慶應大学経済学部 1999年小論文過去問題の解説

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1999年度慶應大学経済学部 小論文過去問題解説

 

こんにちは。
牛山です。

 

本日は、1999年度慶應大学経済学部小論文問題解説です。

 

【1】問題 Ⅰ

 

(1) 前提

この年の問題は、αとβの二つの課題文が出題されます。

 

αとか、βというと、なんだか分かりにくいかもしれませんが、要は、二つ課題文が出ているだけです。

 

αは、「精神の危機」というタイトルの書籍からの文章が抜粋されています。

 

βは、「結婚と道徳」というタイトルの書籍からの文章が抜粋されています。

 

今回の問題では、どちらか好きな方一方を選び、文章を読み、問題に答えることを求められています。

 

 

(2) 設問の要求

 

以下の文章は、フランスの文人で思想家でもあるポール・ヴァレリーが1919年に書いたエッセイ「精神の危機」から抜粋してまとめなおしたものです。20世紀末の現代から見て、あなたはこの文章が提起する問題をどのように考えますか。この文章の内容に関連する論点をみつけ、それについて800字以内であなたの見解を自由に述べなさい。

 

なお、自分の論述の要旨を、解答用紙の指定された欄に80字以内で書くこと。

 

(3) 課題文の概要

 

それでは、以下に課題文の概要を紹介します。

 

 文化、知性、傑作といった概念は、我々にとってはヨーロッパという概念と昔から結びついていて、それもあまりに昔なのでめったにそこまでさかのぼって考えないほどです。
 世界の他の部分にも素晴らしい文明一流の詩人、建築家、さらには学者さえ輩出しました。しかし、世界のいかなる部分も、もっとも強い吸収力と結びついたもっとも強い拡散力というこの奇妙な物理的特性をもつことはありませんでした。すべてがヨーロッパに来り、すべてがヨーロッパから来たのです。
 ヨーロッパはあらゆる分野においてその優位を保ってゆくのでしょうか。
 世界の地域には、地域間等級のようなものがあります。特定の人口密度、人間の質、自然の富、灌漑の程度などです。
 歴史のどの瞬間も、次の瞬間はこの与えられた不平等性によって決定されます。
 ヨーロッパの優位性の決定因は、人間の質にあります。貪欲な活動力、利害を離れた熱烈な好奇心、想像力と論理的厳密さの調和、悲観とはちがう一種の懐疑主義、諦念とは違う神秘主義などが、ヨーロッパの「こころ」のとくに際立った性格であることが見てとれるのです。
 しかし、こうした人間の質の所産として生まれた我々の近代科学は、一旦物質への応用を通じて試練を受け、その報酬を得た後は、権力と支配の手段、富の刺激剤、地上の資本を生み出す道具と化し、「自己目的」であり芸術的活動であることをやめてしまいます。消費価値であった知が交換価値となります。知の有用性が、知を少数の愛好家でなく万人に望まれる食品用にしてしまうのです。
 この食品用の知は、世界の諸地域間に存在していた不平等性―ヨーロッパの優位を支えていた不平等性―は消えさろうとしています。
 ヨーロッパの精神は――少なくともそこに含まれるもっとも貴重なものは――余すところなく拡散しうるものでしょうか?地球の開発、技術の平等化、民主化といった現象は、ヨーロッパの特権喪失を予想させるものですが、これを運命の絶対的な決定と考えなければならないのでしょうか?それとも我々は、事物の側が反乱をたくらむという不穏な趨勢に対抗するなんらかの自由をもっているのでしょうか。

 

【2】考え方

 

課題文の内容自体が、かなりの程度あいまいなものになっています。

 

出典を見ると、「精神の危機」となっていますから、この抜粋部分は、あいまいな内容ですが、全体のテーマは「精神の危機」だと分かります。

 

設問では、この文章の内容に関連する論点をみつけ、それについて論じることを求められています。

 

従って課題文の中で著者が大切にしている問題意識から、問題設定をしていくのが無難です。

 

課題文全体の流れを見れば、著者がヨーロッパの精神を重視し、一方で近代科学や合理主義的な経済を批判しているのが見て取れます。

 

この流れの最後の落としどころとして著者が述べるのは次のようなことです。

 

----------ここから----------
ヨーロッパの精神は――少なくともそこに含まれるもっとも貴重なものは――余すところなく拡散しうるものでしょうか?
---------ここまで-----------

 

ヨーロッパの精神ではなく、近代科学や、合理化された経済システムの方ばかりが世界に広がっていることについても、大きな問題意識を著者は持っています。

 

この点に気を付けて、この論点について問題を考察してみましょう。

 

いつものように、3分程度でも、10秒程度でもいいので、考えてみましょう。

 

 

考えてみたでしょうか。

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

 

【3】解答例

 

 歴史上ヨーロッパは、世界でもっとも強い吸収力と結びついた、もっとも強い拡散力を持つ、文化、知性の中核的な地域であった。近代科学の発展は、消費価値であった知が交換価値となり、知の有用性が知そのものを大衆化させ、知が万人のための知へと堕す結果となった。こうして地球上における地域間の等級は主に計測可能なもので決定づけられるようになってしまった。果たしてヨーロッパ精神-少なくともそこに含まれるもっとも重要なもの-は余すところなく拡散しうるものだろうか。

 私は、ヨーロッパ精神のもっとも重要な部分でさえも、余すところなく拡散しうると考える。その最大の理由は、交換価値のある知だけではなく、消費価値のある知についても、分かりやすく大衆に伝播されるインフラが世界に整ったからである。

 ノーブレスオブリージュと呼ばれる言葉がある。この言葉は、特権階級が持つ責務を象徴する言葉である。ヨーロッパの精神が根付くこの言葉の思想が今世界に広がっているのではないか。著者が述べるように、この数百年間で、交換価値を持つ知の象徴とも言える近代科学の発展と共に、世界各国で経済成長が実現した。合理主義的な経済観に基づいた政策により、世界各国で多くの経済的新興国が誕生した。我が国も例外ではなく、かつてエコノミックアニマルなどと揶揄されている。合理化された経済環境下では、貧富の格差が拡大していったが、トリクルダウンの経済理論や、自由主義的な価値観を大義名分として、社会的弱者の声は無視され続けてきたのである。このような合理主義的な経済観は近年限界を迎えようとしつつある。膨れすぎた金融資本は、底なしの人間の欲望の象徴であり、世界中で金余り現象が起こっている一方で、限界まで格差は世界的に拡大した。増えすぎた人口が自然と減少するように、今この自由主義経済に疑問の目が向けられつつある。フランスの経済学者トマ・ピケティーが説く「不平等な経済」に関する書籍は世界中で大ベストセラーとなった。この事例はまさしく著者が述べる「ヨーロッパの精神」が世界に普及した事例と言える。

 以上、私はヨーロッパ精神のもっとも重要なものでさえ世界に拡散しうると考える。

 

【4】要旨(第二の設問の要求)

 

(1) 設問の要求

 

第二の設問の要求は、80文字以内で自分の論述の要旨をまとめよというものです。

 

主張の部分を書きましょう。

 

 

(3) 解答例

 私は、ヨーロッパ精神のもっとも重 要な部分でさえも、余すところなく世 界に拡散しうると考える。

 

 

 

 

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