このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
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2008年度慶應大学法学部 小論文過去問題解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2008年度 慶應大学法学部小論文問題解説です。
【1】問題前半
(1) 解説
今回の問題は、要約後にあなたの考えを述べなさいという問題でした。
設問には以下のようなことが書かれていますね。
知識人と一般の人の関わりについて400字程度で要約しなさい。
要約問題ですから、普通に要約していけばいいのですが、注意点は、「知識人と一般の人の関わり」について、要約するという点です。
要約のやり方は、「理解速読」と私が名付けている読み方に準ずる形でやっていけば、やりやすいでしょう。
速読暗記勉強法という本で、ご紹介している読書方法です。
各段落のテーマに注目し、その段落のテーマに合致する述部を見つけていきます。
まとめると以下のようになります。
(2) 解答例
明治末期以降、「知識」・「思想」
というものが、通常の人々が日々営ん
でいる現実の生活から遊離したもので
あるというイメージが広がった。この
ような「知識」・「思想」と現実生活
との距離をどう評価するかで、「知識
人」に対しても二つの異なる考え方が
生まれた。一方では、知識人は、知識
・思想を伝達す有意義な存在であると
いう立場であり、他方では、知識人の
有する知識は、非知識人の日常に関わ
らないため、非有意義なものであると
する立場である。知識・思想の現実世
界からの遊離は、彼らの知識の有効性
への懐疑を呼び起こし、知識人への批
判や知識人のコンプレックスを形作る
こととなった。1)知識人への評価を
めぐる相矛盾する立場にどのような折
り合いをつけるか。2)知識・思想の
しかるべき望ましい在り方とはどのよ
うなものか。3)知識人と大衆との関
係はどうあるべきかという関心こそ
が、知識人論の共通のテーマとなって
いた。
【2】設問後半
(1) 問題の理解
問題の後半では以下のようなことが問われています。
次に、この点について、現代日本社会に生きるあなた自身の観点から自由に論じなさい。
この点というのは、「知識人と一般の人の関わり」のことです。
ですから、「知識人と一般の人の関わり」について、課題文の中でどうだと言われているのか
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について、読み取らなければなりません。
では課題文の中では、どのようなことが主張されているのでしょうか。
細かな論点は課題文の中でいくつも取り上げられています。
しかしながら、中心的な論点は、
「知識人は有意義なのか、そうではないのか」という部分です。
大枠はここであり、その他の論点は些末なものです。
従って、この中心的な論点について、論じていくことを考えます。
(2) 解答例 後半
以上が、明治末期以降の知識人と一
般の人々との関わりである。私は上記
のように浮上した多様な論点の内、議
論の目的として知識人の持つ知識は、
一般の人々にとって有用かどうかとい
う点に絞って論じたい。この論点は知
識人論の中核的な論点であるためであ
る。
はたして、知識人の知識は有益なも
のではないのだろうか。知識人の知識
は極めて有意義なものであると私は考
える。
そもそも、この知識人論の議論の発
端は、一般の人々の生活と知識人の知
識の遊離感であるが、この遊離と述べ
る現象は認識論に過ぎない。遊離して
いるというのは、個人の相対的な感覚
であり、絶対的な真実ではない。現実
には、科学技術、生産材、流通、政
治、法律、消費材等、庶民の生活に直
接的にかかわるあらゆる公共、非公共
サービスは、知識人の知識があって初
めて可能になっているものである。一
般の知識が無い人々には、知識人の持
っている知識によって、生活が豊かに
なり、多くの便益を享受できる状態を
高度な知識のたまものであることを認
識できていないだけであると言えよ
う。低価格で食材を購入できるのも、
老後の福祉サービスも知識人が作り出
している。私がこのように考える二つ
目の理由は本文にもある通り、天下国
家の次元では知識人が持っている知識
の有用性は疑いようもないためであ
る。したがって知識人の知識は直接的
便益ではなく、間接的な便益を一般の
人々に与えていると言える。3点目の
知識人の知識が有意義だと考える理由
は、知識を保有することを放棄しつつ
も、高度な社会サービスの便益を享受
できる人々の労力を知識人が肩代わり
しているからである。したがって知識
を得ない人々の負担を減らす役割を知
識人は高度に社会化が進んだ社会にお
いて果たしていると言える。
以上、遊離感の相対的認識、天下国
家の次元での有益性、一般の人々の知
識獲得負担の肩代わりという3点の理
由から、知識人の知識の有用性は疑い
ようもないものである。
【3】編集後記
当塾では、他の塾のように解答例を外注して作成してもらっていることは一切ありません。ご安心ください。