このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。
2003年度慶應大学総合政策学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2003年度 慶應大学総合政策学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
設問1
日本がいかなる国であるのか、歴史を踏まえつつ、優れたところや悪いところ、問題点、これからの展望などについて、必ず具体的な事例(人物、事件、流行、都市、環境、経済、技術など)にそくして、海外の人に説明してください。
【ポイント】
今回の問題は、堅苦しく書けばいいというものではありません。
今回の問題で見られているのは、あなたのプレゼン能力です。
問題解決と言っても、求められているのは政策立案能力だけではなく、「人を動かす力」も、見られていることを忘れてはいけません。
IQだけではなく、EQが大切です。
他者の感情を理解する力が大切です。
どの様に言えば、相手は共感するのか、どのように語れば、耳を傾けてもらえるのかを考えましょう。
解答例
今日は、インドネシアの皆さんに、日本がどのような国であるのかについて、ご説明させていただきます。みなさんがある程度想像されているように、日本は現在比較的豊かな国かもしれません。しかし、かつては、大変貧しい国であり、かつての世界大戦では、敗戦国となり、国土は焼け野原でした。多くの犠牲を払い、技術力も教育レベルも大変低い状態から、経済発展し、現在の日本国がある形です。
一般的に日本人の良いところは、まじめな性格と勤勉さです。工業製品を作った場合、日本企業が作る工業製品の目標レベルは、その制作物の精度の面で大変高いと言われています。ほとんど製品に不良品が無いため、日本企業が作る家電は高い品質であると世界から認知されるようになりました。一方で日本人の悪いところは、その真面目さゆえに、新しいことを生み出すのが苦手なことです。昔からよく言われることですが、日本人は既存の製品の改良は得意でも、新しいものを生み出し、考え出す能力に乏しいのです。従って、現代社会のように、高度に資本主義が発達し、経済的に成熟した段階では、次の新しい飛躍がなかなかできません。
現状の日本社会が直面している問題点は、少子高齢化問題です。日本社会の人口の内訳は、ほとんどが高齢者となりつつあります。我が国の出生率は大変低く、年々若者が減少しています。これは大変深刻な問題です。ここまでお伝えしたように、日本には大きく二つの閉塞感を生み出す要因があります。一つは成熟した経済から新しいブレークスルーを生み出しにくいことです。二つ目は、高齢者ばかりの国になりつつあることです。
インドネシアの皆さんはどうでしょうか。若い人が大変多く、インドネシアの国は、活力に満ち溢れています。日本のような閉塞感はなく、皆嬉々とする笑顔に目が輝いています。これは大変うらやましいことです。
私は今後の展望として、インドネシアの皆様に日本国に移住していただくことを提案したいと考えています。日本は皆さんにとって魅力的でしょうか。インドネシアだけではなく、日本は多くの国から移民を受け入れなければならないと思われます。若い方の留学や、ご家族での移住をご提案できる日を私は楽しみにしています。
ご清聴ありがとうございました。テレマカシー。(ありがとう)
この手の文章の最後は、お礼で締めれば間違いありません。
設問2
どうしてその国の人々に向けて書いたのか。どのような意図で何を主眼として書いたのかを説明してください。
解答例
インドネシアは人口動態的に見た場合、出生率が高いため、若年層が多い。また、同国は大変な親日国である。同時に、インドネシア人は、日本人に対して憧れや尊敬の感情を抱いていることが少なくない。日本をPRする時、最初から嫌悪感を抱いている相手に説得的なことを述べても、反発される。人間心理は単純ではなく、求めてもいない情報を発信されれば人はストレスを感じるものだからだ。コロンブスの卵の発想のように、発想を転換し、最初から求めている人に対してメッセージを投げかけることが重要であると私は考えた。我が国の政策目標を50年~100年スパンで見た際にまぎれも無く重要になるのは、少子高齢化問題である。移民政策を真剣に検討すべき時期に我が国は差し掛かっており、もっとも有望な国家の一つとして挙げられるのがインドネシアである。インドネシア人は宗教上の問題から真面目な人物が多く、よく働く。移民として日本に移住しても日本の治安が急速に悪化するとは考えにくい。従って、インドネシア人に、日本へ移住する魅力及び、日本がインドネシア人を頼りにしていることを伝えることを主眼として文章を書いた。
【ポイント】
この問題では、あなたの企画力を見られています。
他国へメッセージを投げると言っても、実効性が無いことを話しても意味がありませんからね。
また、ここに書いた内容と、問題1の整合性もチェックされます。
どのような意図でしゃべったのかをチェックすれば、その意図通りの期待効果があるかどうかもおよそ判断できるからです。
また、できれば面白いことを書いていきましょう。
月並みで平凡な発想だと思われれば評価が下がります。
SFC受験では、この人は本当に問題を解決することができるかどうか?という視点であなたの答案がチェックされるでしょう。
自分の問題解決力を総合的にアピールしましょう。
過去問題演習をやるのは構いませんが、そこで何らかの正解を学ぼうとしている人は大変弱いです。
あなたの自分なりの正解を見つけましょう。
それは、自分の頭で考えるということです。