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2004年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2004年度慶應大学経済学部小論文問題解説です。
【1】問題1
(1) 設問の要求
-------------ここから-------------
五泉市、見附市のニット外衣産業で生じた変化を表-3から読み取り、その変化について、表-1,表-2から得られる情報を活かして、160字以内で説明しなさい。
-------------ここまで-------------
それでは、以下に表の内容を端的にご紹介します。
(2) 表の内容(概要)
表の内容が、要はどうなっているのかについて、端的にまとめていくと以下のようになっています。
【表1】
◆表a.1985~1993年
(要は・・・)
国内のニット製品製造事業所が年々増加している。
◆表b.1995年~2000年
(要は・・・)
国内のニット製品製造事業所が年々減少している。
【表2】
◆表a.1988年~1993年
(要は・・・)
ニット製品の輸入額が年々増加傾向であり、28億ドル程度~48億ドル
◆表b.1993年~2000年
(要は・・・)
ニット製品の輸入額が年々増加傾向であり、53億ドル程度~88億ドル程度
こんな形になっています。
ということは、、、、
表1は、要するにどういうことかと言いますと、
1985年~1993年にかけて、概ねニット製品製造業の事業者数が増加傾向にある一方で、1995年~2000年については、概ね事業者数が減少傾向である。
こういうことが言えます。
表2については、要するにどういうことかと言いますと、
1988-1993年よりも、大幅に1993-2000の方がニット製品の輸入量が増加している。
こういうことが言えます。
それで、設問で問われていたのは、何かと言いますと、、、
-------------ここから-------------
五泉市、見附市のニット外衣産業で生じた変化を表-3から読み取り、その変化について、表-1,表-2から得られる情報を活かして、160字以内で説明しなさい。
-------------ここまで-------------
こういうことですから、
ここまでに紹介したことを書けばよいということになります。
それでは、解答例をご紹介します。
(3) 解答例
1985年~1993年にかけて、概ねニッ
ト製品製造業の事業者数が増加傾向に
ある一方で、1995年~2000年について
は、概ね事業者数が減少傾向である。
また、1988~1993年よりも、大幅に199
3~2000の方がニット製品の輸入量が増
加している。従って、当該製品の輸入
量が増加し、国内の産業が衰退傾向に
あると言える。
【2】問題2
(1) 設問の要求概要
表と課題文で示されているニット外衣メーカーの企画・生産・販売体制の再編は、日本国内のニット製品の消費者に対してどのような利益を生じさせるかを説明しなさい。
こういう問題が出ています。
それでは、課題文の要約をご紹介します。
(2) 課題文の要約
世界経済のグローバル化に伴い、日本の中小企業も、自ら活路を切り開いていく持続的な経営の見直しが期待されている。
世界経済のグローバル化に応える形で、国内のいくつかの地域では、すでに中小企業による新たな試みが始まっている。例えば、新潟県五泉市、見附市のニット外衣産業の中小企業経営者達は、産業集積の優位性をこれまでとは異なる形で活用し、国際競走力の復活に取り組んでいる。
本稿では、五泉市、見附市の取り組みを概観する。
五泉市、見附市の多くのニット外衣メーカーは長年大都市の大手企業がデザインした商品を、その指示通りに生産すればよいという下請体制の下にあった。そのためニット外衣メーカーとそれを支える再下請企業や家庭内職者は、生産技術や熟練技能においては習熟した集団ではあったが、販売力、新商品企画力やデザイン力の面ではほとんど未開発の状態であった。このような状態の中、表-1から表-3に示したような変化が生じ、これらニット外衣メーカーは新たな対応を迫られることになった。対応の方向性は以下の4点である。
1.取引関係にある大企業に、独自のデザイン、新素材の使用、などを提案し、独自の新商品を開発していく。
2.高級ファッション製品など、変化の激しい市場のニーズに迅速に対応できる生産体制を編成し、需要を確保し、在庫規模の適正化を図る。
3.自社ブランド商品を開発し、直接小売市場に供給することで、消費者ニーズをより適切に把握する。
4.生産工程の国際分業を始める。
ここで例として挙げたニット外衣産業は、日本経済が国際経済の一員として、より積極的に貢献する方途を探るうえで、示唆に富むものである。
(3) 考え方
課題文の以下の部分に注目しましょう。
-------------ここから-------------
1.取引関係にある大企業に、独自のデザイン、新素材の使用、などを提案し、独自の新商品を開発していく。
2.高級ファッション製品など、変化の激しい市場のニーズに迅速に対応できる生産体制を編成し、需要を確保し、在庫規模の適正化を図る。
3.自社ブランド商品を開発し、直接小売市場に供給することで、消費者ニーズをより適切に把握する。
4.生産工程の国際分業を始める。
-------------ここまで-------------
ここから、何が起こるのかを論理的に考えていくことが大切です。
経済学部では、この手の推論を試す問題が多いです。
課題文の中に書かれていることを抜き出すことで対応できる問題もあれば、発展的な推論能力を試されることもあると覚えておきましょう。
(4) 解答例
五泉市、見附市のニット外衣メーカ
の企画、生産、販売体制の再編は、消
費者に以下のような利益を与えると考
えられる。第一に、斬新なデザインの
商品を享受できる利益がある。第二
に、低価格で高品質の商品を手に入れ
る利益がある。国外で安価に製造でき
る工程を済ませれば、製品の品質を落
とさず、商品を供給できる。第三に、
消費者ニーズに合致した商品を購入す
ることができる利益がある。市場から
の反応を見れば、製造業者もニーズを
把握しやすい。第四に、高級ファッシ
ョンなど、変化の激しい流行を迅速に
取り入れる利益がある。最新のファッ
ション情報を製品に活かせば、先端的
なデザインの製品を消費者は享受でき
る。
【3】問題3
(1) 設問の要求概要
課題文は、五泉市、見附市で現在、お
よび将来働く人へのメッセージと受け
とめることができる。この観点から、
そこで雇用され働く人には今後どの
ようなことが求められるかを述べなさ
い。さらにそれらのことを実現してい
くことと、世界経済のグローバル化と
の間にはどのようなつながりがあるか
を述べなさい。
(2) 考え方
今回の問題には、2つの設問の要求がありますので、これらに順番に答えていきましょう。
わざわざ「メッセージ」なんだと、設問に書いてくれていますので、仮にメッセージだとすれば、どのようなメッセージなのか?
このように考えれば、妥当な方向性を考えやすくなります。
なるべく自分の意見は一言化するようにしましょう。
要はなんなのかを述べ、その後に、各論的に自分の意見を展開する構成が今回はやりやすいでしょう。
総論⇒各論
という流れを意識してみましょう。
今回の課題文では、要は中国などとの競争が激化することで、国内の特定の産業が衰退していることが分かります。
このような動きは全世界的に進んでいます。
従って、特定の産業であれば安全などということは、原則として無く、どのような分野であっても、世界的に競争が激化していく中で、どのような役割を自社が果たすことができるのかということが厳しく問われはじめているのですね。
このような動きは、特定の産業だけではありません。国家も同様です。
世界の中で、この国は何で食べていくのか、
世界の中で、この会社は何をやっていくのか、
こういう発想が不可欠な時代になりつつあります。
(3) 解答例
国内のニット製造産業で働く人々
は、今後どのようなことが求められる
だろうか。私は厳しい国際競争に打ち
勝ち、知恵と工夫で自社の生存領域を
切り開いていくことが求められると考える。
国内の製造業者は、競争に打ち勝つ
ために、独自の付加価値を製品に与
え、他の製品にはない独自性、USPな
どを製品に加えていくことや、製造工
程の垂直統合が要求される。経済のグ
ローバル化は、競争が激化することと
同義である。例えば、今日では、大手
流通事業者である企業が、製造、小売
店に価格交渉するなど、大きな影響力
を行使することがある。市場の破壊と
イノベーションがどのような時期に起
こっても不思議ではない予測不可能な
環境変化のリスクが近年高まりつつあ
り、被雇用者及び雇用者はこれらのリ
スクに備える必要がある。従って、上
記のように、グローバル化は事業環境
変化及び企業経営の変化の度合いと相
関関係的な関係にあると考えられる。