このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
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2001年度慶應大学総合政策学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2001年度 慶應大学総合政策学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
設問1
21世紀における政治とリーダーシップの関係はどのようにあることが望ましいかについて意見を述べよ。
※資料をもとに、あなたが重要だと考える論点を対比させなさい。
【ポイント】
解き方ですが、、、、、
今回の問題は、重要な前提をいくつか列挙していくことを考えましょう。
問題文では、「21世紀における」という条件がついています。 したがって、21世紀がどのような状況なのかについて言及することが重要です。
その上で、資料で与えられている文章から、出題者側の問題意識を推し量りましょう。
資料の内容に言及することを求められているので、資料についても言及する必要があります。
解答例
先般、我が国では、安保法制が、正規の民主主義的手続きを経ずして通過したことが大きな波紋を呼んだ。リーダーシップ論については、「有事の際のリーダー」と「平時の際のリーダー」で、その望ましいリーダー像が違うことが一般的に問題視される。21世紀の我が国は、有事と平時の違いで言えば、有事であると表現できる。逼迫した財政問題、中国との領土問題、少子高齢化による経済的停滞、超大国アメリカを主軸とした安全保障の枠組み崩壊の兆しなど、順調な経済成長を遂げてきた20世紀とは、大きく異なる状況が眼前に広がっている。上記を踏まえ、21世紀における政治とリーダーシップの関係はどのようにあることが望ましいだろうか。
私は重要な条件が満たされるリーダーシップが発揮されることが望ましいと考える。私が考える政治におけるリーダーシップの条件は3つある。一つは、正規の民主主義的プロセスを経て、リーダーに権限が預けられていることである。二つ目は、分析能力に優れており、妥当な政策判断ができることである。三つ目は、逆説的だが、主導よりも調整に重きを置いた政策判断ができることである。
理由は大きく3つある。一つ目の理由は、事実上の民主主義の崩壊が起こっているためだ。先般半強制的に審議を通過させられた安保法制は、多くの憲法学者が違憲であるとの見解を示した。資料では、リーダーが説得力を持つかどうかが議論の対象となっているが、現行の日本の政治体制においては、説得力の問題よりも、民意が大きく反映されない仕組みに大きな問題が存在している。
二つ目の理由は、現在の日本においては、主導よりも調整が重要なリーダーの役割となっているが、有事の際には、優れた判断能力が必要だからである。福島原発事故や、尖閣諸島問題が起こった際には、迅速かつ優れた判断能力が求められた。
三つ目の理由は、首相公選制のようなリスク回避システムが日本の政治には存在しないことである。アメリカの大統領制のような強力な権限が日本の総理にはないため、日本の政治は調整中心であり、迅速な意思決定に問題があると批判がありながらも、大きな問題は起きなかった。しかし、先般の安保法制で、強い間接民主制の政治システムが抱える問題点が浮き彫りとなった。
以上、3つの理由から、重要な条件が満たされるリーダーシップが発揮されることが望ましいと私は考える。
大論述の問題が出た際には、しっかり立論することを心がけましょう。現行の日本の政治を観察し、リーダーシップを論じる際の重要論点をイメージしましょう。