このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。
2012年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
今日は慶應大学経済学部の過去問題の解説です。
(1) 概要
この年は、大変ユニークな問題でした。時々経済学部は、型にはまっていない問題を出題してきますね。
課題文は霜柱の成立に関する研究を解説した文章でした。
この研究の実験内容とその結果を、行われた順番で、320字以内でまとめるという問題です。
この問題は、無駄な部分をそぎ落としつつ、キビキビ文章を設計していかなければ、この文字数でまとめることができません。
(2) 問題A 解答例(1)
木箱の底に土を入れて、上にドライアイスを入れた箱を置いた。この結果、霜柱が成立した。発生条件を精査するために、土以外の、紅殻の粉、澱粉類、ガラスの粉で実験をした。その結果霜柱は成立しなかった。次に、さらに成立条件を見極めるため、赤土を八百度の高温で三時間灼熱して、有機物を焼飛ばし、残りをすりつぶして作った土で実験した。その結果霜柱は成立した。有機物の性質ではないことが判明した。次に微粒子の影響を確認するために、赤土を電解質で分散させ、細かい粒子と荒い粒子を分けて取り出し、それぞれについて実験し、霜柱の成立には微粒子の存在が成立には不可欠であることが判明した。赤土以外に砂ガラスでも、小凹凸を作ることで霜柱を作ることに成功した。
(2) 問題A 解答例(2)
霜柱の成立条件は、土の中に荒い粒子だけではなく、微粒子が存在することであり、第二の成立条件は、物質の表面(土を含むがガラス粉でもよい)に小凹凸があることであることが判明した。
(3) 重要な部分の見極め
今回の問題では、重要な部分と重要ではない部分の見極めが大切です。重要な部分かどうかは、設問で聞かれているかどうかが最大のポイントです。
小論文の答案では、聞かれていないことを書けば、すべて「余事記載」となります。
したがって、まずはこのポイントを最重視する必要があります。
(4) 何が実験であり、何がわかったことなのか
近年慶應大学の各学部で、研究についての課題文や設問がチラホラ目立ちます。
今回の問題では、それなりにボリュームのある文章の中で、何が実験であり何がその結果分かったことなのかについて、要点を絞って書く必要があります。
そのためには、何が実験の内容で、なにが分かったことなのかを把握しなければなりません。(そんなこと簡単だ)
と思う人も多いかもしれませんが、研究というのは、適当に研究内容を設計しても何も明らかにすることができません。
従って、研究を設計するときにはそれなりに論理的思考が必要になります。散々研究して論文を書いた末に、「あなたの研究ではこの仮説は検証できません。」
という結果になることはあまり珍しいことではありません。
逆に言えば、リサーチをデザインするということはそれなりにスキルや柔軟な発想力や論理思考が必要だということです。
(5) 仮説と検証
実験を行う際には、先に仮説を明確に持つことが大切です。
何らかの仮説を元にして、その仮説を検証するためには何をすればいいのかを考えます。
時には仰々しい研究ではなく、シンプルな実験で実態が明らかになっていくこともありますね。
・土でなければならないのか?
・土でできるならば、有機物が原因なのか?
・もしかして微粒子が原因なのか?
・微粒子が原因ならば、それさえ作れば他のものでもできるのではないか?
このような素朴な疑問から各実験が生まれています。
とてもシンプルな実験でこれらの疑問を検証していますね。
問題B 解答例
私は物理学の研究というものは、物理学の既知の知識とはまた別のもので、物理学上の知識をあまり知らずとも、ある場合には、立派な物理的の研究ができるものだろうという気持ちを持っていた。無邪気な純粋な興味が尊く、良い科学的研究をするにはそのような気持ちが一番大切なのである。
【2】ご案内
私が主催する塾では、「研究計画書の作り方」など、大学院受験生向けの基本的な授業も用意しています。今後慶應大学を受験する人は、学部の受験であっても、研究についてのアカデミックスキルがある程度ある方が、今回のように問題の要旨を理解しやすいことがあるかもしれません。
法学部などですら、研究力に準ずる力が見られた年もありました。
「慶應クラス」
⇒http://www.skilladviser.com/base/sixyouron/sr-2/keiou-crass.html
「慶應SFCクラス」
⇒http://www.skilladviser.com/base/sixyouron/sr-2/keiou-crass-sfc.html
【3】編集後記
私もまた久しぶりに新しい実験をしたくなってきました。
研究活動を通して得た知見を、皆さんに少しでもフィードバックしていくことができればと考えています。
ところで、今年も予想思考回路問題を作る予定です。