このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。
2002年度慶應大学総合政策学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2002年度 慶應大学総合政策学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
設問1
将来の産業社会における企業の役割について論じなさい。
※その際に、7つの資料の内、3つに言及すること。
【ポイント】
解き方ですが、、、、、
今回はこだわらない方がいいでしょう。
時々小論文を、解き方を教えてもらうと解けると考えている人がいますが、そもそもそういう性質の試験ではありません。
問題をパターンごとに解説することはできますが、
こう解けばいいという解説は、毒にも薬にもなりません。
教えてと教えられる側が華麗なる錯覚をして、時間が過ぎていきます。
そういう授業は世の中に大変多いです。
それでも、これで解けば合格できると言う人は、今後もいくらでも無限に出てくるでしょう。
そういうのを信じてやっていると、まったくレベルアップできずに試験本番を迎えることになります。
小論文については、論理や感性、知見を拡大することが大変軽視されがちです。
しかし、ここを鍛えておかなければこのような問題が出た時に何もできなくなってしまいます。
解答例
将来の産業社会における企業の役割とはどのようなものだろうか。社会の公器としての役割を将来の産業社会で企業は果たしていかなければならないと私は考える。
「企業は社会の公器です。」とは、経営の神様と呼ばれた故松下幸之助氏の言葉である。家電メーカーとして大きく成功した同社の経営哲学は、社会における公器として自社をデザインすることであった。企業である以上、利潤を追求すべきである。利益を出すからこそ、国家に納税ができる。そして、納税ができるからこそ、国家が社会保障などのサービスを拡充できる。また、企業は同時に社員や顧客に対して、大きな価値を提供し続ける企業でなければならない。このような使命と責任感に裏打ちされた倫理経営が、松下幸之助氏の経営の特徴でもあった。この松下氏と同じように社会的責任を重視する事例が資料5で述べられている。「社会の公器」とはこのように、納税、雇用、サービスの提供など、企業に関わるあらゆる人々に価値を提供できる器のことを指している。
しかしながら、すべての企業が、松下幸之助翁と同じように立派な経営理念を持っているわけではない。往々にして企業は収益性を追求するあまり、社会責任よりも自社の財務諸表を重視しがちである。資料4や資料5はその事例である。確かにインスタント麺やファーストフードは、多くの人々の生活を豊かにしてきた。これらの手軽な食事を楽しみ、頼りとする人もいるだろう。しかし、人の生活を豊かにするはずのこれらのサービスが、多くの人の健康被害につながっていることも忘れてはならない。
問題は、多くの企業は、十分に社会的な責任を果たしていると考えていることである。自社のサービスが、多くの人に利用されることで、どのようなデメリットが利用者に生じるかについて、真剣に頭を悩ませる経営者は決して多くはない。私が関与している論文作成サービスについても、例外ではない。ある大学の教員によれば、市販の小論文本は、約95%程度が妥当性を欠く内容であるという。インターネット上で、無料解説される小論文指導が近年増えることにより、この問題は深刻さを増している。ウェブ上で統一的な指導は成されておらず、十人十色の指導が成されている。その結果、これらの指導を参考にした受験生の小論文の点数が大変低いものになっていることが珍しくない。
以上、将来の産業社会において、企業は社会の公器としての役割を果たす必要があると私は考える。
今回の解答例では、資料に言及するように指示があるため、問題設定→意見提示→理由データ→結論の流れを少し変えています。