こんにちは。
牛山です。
本日は、2010年度総合政策学部の過去
問題解説です。
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【1】問題概要
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この年の問題は、典型的な分析系の問
題でした。
テーマは「介護労働者の離職率」で
す。
いくつかの資料が与えられており、
介護労働者の離職率がなぜ高いのかに
ついて、原因を考察させる問題になっ
ています。
また、介護労働者の離職防止対策が有
効に機能するかどうかを考察する問題
が問2と問3になっています。
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【2】資料の読み取り方
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この手の問題は、資料の読み取りで、
内容を一言化していくことが大切で
す。
概ね資料は以下のようになっていま
す。
[表1]採用率と離職率
・介護をする人が少ない。
[表2]現在の仕事を選んだ理由
・理念で介護の仕事につき、第二に多
い理由は、経済的理由
[表3]現在の仕事の満足度
・コミュニケーションには満足してい
るが、賃金の低さが不満であり、人事
評価や、教育訓練、福利厚生など、会
社のやり方に不満が大きい。
[表4]やめた理由
・第一位は、理念、第二位は、人間関
係、第三位は経済的理由。
[表5]労働条件の悩み
・要は仕事が割に合わない。
[表6]職場の悩み
・情報交換ができず、人間関係に苦し
む。
[図1]賃金と離職率の相関図
・一般的に賃金の低さと離職率には、
相関はない。
[資料3]
・要は、介護関連の事業者は、仕事の
改善ができず、そのつもりがない。
a.ストレスに弱い人が集まっている。
b.やりたいように仕事をできない。
c.精神論ばかりが説かれる。
d.現場は仕事を回すことを重視している。
[資料4]早期離職防止や定着促進策
・コミュケーションの改善(1位)、
労働時間の希望(2位)、賃金等の労
働条件を中心とした改善(3位)を行
っている。
[資料5]A党の策
・賃金の低さが原因であるからして、
介護報酬を引き上げればよいだろう。
(意見)
資料は大量に与えられているので、ポ
イントを押さえることができなければ
何がどうなっているのか分からなく
なってしまいます。
どういうことが起こっているのかを
把握しましょう。
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【3】論理的統合
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ここまでの段階で、資料の要約作業は
終わりました。
次に大切になってくるのは、これらの
情報を論理的に統合していくことで
す。
今回の問題では、設問1で、「介護労
働者の離職率が高い原因」を図式化す
ることを求められています。
この場合、上記の文章化した内容(各
種資料)を、論理的にまとめあげてい
く作業が必要になってきます。
細かいお話をしますと、論理的統合と
非論理的統合が必要になります。
今回は長くなりますので、この部分は
割愛します。
拙著『小論文の教科書』をお持ちの方
は、開いていただいて、205ページを
ご覧いただくと、何をやればいいのか
を図で説明しています。
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【4】解答例と概説
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(1) 設問1 解答例
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図はこちらからもご確認いただけます。
画像をクリックすると拡大画像を見ることができます。
-------------ここから-------------
介護労働者の離職率が高い原因は大
きく3点ある。第一の要因は、内部要
因として、肉体的かつ、精神的負担が
大きいことである。第二の要因は、外
的な要因であり、上記の労働条件の割
に報酬が少ないことである。第三の要
因は、背景要因である母集団の属性で
ある。本来ストレスに弱いまじめな気
質の労働者が、理念を重視して職場を
選んでいるケースが多い。図1が示す
ように一般的には、賃金と離職率は相
関が無いため、報酬が少ないとの考え
は、感覚的なものであると考えられ
る。
総じて、求職段階での就職希望者の
ニーズと、実際の労働環境及び労働条
件がマッチしておらず、精神的かつ肉
体的な負担の割に、労働条件が納得の
いくものではない度合いが大きいこと
が、介護労働者の離職率の高さに影響
を及ぼしている。
-------------ここまで-------------
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(2) 概説
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既に図で説明していることを、いちい
ち言葉でも説明する必要はありませ
ん。
あくまでも、図の補足説明として、説
明文を設計していくことが大切です。
要因を表記する際に、大項目として、
外部要因、内部要因、背景要因という
3つのフレームワークでまとめていま
す。
資料4の対策は限定的に現れることが予想される。第一の理由は、コミュニケーションに対する満足度の高さである。表3によれば、コミュニケーションには約半数の人が満足している。第二の理由は、離職率の高さの主因は、経済的理由だけではないからである。(表4)職場に対する不満の内上位は、会社の運営体制にある。(表3)表5からも分かるように、経済的理由だけが原因ではなく、仕事が総じて割にあわないことが原因である。
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A党案は極めて限定的にしか効果が発現しないと予想される。介護労働者の離職率が高い要因の内、外的、内的、背景的要因を考慮した場合、A党案は、そのうちの外的な要因にしか対策が成されない。したがって、他の母集団の属性、労働条件の劣悪さ等は、改善されず、問題は残り続ける。仕事の割に報酬が少ないと感じる労働者、ストレスに弱く、もともと金銭的報酬を目当てに就職したわけではない労働者は増え続けるため、実質的な効果は期待できない。
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