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1996年度慶應大学総合政策学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、1996年度 慶應大学総合政策学部小論文過去問題解説です。
今回の問題は次のようなものです。
設問1
次の4つの資料は現代広告について論じています。商品及び商品広告についての論点を説明し、あわせてあなたの考えを述べなさい。
資料の内容は端的にまとめると以下のようなものです。
少し私が作った解答例から文章を拝借します。
資料Aは、現代の広告は商品をシンボル化し、それを大衆にぶつける道具であると説く。
資料Bは、ある企業のイメージとテレビ広告はサービスや製品を越えて、世の中を理解する方法まで売り込もうとしていると説く。
資料Cは、欲求はモノではなく、価値をめざすようになり、欲求の従属はこれらの価値への密着を意味するようになっていると説く。
資料Dは、現代広告がモノ離れを起こしており、ゆえに、「暮らしのイデオロギー」の提示を消費者に行うことを通して、モノへの欲求喚起を促す事例が述べられている。その上で、これらの手法は、「差別化」のための新趣向であり、新しい生き方の提案であると説く。
上記を踏まえて、広告について論じていくわけですね。
ところで、論点を指定されていませんので、自分で考える必要があります。
どの論点について、論じるべきでしょうか。
ここについては、、、、
ある程度メタ化したものの見方をしていく必要があるでしょう。
資料を無視しすぎると、出題者の問題意識から外れます。
勝手に好きなことを述べても、ズレたことを述べているだけという話になってしまいます。
資料をなぜまとめさせられたのかを考えましょう。
広義の巨視的な視点から、4つの資料の共通点を探るように今回は見ていくといいでしょう。
そうすると、A~Dの広告論は、純粋に商品を紹介し、消費欲求を喚起する従来型の広告手法とは別の広告アプローチについて説明したものという見方もできるでしょう。
今回はこの方向性でまとめた上で、対応する論点について問題設定をする方向性で答案を設計しています。
それでは、さっそく解答例を見てみましょう。
解答例
資料Aは、現代の広告は商品をシンボル化し、それを大衆にぶつける道具であると説く。
資料Bは、ある企業のイメージとテレビ広告はサービスや製品を越えて、世の中を理解する方法まで売り込もうとしていると説く。
資料Cは、欲求はモノではなく、価値をめざすようになり、欲求の従属はこれらの価値への密着を意味するようになっていると説く。
資料Dは、現代広告がモノ離れを起こしており、ゆえに、「暮らしのイデオロギー」の提示を消費者に行うことを通して、モノへの欲求喚起を促す事例が述べられている。その上で、これらの手法は、「差別化」のための新趣向であり、新しい生き方の提案であると説く。
上記A~Dの広告論は、純粋に商品を紹介し、消費欲求を喚起する従来型の広告手法とは別の広告アプローチについて説明したものである。現代の広告はどのように変化しつつあるのだろうか。
総じて、「新しい欲求の喚起」を目指す形へと現代の広告は変化しつつあると私は考える。従来の広告は、直接的に商品を訴求すればよかった。しかし、現代社会は経済が成熟し、ものが余った時代である。消費者は広告を通じて、本来生存に必要ないものを購入することを求められている。本来生存に必要がないということは、消費者にとっては純粋に生き方の問題である。だからこそ、資料Aの、シンボル化、資料Bの世の中への理解と共感、資料Cの価値、資料Dのイデオロギーなどの訴求軸が生まれると考えられる。現在キャリア各社が提供するKDDIの「桃太郎シリーズ」ソフトバンクの「犬と家族シリーズ」の広告などは「生き方」の選択ないしは、そこで展開されるストーリーへの共感、感情的結びつきを消費者に促すものである。キャリア各社が提供する世界観への帰属意識や、長期的な感情的な結びつきを狙って、広告が構成されている。現実に我が国の国民資産は、1000兆円を超えると言われているが、消費にこれらの貯蓄が回されないことが大きな問題となっている。広告主は多くの場合、これらの消費者の可処分資産を用いた消費を喚起する必要に迫られている。
以上、総じて「新しい欲求の喚起」を目指す形へと現代の広告は変化しつつあると私は考える。
設問2
テキストEを読み、問1で述べたあなた自身の論述の視点から、このCMコピーについて、論述しなさい。
問2では、あなたが問1で考察した内容が妥当かどうかを別の観点からチェックされます。
採点者が既にチェックしているわけですが、あなたの言い分も一応見ましょうという意味合いもあるでしょう。
よく考えられているのであれば、問1の評価が変わる可能性もあります。
解答例
テキストEのコピーでは、新しいウィスキーの飲み方を提案している。この提案は、私が問1で述べた「新しい欲求の喚起」を目指すものであると考えられる。理由は二つある。一つ目の理由は詳細な記述だ。具体的に解説する理由はライフスタイルをイメージし、欲求を喚起するためである。二つ目の理由は、「ありふれた毎日から抜け出し」などの、欲求を刺激するコピーの存在である。