慶応大学の小論文過去問題解説

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慶應大学SFC 総合政策学部 小論文過去問題解説 2012年

 

 

 

こんにちは。牛山です。
また慶應大学の合格報告が届いていま
す。まだ増えそうです。合格された方
はおめでとうございます。

 

今日は2012年度の慶応大学総合政策学
部の小論文の解説をします。ご興味が
ない方は、ここでメールを閉じていた
だければと思います。

 

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【1】前提
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(1) 考え方
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今年慶応大学を受験された方はいかが
だったでしょうか。かなり難しい問題
で面食らったのではないかなと思います。

 

先日私が出したメールマガジンでは、
世の中がどのように変わっていったの
かについて、その世の中の変化を書い
ていました。そうすると私が書いた文
章は、若干総合政策学部で出題された
資料の中に書いてある文章と内容が違
うのかな?と思った方もいるかもしれ
ません。でもそれでいいんですね。な
ぜならば、自分の意見を求められてい
るわけですから。同じである方が逆に
困ります。不合格になります。

 

そもそも資料の文章は、五つありまし
たね。そしてその五つの資料の文章が
それぞれ違うことを述べています。

今年の2012年度の問題は、グローバル
ゼーションが世界の政治経済にもたら
している変化について論じなさいとい
う問題です。ところが重要なことは、
以下の点です。

 

ただ単に論じればいいのではなく、き
ちんと設問にもあるように各資料に共
通する論点や各資料の立場の異なる論
点、あなたが重要と考える論点等を挙
げつつというふうに書いてあります。


つまりどういうことかというと、資料
に書いてあることは、資料に書いてあ
るだけであってあなたが実際にどうい
うふうに考えているのか、ということ
を書きなさいということです。

 

ですから資料の中に答えはありません。
考えるための材料を課題文として提供
して、自分で考えてくださいというの
が小論文試験です。現代文の場合は、
答えはすべて課題文の中にあります。
その反対に小論文の試験は答えが課題
文の中にありませんので、自分の頭で
考えて自分の意見を述べることが求め
られているんですね。

 

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(2) 共通する論点は?
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各資料に共通する論点は、いくつかあ
ります。

 

~性質面~
1)国家、企業、個人という枠組みを
超えて、≪生産性が高い方向≫へと市
場の力によってグローバル化が、各分
野で進んだということ。グローバル化
とは、低生産性から、高生産性への時
代のシフトの帰結としての現象である
という事も言えそうです。資料にある
地域の集約化も然りです。新興国の成
長も然りです。欧米政府の経済介入も
然りです。

 

~現象面~
2)
グローバリゼーションは、段階的に進
んでいるということです。それぞれの
フェーズで、各時代の政治や経済を形
作る、因子の影響を受けて、各時代ご
との特性に大きく影響されて、グロー
バリゼーションが進行していることです。

 

※注意点
先日の慶應法学部の問題の解説の際に
もいくらかお話ししましたが、国家の
中央集権体制原理主義的な言説を総合
政策学部の試験で書くことはタブーに
近いかなと思います。今の日本の政治
を見ても分かりますが、極端に一極集
中した統治の枠組みの在り方が日本の
凋落の根本的な原因です。政府系金融
からの公的資金の注入も然り、現状の
教育体制も然りです。国策として国家
のリソースを、生産性の高い部分に投
入した国はその逆に繁栄しています。
インドやシンガポールはそのいい例です。

 

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(3) 異なっている論点は?
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それでは各資料で異なっているのはど
のような論点でしょうか。異なってい
る論点は、着眼した視点です。

各資料は、

 

資料1)重要因子・・・性質面(現象面や原理の話)国→企業→個人(プラットフォーム)
資料2)企業
資料3)国家
資料4)国際間
資料5)民主化

 

というように、グローバリゼーション
の着眼点がそれぞれ違います。そもそ
も論点そのものが別次元のものとなっ
ていますから、【異なっている論点は
何か?】という事を聞かれた場合は、
まず総論として、これらの着眼点の違
いを述べる必要があります。それぞれ
の分野、着眼点での他の着眼点のケー
スとの違いについて述べてもいいので
すが、それはどちらかと言うと後の話
です。

 

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(4) 重要だと考える論点は?
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それでは、上記の1~5を眺めてみま
しょう。この中で重要なのはどれでし
ょうか?これが、問1で聞かれている
事です。あなたが重要だと考える論点
などを挙げつつと、設問に要求があり
ますね。どの論点が重要でしょうか?
私だったら、資料1の論点が重要だと
書きます。(こうでないと合格できな
いというわけではありませんよ。)

その理由は?


先日出したメールマガジンにも書きま
したが、社会そのものが、総合的にこ
の社会を俯瞰して見た時に変わってき
ているからです。社会そのものの構造
的な変化、社会に影響を与える力学の
原理が根元から変わってきているとい
う事を恐らくは書くでしょう。企業や
国家、国際間、そして民主化というそ
れぞれのカテゴリの力学の構造的変化
が起こっているわけですから、資料の
1で説かれている内容は、資料2~5
のそれぞれのカテゴリで、社会を変革
する重要因子が何か?という事なんで
す。資料の1はその意味で、資料2~
5の前提になっているわけですね。


(噛み砕きまくって書いているわけで
はないのですが、ここまで大丈夫でし
ょうか。引き続きつらつら書きます。)

資料1の著者であるトーマスフリード
マンは、フラット化する世界と、資料
の中の内容について述べていますが、
私なら、【つながりが情報革命によっ
て強化されている】という視点でこの
現象を見ます。マークザッカーバーグ
の言葉で言えば、【個人間の情報量を
多く保有している個人が増加した】と
述べるべきかもしれません。個人間の
情報量というのは、ウェブ上でのつな
がりの事とも言えます。そのつながり
が増加したことによって、マスコミの
意義が今薄れつつあるかもしれません。
フェイスブックやツイッター、ブログ
などです。

 

情報の鞘取りをしていた人たちの淘汰
が(いいのか悪いのかは別として)少
しずつ起こっています。

 

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【2】問1の解答指針
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ここまでの事をふまえて、グローバリ
ゼーションが、政治、経済にもたらし
ている変化とは、何なのかをズバリ一
言で答えてみましょう。

 

前回のメルマガでもお話ししましたが、
大きなエネルギーの源は、情報通信革
命、プラットフォームによって、今の
時代は『共感』になっています。この
点については後で少しお話しします。
オバマ大統領とウォルマートを例に挙
げます。

 

ここでお話ししたような、【国家や企
業の行動原理の変容】を、グローバリ
ゼーションによって起こった変化とし
て、解答にするのは一つの解答方向です。

 

------主張部分・解答例------------
グローバリゼーションが政治経済にも
たらしている変化とは、政治経済に影
響を与える重要因子である、国、企業、
個人の動機づけの要因の変化によって、
国家、企業の行動原理が根本から変わ
りつつある事である。重要因子が変化
すれば、それに合わせて国と経済も変
わらなければならなくなる為である。
かつての国家、企業は、個人をないが
しろにした行動原理を貫いても場合に
よっては繁栄する事ができた。しかし
今は違う。発展の為には、個人を保護
し、個人に報いなければならない。
以下に、国家と企業の行動原理の変容
について、検討を加えたい。・・・・
----------------------------------

 

≪注意!≫
このような方向で論述した後に、論証
していくというスタンスは、一つの解
答の方向性としてアリです。きちんと、
設問の要求に答える事が重要ですから、
いきなり自分の主張を書いたり、求め
られていないことを書いてはいけませ
ん。(何の話??)と思われてしまい
ます。政治や経済を変化させる重要因
子が国から企業となり、グローバリゼ
ーション3,0の時代に重要因子は個
人になったと、資料には書かれている
のですが、その結果、個人の意思決定
に大きな影響を与えるもの(重要因子
)が、政治経済を形作るようになった
んですね。

 

~アメリカ大統領の例~
アメリカの大統領選はそのいい例です。
オバマ大統領は、SNSの力を用いて
選挙に勝利しています。個人の共感を
得る事ができる人が、世界一の力を持
つ国の大統領になるのが今の時代なん
だということ、その仕組みが従来の政
治の仕組みとリンクして、次の大統領
を決め、政治家を決め、→(政治を決
める)そして、企業の活動の成否を決
める→(経済を決める)という風に今
変わりつつある、本当に転換期です。
今その時代に入りかけている最中と言
ってもいいかもしれません。重要因子
が国から企業、個人へと変わったので、
大統領候補の行動原理と政治が変わっ
たんですね。

 

~企業の例~
ウォルマートという巨大グループをご
存知の方は多いと思います。日本で言
うところの、イトーヨーカドーグルー
プ、セブンイレブングループのような
ものです。ただし・・・事業規模は全
く違います。だいたい日本国の歳入く
らいの金額、約40兆円ほどを売り上
げる世界最大の巨大商業グループです。
このウォルマートが世界各地の350
0店舗で一斉にフェイスブックを利用
しはじめました。3500のウェブサ
イトを開設。(正確にはフェイスブッ
クページ)そして、その3500のS
NS上のページで自分たちの顧客とコ
ミュニケーションを始めたんですね。
重要因子が国から企業、個人へと変わ
ったので、企業の行動原理と経済が変
わったんですね。

 

世界の政治と経済を象徴するアメリカ
の大統領と巨大企業の事例をご紹介し
ました。概ね上記のような形で論証す
るといいでしょう。他の事例を挙げて
も、もちろんOKです。

 

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●今起こっていること
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企業の広報・宣伝活動も時代の背景が
変わるにつれて大きく変容しつつあり
ます。つまり、政治の世界も、経済の
世界もより生産性が高い方向性へと舵
をきりつつあるということです。


ソーシャルメディアで、10億人、
15億人と人がつながって、世界の人
口の5分の1~4分の1が高密度でつ
ながって、情報を共有できる時代にな
りました。その事が何を意味するのか
?そこを表現できるかどうかは、今回
の試験の大きなポイントでした。文章
を難しく書けば合格するわけではあり
ません。時代を見る眼が一番SFCで
は重要です。他の人に見えないものが
見えるかどうかです。問い2について
は、長くなりましたので、次回に譲り
たいと思います。

 

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【3】地域国家論という方向性も解答例としてありです
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地域国家論という言葉を聞いたことが
ありますか?私が学んでいる大学院の
学長である、大前研一先生の著作物です。

いま、国民最大の敵は国家である。


グローバル・エコノミーのなかで栄え
るのは、開かれた地域国家だ。国の規
制も助成金も、もう要らない。富は主
権国家ではなく、国境を超えたネット
ワークがもたらす。・・というような
内容が大筋の書籍です。今回の受験で
興味を持った方は、図書館などで読ん
でもらえればと思います。

本文の内容を少しご紹介すると・・・

 

===引用開始===
国家は経済的な影響ではなく、政治的
な影響を第1に考えて経済的な選択を
せざるをえない。選挙では勝たなけれ
ばならず、国民の歓心を買わなければ
ならない。だから、長い目で見れば国
民全体を潤す政策を犠牲にして、すぐ
に効果のわかるばらまき政策に力を入
れる。しかし補助金も保護も、自力で
立ち直ろうとする意欲をくじき、依存
心を強めてしまうだけだ。これは大変
なカネの無駄遣いという話だけではす
まない。雇用が失われ、将来の経済成
長が阻害されるという形で高いツケが
まわってきたとき、それを支払うのは
生活者である国民なのだ。
===引用終了===

 

今でこそ道州制だなんだと、話題に上
がって真剣に討議されるようになりつ
つありますが、全部大前先生が10年
以上前に唱えていた事ですからね、か
なり時代待ちの人だと思います。

 



 

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【4】解答例
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【問題1 解答例】
 各資料に共通する論点とは、国家、企業、個人という枠組みを超えて、≪生産性が高い方向≫へと市場の力によってグローバル化が、各分野で進んだということである。グローバル化とは、低生産性から、高生産性への時代のシフトの帰結としての現象である。世界の最適化がグローバル化であると表現できる。資料にある地域の集約化も然り、新興国の成長も然り、欧米政府の経済介入も然りである。
 各資料で異なる論点は、比較的楽観的に現象を捉えている資料1.2.に対して、国家資本主義の運用の注視や東アジアとの連携を模索することを提唱する資料3.4.の違いがある。楽観と悲観という対立軸でこの資料を読み取った場合、グローバリゼーションそのものは、大きなチャンスであると捉えることができると同時に、熾烈な国際競争が本格化していると見ることもできる。
 第二の各資料で異なる論点は、それぞれの資料が注視したポイントである。資料1は重要因子、資料2は企業間、資料3は国家、資料4は国際間、資料5は民主化という切り口でグローバリゼーションを考察する文章となっている。
 グローバリゼーションが世界の政治、経済にもたらしている変化とはどのようなものだろうか。私は「世界の最適化」であると考える。資源、人材、資金等が、国家の枠組みを超えて流動的に世界経済のルール上で動くようになりつつある。資本主義経済の最適化が今世界で加速し、その経済力によって、政治が支配される構図がより一層強くなりつつある。
 以下に私の仮説を事例で述べる。特定の地域・国家がアジアや欧州で金融、生産等においてハブのような機能を果たす現象が現在加速している。一つの国家として経済が完結せず、世界経済の中で特定の役割を果たす経済圏である。シリコンバレー、中国、スイス、シンガポールなどがその好例である。各国家、地域が一つの産業クラスターとなり、世界経済の台風の目となりつつある。



【問題2 解答例】
 資料2の企業間のバージョンについて以下に述べる。私が考えるグローバリゼーションのバージョンは、国際間のグローバリゼーションではなく、各国家という概念が希薄化した「国民間のつながり密度の上昇」というバージョンである。従来のバージョンは一方通行か双方向であり、どちらかと言えば、二次元で表記できる程度のものであった。ところが世界はより一層高い密度でつながった。したがってこの密度の上でしか成立しない商取引が可能になったのである。電子マネーやコンテンツプラットフォームの台頭である。具体的には、SNSと連携するシステム上で、コンテンツやサービスが流通し、SNSユーザーが何らかの便益を得るというものである。
 現在はこのようなSNSを介した商業行為はまだ黎明期と見るべき段階だ。今後は世界中のコンテンツが自動翻訳され、各企業ではなく、各個人がこれらのプラットフォーム上で、パフォーマーとしてコンテンツを提供し、享受する時代となる。現段階では、ユーチューバ―と呼ばれるごく一部の人種がこのような商業行為を行っているが、国際間の垣根が取れ、コンテンツが自由に行き来する経済圏がさらに成長することで、このような行為から得られるメリットも拡大する。したがって商業行為の単位が限りなく企業から個人へと細分化されたものとなり、民間のグローバル化が加速する可能性がある。
 以上、顧客が単なるサービスの受益者ではなく、供給者、営業者、マネージャーとなる、グローバリゼーション4.0の時代が到来すると私は予測する。



 

 

 

 

 

 

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