわった非実用的 なものである。本来地図等に求められ る機能美という美意識が無く、精巧に 地図を作りたいという気持ちが柴田の 作品には感じられる。特定の美意識に こだわることもなく、かといって、美 意識を排除しようともせず、ただひた すらに科学的とも言える精巧さにこだ わった姿勢が、柴田の対象を捉える際 の姿勢である。

 

【3】編集後記 ~見えるようになるために~

 

もしもあなたが、解き方を教えてもらっているのに、何も思い浮かばない、何も書けないと感じているのであればその思考に原因があります。

 

ほとんどのケースで、解き方を教えてもらっても、問題は解けるようになりません。

 

その理由は、またの機会に詳しくお話しましょう。

 

 

 

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