慶應大学文学部 小論文2006年 過去問題の解説

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2006年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

こんにちは。 牛山です。

 

本日は、2007年度慶應大学文学部小論 文問題解説です。

 

【1】問題1

 

(1) 課題文概要

 

今回の問題では、薬害について考察した文章が出題されています。

 

出題されている文章は、「社会の喪失」という文章ですね。

 

タイトルを一応見ておくと、後でヒントになることがあります。

 

チェックしておきましょう。

 

病院で処方される薬には、「主作用」と「副作用」があることはみなさんご存じですよね。

例えば、熱は下がるが、眠たくなるなど、好ましい作用と、好ましくない作用が薬にはあります。

このような好ましくない副作用が、ちょっとしたものであれば、別になんということはありませんね。

 

ところが、もし薬を飲んで失明することがあったら・・・・

 

恐いことですね。

 

1980年頃に起こった「クロロキン網膜症」事件がこの課題文では紹介されています。

 

クロロキンという薬は、1934年にドイツで開発され、この薬は戦後、日本でも大量に製造、販売されたそうです。

 

腎炎の特効薬だったそうです。

 

この薬が、大量に投薬された患者は徐々に視力が奪われていき、ひどい場合には失明したのだそうです。

 

この事件が、映画になっており、その映画を見た感想も筆者は述べています。

 

映画のタイトルは「薬に病む-クロロキン網膜症-」というものです。

 

著者は、なぜこのような悲劇が起こったのかについて考察しています。

 

 

(1) 問題概要

傍線部を説明させる問題が出題されています。

 

----------ここから----------
なぜ著者は、「測定不能」という文字を「衝撃的な文字」と受け止めたのか説明しなさい。

(80~100文字)
---------ここまで-----------

 

傍線部がある文章を見てみましょう。

 

----------ここから----------

しかも、それはなお進行中である。この病気の恐ろしさは、薬物の服用をやめても症状が停止せずに進行し続けることだ。過酷に「成長」しつづけるのである。その視野図の表示のなかに、

 

「測定不能」という衝撃的な文字
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

が現れてくる。

 

映画に登場した人たちの大半がそうである。測定不能。これが物理的な計量と計算を規準とする社会、つまりこの測定社会が産み落とした事態なのである。

この社会が自己の欲望を貫くことによって生み出した生活破壊は、その社会形態に相応して「測定不能」という冷徹な表記によって示される。

 

私たちが陥っているのは、測定の果ての状態なのだ。

 

---------ここまで-----------

 

(3) 解き方

この手の問題は、傍線部の前後に答えがあることが多いです。

 

今回のケースはやや例外的なケースであり、課題文の中に直接的に解答要素として入れ込むことができそうな文章がありません。

 

従いまして、ある程度読み取っていく必要があります。

 

行間を読むように、課題文を読んでいくわけですね。

 

上記の紹介部分だけから実質的に説明しなければならないような問題になっています。

 

(4) 解答例


 高度経済成長社会、「物理的な計算 と計量を基準とする社会」である測定 社会は人々の生活を破壊している。そ の生活破壊の程度が限界まで進んでい ることを象徴する言葉であったため。

 

【2】問題2

 (1) 問題概要


著者の述べる「失明した社会」とはどのような社会のことか説明しなさい。

 

このように設問の要求があります。

 

課題文全体の流れは以下のようなものです。

 

(1)製薬産業の発展
(2)被害者の失明などの具体的被害状況
(3)筆者の考察
(4)被害者へのインタビュー
(5)著者の考察

 

被害者へのインタビューに対して、薬害被害者は次のような言葉を残しています。

 

----------ここから----------
「働きたいんです。とりあえず働いて
・・・どういったらいいんですかねぇ
・・・病気のことなんか忘れて一生
懸命働こうとしてるんです。」

 

(中略)

「あのね、結局は普通の人ならば結婚
就職それから進学、それがほらなんて
いうの、未来があるでしょう。結局は
それがわたしたち、わたしにはないっ
て感じて、(中略)


でも好きに、好きになるような人はで
きないでしょう。・・・やはり結婚と
なったら、まあ、ひとりでやりたいて
思うのがあれじゃないかなぁと思って
る。・・・だから、別に、しない、
しない方がいい。好きにならない方
が」


「自分で死のうと思っても死ねないし
ね。だから、今はまだわかんないけど
もね。だからまず歯を治して、と
思ってる。でも・・・長生きだけは
したくないね。長生きだけは・・・」

---------ここまで-----------

 

映画では、物干しざおから洗濯物をゆっくりと取り込み、それを抱えてじっと立ち尽くす姿が映し出されていると課題文では言及されています。

 

それでは、この課題文の続きを傍線部と共にご紹介します。

 

----------ここから----------
社会の圧倒的な傾斜に対して、この
女性のしぐさはいかにも無力にみえる
だろう。しかし映画は、その姿を静か
に移し続ける。少しずつ洗濯物を取り
こむ彼女のまわりに流れている時間を
そして立ち尽くす彼女のうちに去来
する思いを、フィルムに焼き付け定着
させようとするかのように、映画は息
をひそめるのだ。冒頭部分に置かれ
末尾近くに再び挿入される、この
女性の姿に向けられる視線は、この
映画が身を置く場所とその方法を示し
ているだろう。

 それは人々の日常の暮らしに眼差し
を据え続けることによって、それを
飲み破壊する社会的緒力を捉えようと
するのである。収奪される個人の身体
は、その破壊力が集中する場なのだ。
それこそが目を凝らすべき「現場」で
ある。それは、私たちの生存の様態と
基礎そのものを問おうとする姿勢と
いってよい。このような視線のもとに
この

 

失明した社会
~~~~~~~~~~~~~~~

を生きていくことの
耐え難い苦しさとむずかしさを、この
映画は静かにしかし痛切に提示する。

---------ここまで-----------

※改行は、テキストで分かりやすく表示するために、牛山が行っています。

 

(2) 考え方

 

今回の問題は、この「失明した社会」という言葉が何を示しているのかを説明するわけですが、ある程度全体像(課題文全体)を描く方が、説明しやすいでしょう。

 

従って、今回の問題を解く際には、「失明した社会」という比喩の大元になっている課題文の内容を圧縮し、重要な部分を抜き出すように、全体像を見せることで説明します。

 

言うまでもないと思いますが、「失明した社会」の失明とは、見ようとしないことの例えです。

 

苦しんでいる個人にスポットが当てられ、政策決定や企業経営、病院経営等が行われにくいことを社会や我々がなかなか見ようとしないこと、そのような全体主義的な考え方を批判的な立場から捉え、「失明している」と著者は述べています。

 

著者はこのように述べていますが、以下に私が持っている知識からお話しますと、

 

製薬業界や医療業界では巨額のお金が動きます。

 

場合によっては副作用が明らかであっても、その薬が認可されてしまうこともあるようです。

 

アメリカでは、諮問委員会のメンバーが特定の製薬企業と蜜月関係にあることもあるようです。

 

当然このような仕組みは世界のどこで起こっても不思議ではありません。その犠牲者になっているのは、被害者の「個人」なのですが、場合によってはメディアですら、多額の広告費を支払っている巨大な企業をバッシングすることが難しくなることもあるようですね。自社のスポンサーだからです。

 

なかなか恐い話です。

 

 

ところで、問題に話を戻しますね。

 

ところどころに、重要なポイントがありますので、スルーしないように気をつけましょう。

 

重要なポイントとは、以下のような部分です。

 

・高度経済成長
・高度成長社会は、何かを作り出すこと自体に対して肯定的な社会である。
・全体主義
・(本来見るべきは被害者個人であるのにそれを見ようとしない。)

 

純粋に課題文を抜き出すように問題を解いていると、文字数が足りなくなりますので、適宜自分が理解した内容で説明的に文章を設定していく必要があります。

 

(3) 解答例

 

 医師から処方される薬には、作用と 副作用があり、時には薬は恐るべき毒 物に変わることもある。かつて起こっ た薬害であるクロロキン網膜症被害者 の中には、徐々に視力が落ちていき、 失明する者もいた。このような事件 は、経済の高度成長過程そのものと言 える。高度成長社会は、何かを作り出 すこと自体に対して肯定的な社会であ る。ここでは、被害者の社会に対する 信頼の喪失が存在する中で産業が発展 する。この経済社会の振る舞いは物事 を徹底的に対象として扱う思考の帰結 である。全体主義思考の中では、個人 が犠牲者となる。経済成長を是とする 考え方を重視する社会では、失明した 被害者が人生に絶望し、生きる希望を 失っていることが見えなくなってい る。本来見るべきは、この被害者個人 の心であるのに、それが見えなくなっ ている社会、換言すれば全体主義と個 人主義のバランスを欠いた全体主義的 社会を指して著者は、「失明した社 会」と表現している。

 

 

 

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