このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
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2000年度慶應大学総合政策学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2000年度 慶應大学総合政策学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
設問1
今日の技術革新がもたらしている大きな影響について論じ、そうした状況の下での国家の役割について検討しなさい。
※資料の論点に適宜言及すること。
今回の問題では、資料の論点に適宜言及することを求められています。
また、技術革新の影響と、国家の役割の2つについて論じることを求められていますので、やや変則的に文章を構成します。
いくつか前提を列挙しつつ、問題設定→意見提示→理由・データ→結論という流れを2回繰り返しましょう。
それでは、解答例をご紹介します。
解答例
今日の技術革新がもたらしている影響とは、具体的にはどのようなものだろうか。私は、経済活動のレバレッジに注目したい。かつての経済と現在の経済の違いは、IT環境の変化による市場からの期待の増幅である。少なくとも数十年前には、わずか一か月程度で数千万人のユーザーを囲い込むようなサービスは存在しなかった。フェイスブックなどに至っては、数年で時価総額10兆円程度の企業にまで成長している。実体経済とウェブ上の技術が密接に関連し、ITの影響力が高まった。資料1で述べられているテクノロジーパラダイムの一つは「ウェブ上におけるつながり数の増加」である。
SNS(ソーシャルネットワークサービス)の台頭により、国家も積極的にSNSサービスを利用し、選挙や広報活動に役立てようとしている。このような現象は、資料3で述べられている、「民間企業の力の高まり」にあたる。国家は民間企業の競争力強化に関わり、「産業のコメ」となっているSNS関連企業へ積極的に投資する必要があるだろう。次世代のIT産業を総合的に牽引する大きな力がSNSにはあるためである。
ピータードラッカーが述べるように、現代社会でも、国家は依然として大きな影響力を持っている。しかし、あくまでもそれは現状認識論に過ぎないのではないかと私は見る。少なくとも国家の将来像は、現状の独立主権国家の集積や現行の国民国家のあり方とは違ったものである可能性がある。グーグルやフェイスブックは大きな力を持つが、国家に本質的に大きな変化を与える力までは有していない。しかし、それは現状の認識であり、将来現在のウェブ環境とはまったく異質なウェブ環境が整備された場合はこの限りではない。現行のウェブは、細かな、取るに足らない例外はあっても、実質的には、「事実上の単なるデータベース」であり、ソフトウェアにより、情報に意味づけや知識化が行われてない。良い情報もあれば、悪い情報もあるというように、玉石混交の確かめようのない情報の羅列があるだけである。この状態がいつまでも続くとは限らない。
国家の役割とはどのようなものか。私は次のテクノロジーパラダイムを生み出すための公共財の再投資を行うことが国家の役割であると考える。国家は唯一の社会調整システムであり、国民の労働力も含めた国富を全体最適の形で戦略的に活用できる主体である。民間企業の力が増しても、この点については当分国家に企業は及ばないだろう。従って国家だけが果たすことのできる役割である公共財の戦略的な投資を国家の役割として提案したい。
【ポイント】
今回の問題を解く際には、技術革新の影響が政治や経済にどのような変化をもたらしているのかについて、言及する必要があります。
資料を読み、出題者の問題意識を推し量りましょう。
上記の意味で、現代社会では、何が日本や世界の政治経済を動かしているのかをウォッチしなければなりません。
政治経済の教科書を読んでいる場合ではありませんよと、常日頃からお伝えしている理由はこういうところにあります。教科書では対応できません。
また、特定の解き方で今回の問題が解けたかどうか、自問自答してみましょう。
小論文の実力養成に何が必要だとあなたは考えますか?
私は、「知恵」と「知性」を育む基本が大切と、音声で解説しました。
その上で、プラスアルファの発想が大切になります。
ここでいうプラスアルファとは、発想法などから生まれるものではありません。
組み合わせをちょこちょこやっても、何もあなたの頭には思い浮かばないでしょう。
そのようなちょっとしたアイディアコンテストに出すようなアイディアを大学側は欲しいわけではありません。