このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
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2006年度慶應大学総合政策学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2006年度 慶應大学総合政策学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
設問1
最近君が「これが世論である」と考えた世論の事例を挙げ、君が考える世論の定義を述べ、世論の形成過程について1000字以内で述べよ。
解答例
クラスメートと政治のお題について議論をしていた際のことである。大変頭の良いクラスメートがぼそりと、自分の意見を述べた。この意見に同調し、右を見て、左を見て、他者の顔色を伺いながら薄ら笑いを浮かべて「賛成」と誰かが述べた。このような政治力や同調効果による知的に怠惰な反応が、現状の社会に存在する世論である。空気を読み、自分の頭で考えない反応は広く社会でも一般的に起こっている。ネット社会においても、自分の考えをつきつめるために情報を集めるのではなく、他者が何を考えているのかを調べようとする行動が目立つ。当然このような行動の先に妥当な解があるはずもなく、自作自演の書き込みやネガティブキャンペーンに多くの人が踊らされている。
私が考える世論の定義とは、上記のような現状の「不適切な世論」ではない。少なくとも理想的な世論とは、課題文で述べられているパブリックコメントや公聴会の限界を超えて、より一層妥当な意見集約のシステムを内包したものである。もちろん、現状のパブリックコメント収集過程には、政治的思惑が入り込んでおり、公聴会も然りである。加えて選挙システムは民意を正確に反映できるものではなく、社会的意思決定論についてより一層の研究が望まれる。より一層妥当な意見集約のシステムは、いくつかのプログラムをインターネットに走らせることにより、実現する可能性がある。ブログか新聞か、主観か客観かという大味の二元論ではなく、人が情報を認知し、意思決定に至るまでの思考過程を精査した上で、多くの意思決定プロセスに存在する諸問題を解決した先にある「民意の反映された意見」が、私が考える世論である。
前述した理想的な世論形成プロセスを経ることなく、現状の公共選択は行われている。現状の世論の形成過程とは、国民がより良い公共選択に関わる十分な知識を有さず、同時に公共財の投資について、その妥当性を審議するより良い思考プロセスが存在しないものである。具体的には、特定の政党に対する十分な知見の無い選挙活動、政策の妥当性を判断できない投票活動、一方的にメディアから情報が発信されても、頭の中で情報を整理できない思考活動、特定人物の政治力、同調効果などの帰結が現状の世論である。資料で述べられているように、アジェンダの選定はできず、仮にできたとしても妥当性を審議できない。
以上が私の世論についての仮説である。この問題を解決するために、社会選択が実施されるまでのプロセスを研究し、そこに存在する諸問題を我々は解決する必要がある。
設問2
資料の中で取り上げられた、「ネットと新聞の賭け」について、2007年に君はどちらが勝と予想するか。自分の立場を明示して論じなさい。
解答例
2007年の時点では、私は新聞が勝つと考える。理由は、被リンク数、被リンクの質、時期の3点である。
第一の理由は被リンク数の多さである。グーグルの当時のアルゴリズムでは、被リンク数が重要となる。有名な新聞は被リンク数が多いと考えられる。従って上位表示に有利である。第二の理由は、被リンクの質である。リンク数を稼ぐために、スパム同然のリンクを集める企業が増えた。このような数だけを増やすだましリンクをグーグルはペナルティー行為と認識しており、上位表示につなげない。第三の理由は、時期である。長期的に見れば、ブログの方が上位に表示される可能性があるが、短期的には前述した二つの第一第二の理由より、新聞社の方が有利であると考えらえる。
以上3点の理由より、2007年の時点では、私は新聞が勝つと考える。