慶應大学の小論文対策動画

価値観のギャップを埋める論法

Ⅰ 前提
 ・自分の価値観を土台に論理を展開すると点数が下がる。
・読み手(採点者)の価値観を土台に論理を展開すると点数が上がる。
・物事の妥当性の論拠を是とするか非とするかは、個人の価値観による。

 

Ⅱ 受験生の答案 法学部2010年度

※個人情報は伏せています。
2つ目は自由という観点からである。仮に戦争が始まれば、一般市民の生活も常に戦争と隣合わせの生活になるだろう。武器を作る工場での強制労働や徴兵など市民の意思を尊重しなくなる。自由な人間活動というのは権利として平等に与えられているものであり、国家が不当にそれを奪う権利はない。

※べき論になっているのもポイント(べき論は国際政治において一般原則足り得ない。)

・自分の価値観を元に物事の良し悪しを述べない。
・法的に徴兵制を合法化している国もある。
・何が良いかではなく、何が妥当かを述べる。
・政治的判断は、善悪を元にするだけでは成り立たない可能性、価値観があることを重視する。⇒従って国際間の紛争については、国内的正義論ではなく、国際的正義論を元に自説を構築する必要がある。
・権利・自由と責任(協約、協定)・美徳等の価値観から正義論を構築することを試みる。
・ただし、現実の国際社会は弱肉強食であることは念頭に入れ、理想論のレッテルを貼られる言説は避ける。
・ベキ論はスジ論には、現実世界では勝てないことが多い。

 


Ⅲ 妥当性を論証するステップ(価値観のギャップを埋める)

【解答例】
コリントス側の要求は、援軍(助)を送ることである。援助は実質的なアテーナイに対する開戦を意味する。その根拠は、アテーナイの統帥権を認めたことに対する非があるとの解釈である。同様に近隣諸国の同盟にも関心を示さなかったことは主犯であるとの論拠を挙げる。さらに同盟国としての義を果たすように要望している。その上で、もし援助を送らなければ、コリントスは他国との同盟に走るであろうと述べた上で、長期的には敵対国となることを暗に示し威嚇している。アテーナイ側の要求は、協定に従って合法的に紛争を解決するというものである。その根拠は、アテーナイ側の統帥権は、同盟軍から依頼されたものであり、自己に非は無いとする解釈である。
以上が双方の主張する事実及び解釈である。はたしてラケダイモーンの市民として、どのような決定をすべきだろうか。私はアテーナイの立場に立つ。協定を守り、静観する立場を取り、同時にコリントス側に最終決定事項を通知する。
私が上記のように考える理由は、大きく3つある。一つ目の理由は、正義と道義性である。コリントス側は、ラケダイモーンがアテーナイの統帥権取得に対する主犯格であり、非があると述べているが、それは単なる解釈であり、事実はアテーナイが述べたように、同盟国からの依頼である。その時に異を唱えなかったコリントスも同じくアテーナイの統帥権に関与していると言える。従ってラケダイモーンに非があるとの言は根拠なき言いがかりと言えよう。さらに、ラケダイモーンが述べる同盟とは、開戦後に支援を強制する類のものではないため、同盟を論拠として援助を要請するのは不適当である。第二の理由は、国益である。無益な争いは双方の国家を疲弊させ尊い人命と資源を失うだろう。第三の理由は協定である。アテーナイとの協定及び和約を守り、法的にも妥当な行動をとることが望ましいのは言うまでもない。アテーナイが述べるとおり、弱肉強食の世界で市民の命を守るためには、高度に政治的判断が必要であり、状況を見極めて適宜判断していくのが望ましい。
以上、正義と道義性(事実と解釈からラケダイモーン及びアテーナイに正義がある)、国益、協定の3点の理由から、私はアテーナイの立場に立つ。

《問》---二項対立であるため、その後に論じやすいように問題設定を行う。
《意》---明確に言い切る。
《理》---反論に対する再反論等、言い分に対する反論を述べつつ、弁護と批判を同時に行い、法学部で試されている力量を見せつつ理由を設計していくのが望ましい。

  1. 国益(無益な争いを避ける)
  2. 道義性
  3. 協定

 

《結》---ズルズル書かずに端的に述べる。

※構成例は、あくまでも目安程度に考えましょう。こうでなければならないということはありません。
※問・意・理・結とは、問題設定、意見提示、理由、結論のことです。小論文試験では、論じることを求められた場合、この順序で書いていくことで高い点数を得やすくなります。

【ポイント】
・法学部で出題されていることを十分理解し、弁護(擁護)と批判を行う。
・制限文字数が厳しいため、コンパクトにまとめる。
・事実と解釈の見分けを要求されていることを踏まえて、その力をきっちり見せる。
・政治的判断を問われているため、教条主義的にはならないように気を付ける。(慶應大学の法学部に特徴的なポイントです。)
・理由が書かれていない答案にならないように気を付ける。

 

 

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