このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。
2011年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
今日は慶應大学経済学部の過去問題の解説です。
(1) 問題概要
例年通りの問題構成です。
設問A・・・説明
設問B・・・論述
(2) 点数を1点でも多く
経済学部の特徴は、合格最低点のすぐ下に、あとわずかで合格できる受験生がひしめいていることです。
受験生の実力が拮抗している側面が強いので、たかが小論文と考えず、1点でも多く取得していくことを真剣に考えることが大切です。
(3) 課題文の内容
課題文は大学教育をどのようにすべきかについての考察文となっています。
大学における教育を考える場合、大きく2つの考え方があると、述べられており、第一に教養教育を重視する考えがあり、第二に、職業教育を重視する考えがあると、説明されています。
文章の内容は、職業教育と教養教育を比較するものですね。
その後、教育については3つの次元があるとの見解(本田)が紹介されています。
第一・・・即時的意義
第二・・・市民的意義
第三・・・職業的意義
これらの3つの意義の中で、日本の大学教育では、とりわけ第三の職業的意義が軽視されてきたと本田は説きます。
その上で、職業的意義を高めるために、文系の定員を減らし、理系の学生数を増加させることを提案しています。
(4) 設問Bの考え方
今回メルマガでは、設問Bの考え方をご紹介します。
設問Bは、現代社会で起こっている解決すべき課題の具体例を挙げた上で、それに対処するために大学で学んだことがどのように役立つかを論じる問題です。
※注意点
課題文で述べられている、教養教育と職業教育の特徴に関連付けなさいと要求がありますので、この設問の要求に答えていくことが大切です。
ポイントは、出題者の問題意識と課題文の内容を汲み取ることです。
今回の問題では、現行の大学教育が批判されており、そのやり玉に挙げられているのが、経済学部になっています。
従って実質的には、課題文の内容は、経済学部そのものを批判する形に近いとも、受け取ることは可能です。
そこにうまく反論しつつも、課題文の中で述べられている本田氏の意見も、汲み取ることが大切です。
これらのポイントをス無視して、答案
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を設計すると、ズレた内容になります
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ので注意が必要です
(5) 設問A 解答例
筆者は現行の教育制度は、教養教育偏重であり、その結果として、学生が就職後に職業後に職務遂行や人間関係で困ることを問題視している。教養教育偏重路線論者の信念は、非定形的な判断力が上がるという信念に基づいているが若者の離職率は向上している。文系においては、営業・人事・総務・経営管理・経理等の職業教育を充実させ、職業教育が充実した理系の人員を増加させる方策を、筆者は提案している。
(5) 設問B 解答例
日本企業がいわゆる「マルドメ」と呼ばれる、国内完結型の経営を行っていることが近年問題視されつつある。韓国、中国企業が次々とグローバル展開していくさなか、日本企業は内向きであり、国内市場でのシェア獲得競争にやっきになりがちである。一般的には経済学と言えば、実務とは無縁であると考えられることもあるが、現実には違う。企業の役員会議で、どの国へ海外展開を行うかについての意思決定は、各国の経済状況と、今後の経済状態、カントリーリスク等を総合的に勘案しなければできないだろう。したがって、一見すれば無意味に思われる学問領域も、重要な意思決定の際には、経済学の特徴であるマクロの視野を意思決定者に与える。職業教育偏重になればこのような視点が生まれにくくなる。また国内での企業の意思決定も同様に、海外の経済の影響力を受けるものである。したがって仕入れ先の選定や、人口動態からの経済予測など、国内の経営においても経済学は有用である。
以上、国内完結型の経営問題から脱却するために、大学で学ぶ経済学が有用であると私は考える。