慶應大学経済学部 2000年小論文過去問題の解説

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2000年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説

 

こんにちは。
牛山です。

 

本日は、2000年度慶應大学経済学部小論文問題解説です。

 

【1】問題 Ⅰ

 

(1) 課題文概要

今回の課題文は、歴史認識についての文章が出題されています。

 

端的にまとめると、以下のような内容の文章です。

 

----------ここから----------
20世紀は、二つの世界大戦があり、野蛮の世紀であったと言うことができる。20世紀の歴史家は、「事実をして語らしめる」という19世紀の歴史実証主義の立場に立つことができなくなっている。歴史的事実には、歴史家の解釈や主観が強く入り込んでいる。しかし、歴史的事実の重要性は変わらず、むしろ「証拠」こそが解釈の妥当性を判断する根拠である。一方で歴史的事実が取捨選択されることを強調して考える歴史家も出てきた。このような歴史家は、言語的な文脈こそが歴史的事実を「構成する」ということになる。無限の解釈が事実の取捨選択によって可能であるという極論まであらわれてきた。
---------ここまで-----------

 

こんな文章が出題されていますね。

 

問題は、「現代の歴史学上の対立」とは、歴史叙述をめぐるどのような対立なのか、80字以上100字以内で述べなさい。

 

(2) 解き方

 

 このような問題は経済学部によくあるのですが、事実上の抜出し問題です。

 

 最低限の理解があるかを試す問題ですので、該当箇所を抜出し、整理することで、文章を設計します。

 

 

(3)解答例

 

 歴史を認識する際に、証拠こそが、 解釈の妥当性を判断する根拠になると いう歴史実証主義的立場と、言語によ って書かれた「テクスト」こそが、歴 史的事実を「構成する」という解釈中 心の立場の対立。

 

【2】問題Ⅱ

 

(1) 問題概要

 

 1931年の満州事変にはじまり、1945年 の終戦にいたるまで、日本は一連の 軍事的な活動をおこなった。この軍事 的な活動が、日本がアジア諸国に対し ておこなった「侵略戦争」であったと いう見解と、欧米列強の経済的圧力に 対する「自衛戦争」であったという 見解の二つの解釈があるとすれば、 こうした解釈の対立は<なぜ>生ずる のか。課題文の内容を踏まえて、歴史 解釈上の問題として、述べなさい。

 

(160字以上、200字以内)

 

(2) 考え方

 

この問題は、課題文の理解力を試す問題です。

 

問われているのは、解釈の対立がなぜ起こるのかであり、原因は何かではありません。

 

そもそも・・・・数学選択者が圧倒的に不利になるような問題が出るはずもなく、このあたりは察することが肝心です。

 

もし数学選択者が不利になる問題を作れば、生徒の能力を見ることができなくなりますからね。

 

似たような問題が総合政策学部でも出題されたことがありますので、私が作った解答例をここでご紹介しておきます。

 

理解が深まると思います。

 

【総合政策学部解答例】
----------ここから----------
 資料3と資料4では、大きく二つの 違いがある。第一の違いはアヘン戦争 への経緯に対する解釈である。資料3 では、イギリスは輸入超過に苦しんで いたことが指摘されており、イギリス は、清国のアヘン吸引の習慣に目をつ けて、三角貿易を案出したということ になっている。一方で資料4では (1)この時期に銀の世界市場への供 給量が減少した。(2)イギリスでは 紅茶を飲む習慣が一般化し、中国茶の 需要が高まっていた。その結果とし て、イギリスは、銀を支払わず、貿易 赤字を補てんする方法を考案したとい うことになっている。資料3と4で は、このように、経緯、及び原因に対 する解釈が違う。
 第二の違いは日清戦争の発端につい ての解釈である。資料3では、東学党 の乱が原因で、日清両国は出兵して衝 突する事態に発展したと解釈してい る。一方で資料4では、以下のように 経緯を解釈している。(1)東学党の 乱が契機となり、日清両国は鎮圧のた めに出兵した。(2)両軍の到着時に は乱は収束しており、朝鮮政府は撤兵 を求めた。(3)しかし、日清両軍は 撤兵せず、日本は武力を背景にして朝 鮮に政治改革案を示して受諾するよう に求めて対立した。(4)この結果、 日清両国が開戦する事態となった。
 上記のように、資料3及び資料4で は、総じて事実の量に開きがあり、そ の結果として結果に至る解釈の精緻さ に違いがある。
 なぜこのような違いが生まれたのだ ろうか。事実を分析し、その結果生ま れる解釈は、事実を整理要約する際に 何を重視するかによって、異なる性質 を有する。事実をどのようにグルーピ ング化し、どのように論理に飛躍が無 いようにまとめるかにより、得られる 解釈は異なる。このような原理原則が 存在する為、各資料間で異なる解釈が 導かれていると考えられる。

---------ここまで-----------

 

それでは、解答例を見てみましょう。

 

 

(3) 解答例

 

 歴史の解釈に違いが生じる理由は、歴史の事実の内、何を重視し、歴史を語るかにより、文脈上の違いが生まれるためであると考えられる。歴史を語るということは、言語を用いた行為であり、記述された文脈が歴史的事実を「構成する」ということになる。特定の解釈は、事実を拠り所として作られるが、事実の取捨選択(グルーピング行為)によって事実上無限の解釈が可能となるため、歴史解釈に違いが生まれる。

 

【3】 問題Ⅲ

 

(1) 問題概要

 

20世紀は、ホロコースト(ナチスに よるユダヤ人虐殺)、南京虐殺、 原爆投下、ポル・ポト政権下の虐殺 などが行われた「野蛮な」世紀として 後世の人々に記憶されるかもしれな い。こうした出来事を理解し、叙述 するときに、課題文で論じられている 歴史的事実と解釈の問題にどう向き あったらいいのだろうか。あなたの 見解を述べなさい。

 

(2) 考え方

 

多様な解釈ができることにより、国際関係上の軋轢が生まれていることに注目する必要があります。

 

首相の靖国参拝などが、他国を刺激しているのも、A級戦犯を祀っているためです。

 

問題出題の意図には、このような問題意識があることを踏まえて、問題について考えていく方がいいでしょう。

 

解答例に説得力を出すためには、具体的な成功事例があるにこしたことはありません。

 

日本と中国がかつて国交を正常化していた時には、どのような歴史認識で合意形成ができていたのでしょうか。

 

領土問題も、当時は一時棚上げしており、今のように激しくお互いの国が一触即発のようににらみあっていませんでした。

 

当時は、戦争行為は、A級戦犯の暴走であったとの解釈が一定程度行われており、双方が納得していたところがありました。

 

しかし、首相がそのA級戦犯をお参りに行くことで、「話が違う」ということになり、他国を刺激しているわけですね。

 

当然靖国神社には、神風特攻隊などの国のために命を投げ出した当時の若者が祀られています。このあたりが話をややこしくしています。

 

また、一度死んでしまえば、仏になるので・・・

 

という日本の死生観も、他国にはあまり伝わりません。文化的な違いも背景にあり、問題がややこしくなっています。

 

今回の問題では、自分の考えを書くことを求められていますので、なんらかの理由や事実によって、自分の仮説を支える必要があります。

 

注目ポイントとして私が今回お勧めするのは、「成功事例」です。

 

あとは、設問の要求にあわせて、一定程度新規性のあるアイディア、意見等を加えて、求められていることに答えていけばいいでしょう。

 

それでは、もう一度問題を確認してみましょう。

 

----------ここから----------
20世紀は、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)、南京虐殺、原爆投下、ポル・ポト政権下の虐殺などが行われた「野蛮な」世紀として後世の人々に記憶されるかもしれない。こうした出来事を理解し、叙述するときに、課題文で論じられている歴史的事実と解釈の問題にどう向きあったらいいのだろうか。あなたの見解を述べなさい。
---------ここまで-----------

 

あなたの意見を考えてみましょう。

 

 

考えてみましたか?

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

(3) 解答例

 私たちは歴史的事実と解釈の問題に どのように対処すべきだろうか。私 は、政治的には特定の国家に有利な解 釈を減らし、政治以外では、詳細な事 実の記録と複数の解釈を重視したい。  日本は原爆を投下された際、スイス 政府を通じて、数十万人の民間人を瞬 時に虐殺した爆撃行為について国際法 に基づき米国を非難した。しかし、一 方で当時日本政府は14歳程度の若者を 強制的に兵士として使用し、さらに神 風特攻隊を編成していた。このように 物事の是非は特定の「解釈」からも一 概には論じられない。日米双方の立場 で重視する事実が違うためである。田 中角栄政権時、中国との国交改善のた め、A級戦犯の行為が戦争であったと して、中国側の感情に配慮する交渉が あったとされている。領土問題も当時 は密約があり、一時解決していた。日 中関係は改善に向かった歴史がある。  歴史解釈は過去の過ちを繰り返さな いためにある。従ってかつての成功事 例に習い、政策上の合意形成を主とす る「双方が合意できる解釈」を政治の シーンでは選択し、政治的叙述以外の シーンでは、自国の立場を重視しすぎ ない事実の選択と詳細な事実の量が重 要となるだろう。

 

【4】編集後記

 

(1) 総合政策学部だったら?

本日の問題ですが、仮に総合政策学部で出題されていれば、こんな解答もありです。

 

(1) 解答例

 

 私たちは歴史的事実と解釈の問題に どのように対処すべきだろうか。私 は、より多くの事実を残し、整理する ことで、多様な解釈が可能な仕組みを 構築することを提案したい。その上 で、政治的にはかつて田中角栄首相が 中国との国交を改善した成功事例のよ うに、政策上の合意形成を主とする考 え方を重視することを提案する。
 日本は原爆を投下された際、スイス 政府を通じて、数十万人の民間人を瞬 時に虐殺した爆撃行為について国際法 に基づき米国を非難した。しかし、一 方で当時日本政府は14歳程度の若者を 強制的に兵士として使用し、さらに神 風特攻隊を編成していた。このように 物事の是非は特定の解釈からも一概に は論じられない。田中角栄政権時、中 国との国交改善のため、A級戦犯の行 為が戦争であったとして、中国側の感 情に配慮する交渉があったとされてい る。領土問題も当時は密約があり、一 時解決していた。
 歴史解釈は過去の過ちを繰り返さな いためにある。従ってかつての成功事 例に習い、政策上の合意形成を主とす る解釈を外交では優先し、同時にウェ ブ上で無限の解釈をシステム的に整理 することを提案する。

 

学部によって求められることが違います。

 

全部同じと考えず、趣旨にあった内容や、出題意図に沿った解答を作ることを考えてみましょう。

 

 

 

 

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