このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
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2010年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
今日は慶應大学経済学部の過去問題の解説です。
【1】概要
(1) テーマ
2010年の問題では、二酸化硫黄の排出許容市場についての問題が出題されました。
この手の問題が出題されると、特にネタを用意しておいて、本試験でネタを書くというスタイルは、役立ちませんので、しっかりと自分の頭で考えていくことが大切です。
(2) 設問
2010年は特に論理思考が要求される問題が出題されています。
排出許容量市場についての、課題文の一部がスッポリと抜かれており、前後の文脈から、どのような文章が入ることが望ましいのかということを考察させる問題になっています。
前後の文章をよく読み、論理関係を把握することが大切です。
この問題では主に二つの事が試されます。
(1)文章が理解できたか
(2)論理的に考えることができるか
(3) 考え方
スッポリと空欄がある段落の最初を見ると、「排出許容量市場が達成できることを政府が達成できないのは何故だろうか」という文章があります。
つまり、この段落では、この原因についての考察文が来るわけですね。
従って前後の論理関係を把握し、内容を理解した上で、文脈上、理由(原因)がくるように、ここに文章を設計すれば、問題を解くことができます。
その際に複数の原因がある場合、複数の原因について漏れ無く取り上げて、言及することが大切です。
(4) 解答例
排出許容量市場ができることを政府ができない理由は大きく二点である。一つ目の理由は汚染削減コストに関する官僚と企業の間での情報の差である。官僚は企業が保有する汚染対策の可能性を示す根拠となる数値を正確に把握することは困難である。各企業の報告を信用するしかなく、数値的裏付けを組織的に把握することは困難を極める。
第二の理由は、企業側の動機づけである。汚染削減コストを正確に伝えることで、企業はより収益を増加させやすくなる。指令統制下では、企業は排出量を削減できない理由を並べ、不正確に伝えることで収益を増加させることができた。一方で、排出量取引市場では、自社の必要に応じた取引の対象となる排出量分だけを購入、売却することで、無駄なコストを削減し、収益をあげることができるインセンティブが存在するのである。
【2】ポイント
(1) 背景を理解する
細かい解答方法よりも、大事なことは慶應大学経済学部が、看板学部であり経済界や政界で、リーダーとして活躍する人材を輩出していくという考えがあることを把握しておくことです。
なぜこのような問題を作ってきたのかが分からなければ、どのように力を見せていけばいいのかが分からなくなります。
単に設問で聞かれたことに答えるのではなく、どのレベルのことをなぜ問われており、何を試す試験なのかを意識しましょう。
(2) トリッキーな出題も多い
経済学部の問題は、環境情報学部と同じように、型にはまった解き方がなかなかできない問題が多いです。
そのような場合、学部の特性をしっかりと把握した上で、出題意図を考えることが大切です。
論理思考や、クリティカルシンキング等の、考える力があれば、対処しやすくなります。