慶應大学 法学部 2000年小論文過去問題の解説

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2000年度慶應大学法学部 小論文過去問題解説

 

こんにちは。
牛山です。

 

本日は、2000年度 慶應大学法学部小論文問題解説です。

 

【1】問題概要

 

(1) 課題文概要


今回の問題は、以下のような課題文が出題されています。少し要約してみました。

 現在日本の社会情勢の多くの混乱は 筆者の見解によれば、父性的な倫理感 と母性的な倫理観の相克のなかで、 一般の人々がそのいずれに準拠してよ いか判断が下せぬこと、また、混乱の 原因を他に求めるために問題の本質が 見失われることによるところが大きい と考えられる。母性原理に基づく倫理 観は、母の膝という場の中に存在する 子供たちの絶対的平等に価値をおくも のである。それは換言すれば、与えら れた「場」の平衡状態の維持に最も 高い倫理性を与えるものである。これ を場の倫理とでも名付けるならば、 父性原理に基づくものは「個の倫理」 と呼ぶべきであろう。それは、個人の 欲求の充足、個人の成長に高い価値を 与えるものである。
 例えば交通事故の場合、加害者が 自分の非を認め、見まいに行くと、 二人の間に「場」が形成される。被害 者としては、その場の平衡状態をあま りにも危うくするような補償金などを 要求できなくなる。この感情は我々 日本人としては納得できるが西洋人に は納得できない。ところが「場」に いない場合は、この限りではない。場 に属するか否かが決定的な要因となる のである。場の倫理の根本は、場に属 するか否かが倫理的判断の基礎になっ ている。この場の平衡状態を保つ方策 として、場の中の成員に完全な順序づ けを行い、順序が上のものから発言す るというものがある。上位のものは 場全体の平衡状態の維持という責任上 何らかの決定を下していることが多 い。このため日本では全員が被害者 意識に苦しむことになる。下位の者は 上位のものの権力による被害を嘆き、 上位のものは、下位の若者達の自己 中心性を嘆き、共に被害者意識を強く するが、実のところは、日本ではすべ てのものが場の力の被害者なのであ る。
 シンナーの吸引をしていた少年たち に、その体験を聞いてみると、彼らは 一様に観音様の幻覚を見、その幻覚の 中での何とも言えぬ仲間としての一体 感に陶酔していたという。求めている 体験の本質は母性への回帰であり、わ が国の文化・社会を古くから支えてい る原理そのものなのである。
 これに類することは、所々に見られ 日本における反体制の試みが簡単に 挫折する一因ともなっている。このよ うなことが生じるのは、結局日本人が なかなか母性原理から抜け出せず、父 性原理に基づく自我を確立し得ていな いためと考えられる。

 

(2) 問題(設問の要求)

 

次の文章を読んで、特定の社会問題に 焦点をあわせながら、あるいはあなた 自身の経験に基づきながら、自らの 考えを自由に述べなさい。

 

(3) 考え方

 

今回の問題は、著者が述べる理論的考察と社会問題を関連付け、何が言えるのかを問うものになっています。

 

従って、まずは著者の理論がどのように実社会で機能しているのかを考察することが大切です。

 

ただし、著者が述べる意見は、漠然としているため、現実には考察していけば、「あてはまる」し、「あてはまらない」ということになるでしょう。

 

状況によって、「そのとおり」にもなれば「間違っている」という形にもなります。

 

ただし、ここで求められているのは、厳密な言葉の定義や真偽ではなく、受験生であるあなたがどの程度の力を有しているかを見せることです。

 

従って、まずは課題文の内容と現実社会を照らしあわせることができる「応用的思考力」があることを示すにはどうすればいいのか?と考えることも、大切です。

 

自分の考えが正しいのだ!真実を述べて、正解をのべてやる!と熱くならないようにしましょう。

 

あくまでも自分の考えを仮説として扱い、冷静にたんたんと見解を述べていくスタンスが大切です。

 

述べている内容が一定程度論理性を持ち、設問で求められている要求に沿う内容にすることを考えましょう。

 

それでは、自分で一度考えてみましょう。

 

-------------ここから-------------
次の文章を読んで、特定の社会問題に焦点をあわせながら、あるいはあなた自身の経験に基づきながら、自らの考えを自由に述べなさい。
-------------ここまで-------------

どうでしょうか。

 

考えてみたでしょうか。

 

もし考えることができない場合、考え方を紹介した「小論文技術習得講義」や「小論文の教科書」を読んでみましょう。

 

発想の展開方法などを詳しく解説しています。

 

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

【2】解答例

 

(1) 1つめ

 

 日本における反体制の試みが挫折す る背景には、日本人がなかなか母性原 理から抜け出せず、父性原理に基づく 自我を確立し得ていないためであると 考える著者の見解に、私は賛成できな い。
 日本及び、世界各国で見られる政治 上の諸問題は、いかなる原理に基づく ものか。私は実社会での力の強さを基 盤とした見方を重視する。過去数千年 の人類の歴史を振り返れば、かつての 世界大戦までの暴力の時代と、その後 世界機構が乱立し、一見すれば秩序は 保たれているかに見えるが、経済的暴 力の時代が存在した。このように、倫 理意識の種類以前に、反体制派を抑え る社会的緒力が存在する。
 私が上記のように考える理由は大き く三点である。第一に、著者が述べる 母性原理、父性原理という考え方は、 大変あいまいである。平等意識や成長 意識については、多くの人が持ってい るものであり、特別日本人に特有のも のではない。第二の理由は、歴史を動 かす重要因子である。国家は過去数千 年の歴史の中でもっとも大きな影響力 を世界の政治経済の分野で有する単位 である。民間団体や、個人の力が近年 大きくなったとはいえ、反体制派の行 動を抑制してきたのは国家であり、今 の時代でも同様に大きな影響力を持っ ている。第三の理由は、父性原理の時 代における反体制派の動きである。日 本においては、日本国家の成立時か ら、明治政府成立に至るまで、反体制 派は武力により制圧されてきた歴史が ある。筆者が述べる父性の倫理は、必 ずしも反体制派の成功要因とはなら ず、同時に、筆者の述べる母性の倫理 が強い時代でも、反体制派の失敗要因 がこの倫理感にあるとの事例を取り上 げることは実質的に難しい。確かに筆 者が述べる倫理の種類ごとに一定程度 なんらかの原理的作用が存在する可能 性は否定できない。しかし、同時に筆 者の述べる仮説は因果を考察するもの であり、対象があいまいなため、検証 することもできなければ、反証するこ とも難しい。ゆえに、可能性は否定で きないが、同時に妥当性を論じること も難しいものとなっている。事実上著 者の言説を裏付ける事例を見つけるこ とは難しい。
 以上、私は日本的価値意識が諸問題 の主な原因ではなく、実社会での力の 強さを基盤とした政治力学的な力が原 理的に存在することが主に時代と地域 ごとの価値意識を作り出していると考 える。

 

(2) 2つめ(遊びで作ってみました。)

 

 日本における反体制の試みが挫折す る背景には、日本人がなかなか母性原 理から抜け出せず、父性原理に基づく 自我を確立し得ていないためであると 考える著者の見解に、私は賛成できな い。
 日本及び、世界各国で見られる政治 上の諸問題は、いかなる原理に基づく ものか。私は実社会での力の強さを基 盤とした見方を重視する。過去数千年 の人類の歴史を振り返れば、かつての 世界大戦前までの暴力の時代と、その 後世界機構が乱立し、一見すれば秩序 は保たれているかに見える、経済的 暴力の時代が存在した。このように、 倫理意識の種類以前に、反体制派を抑 える社会的緒力が存在する。
 私は前述した考察を自分の造語で 「べき論」と「すじ論」と呼ぶことが ある。べき論とは、秩序を志向とした 価値意識から生じる言説であり、主に 社会的弱者から発せられる。すじ論と は、弱肉強食の世界で主に生じる言説 であり、主に社会的強者から発せられ る。国際社会の軋轢等、独立主権国家 が集積した世界の政治・経済は原則と してすじ論で動いている。絶対的弱肉 強食の世界ではすじ論が幅をきかせ る。一方で、一定程度司法制度が発達 し、法による社会的安寧と秩序が保た れる世界では、必然的にべき論が幅を 効かせる。国際法などが全く機能しな い外交問題では、すじ論が依然として 幅を効かせている。日本の安保法制問 題然り、世界の富の不均衡問題も然り である。世界の政治と経済は、時の権 力者と為政者によって時代と地域ごと に作られてきた。政治的な力学が強く 作用する社会では、著者が述べる母性 の倫理が幅を効かせにくい。これは母 性の倫理を人々が持たないからではな く、国家体制、民主主義等政治思想の 統制、三権分立などの社会体制、国際 社会における統治機構の設立や協約な どの体制が巨大な力を有しているため である。日本における反体制の試みが 挫折してきた背景には武力による制圧 や言論統制、選挙制度の変更、メディ ア規制等の歴史がある。現に日本も明 治政府設立以前の社会は強烈な身分制 度が存在しており、著者が述べる父性 の倫理が存在していた。それにも関わ らず、江戸時代の幕藩体制は数百年続 いている。言うまでもなく、反体制派 は武力で制圧してきたためである。
 以上、私は日本的価値意識が諸問題 の主な原因ではなく、実社会での力の 強さを基盤とした政治力学的な力が原 理的に存在することが主に時代と地域 ごとの価値意識を作り出していると考 える。

 

 

 

 

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