このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。
2015年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
合格報告を頂戴していて、ビックリしたのですが、今年も慶應大学4学部合格者が出ました!!
法学部、経済学部、総合政策学部環境情報学部の4学部に合格した強者がいます。
2年連続で、慶應クラスという、慶大進学専門塾から慶應大学4学部合格者が出た形となります。
私も気を引き締めて、サポートをがんばっていきたいと思います。
さて、慶應大学経済学部の合格報告も届き始めましたが、本日は小論文の問題解説をお送りしたいと思います。
【1】問題の概要
今年は面白い問題でしたね。
課題文の内容を端的にまとめると、こちらのページのような形になります。
知識と知恵と情報の違い(構造ノート)
⇒http://structure-notebook.com/premium/public.php?id=6365
【2】設問A
(1) 注意点
毎年自分の考えを述べる問題は1問のみ出題されている形でしたが、今年は問題Aも(一応)自分の考えを述べる問題でした。
今後もこの傾向は続くのでしょうかね。
そこは分かりませんが、問題をよく見ますと、次のような要求があります。
----------------------------------
知識の特徴を知恵および情報と比較して述べた上で、(中略)書きなさい。
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自分が書きたいことを書きまくったり、自分が言いたいことを述べまくると、点数が下がります。
設問の要求を無視せず、きちんと求められていることを理解して、要求通りに記述することが大切です。
(2) 問題と考え方
「大学での教育の目的は、知識を授けることである」という見解についてどのように考えますか
このようなことが今年の問題では問われています。
こういう問われ方をすれば、それは当然、、、、、、
大学での教育の目的は知識を授けることではないということが言いたいんだろうなぁ・・・
と、問題作成者の問題意識を感じ取ることができますね。頭の働かせ方としては、
(1)出題者の意図を理解
(2)普通に考える。
(3)出題者が評価しているものを考察
このように考えるのがお勧めです。
まず、出題者がどのような問題意識から、何を言いたがっているのかを把握し、その先にあるものは何かを考えます。
知識の提供にとどまることに何らかの問題意識を感じているからこそ、このような質問をしていると考えられますね。
次に、大学教育の目的を考えます。当然理想を言えば、知識の提供に留まらず知恵、あるいは、もっと汎用性の高い知性にまで影響があるのが理想です。
多くの知識人論(知識人は有用なのか、それとも役に立たないのか)は、ほぼほぼ、頭でっかちで役に立たないのかどうかということが論点になりがちですので、そのようなことにはならないと作問者が言いたいのはすぐに分かるはずです。
また、当然単なる知識提供になってしまうのであれば、大学は行かなくてもいい場所ということになります。
大学教育の目的は、教養教育に限らず職業教育も重要であると一般的に言われますので、その目的にも叶うことが理想なのは言うまでもありません。
次に出題者が評価しているものを考えます。出題者が評価しているのは、考えるまでもなく、大学での教育ですね。
従って、上記の代表的な議論をまとめれば、当然ですが、大学教育の目的は知識を与えることのみではないという結論に至ります。
もちろん、きちんと常識的にも考えますよ。
(3) 解答例
大学での教育の目的は、知識を授けることだけではない。知識とは、極めて実用的な性質を持つ知恵と違い、単発では、大きな実用性につながるとは限らない性質を持つ。また絶えず自己革新を内部から続けるものである。知識は情報のように、自己拡張のにおいが薄く、指導されたという印象が薄いものではなく、何らかの意味づけを与える意思に支えられており、時に権威性を有する。前述の知識の特徴は多くの点で大学教育の内容と符合する。しかし、知識が知恵に転化することもある。ノーベル賞を受賞するような発明や研究はその典型と言えよう。さらに知識は仕事を通じて時に知恵に転化する。知識は知性や知恵を育むのである。
【3】設問B
(1) 問題
設問Bは、
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知識は人間だけによって創られていくのであろうか、あなたの考えを理由を付して述べなさい。
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というような問題ですので、実質的に論じなさいという要求ですね。
今回の問題も、このように問うということは、知識は人間だけによって創られていくものではないと言っているようなものですね。
ですから、一応人間以外が知識を有する事例を探ります。
ハッキリ言って、知識の定義によってどちらの立場で述べてもいいような問いになっていますので、念のために、条件付きの賛成や反対という形で述べるのが無難です。知識という言葉を狭く捉えるのであれば、知識は人間だけが創るものということになりますし、広い意味で捉えるのであれば、人間以外も創るということになります。
しかし、どちらの立場なのかを明言しないことは一般的に二項対立の小論文では、印象が悪いです。したがって、どちらの立場なのか、名言する構成を取るほうがいいでしょう。
(2) 解答例
知識は人間だけが創るものではない。ただし、課題文で言及されるように、学問に準ずる知の体系を、構築する意思そのものが、知識であると定義する場合はこの限りではない。理由は二つある。一つ目の理由は、チンパンジーやオランウータンなどの霊長類は、言葉に準ずるメッセージを理解し、発信する能力があるためである。手話による意思疎通だが、複数の言葉を操ることができるようになる。第二の理由は、プログラムによる機械的な知の構築である。情報解析技術の向上により、人間の手だけでは実質不可能な情報を近年得られるようになりつつある。購買履歴や閲覧履歴、コメント内容などから、個人の嗜好性を割り出すことなどが近年可能となった。
(3) 理由は1つよりは2つ、2つよりは3つ
自分が何かを述べる際に、理由が1つにならないように気をつけましょう。その理由を失えば、(反論されれば)自分の主張が通らないようになるのでは、論理が脆弱になります。
私は、受験小論文の世界にピラミッドストラクチャーを持ちこみました。従来の小論文指導では、あまり重視されなかった論理構造の強化を2冊の小論文の本を上梓することで、お伝えしてきました。
特にこの手の、二項対立の問題では、威力を発揮しますので、注意してみてください。
【4】編集後記
今回出題された内容は、『慶應小論文合格BIBLE』に記載していた内容ですので、読んでいた人は、解きやすかったかもしれませんね。知識と知恵の違いについて、もうあなたは読んでいましたか?