慶應大学文学部 小論文1994年 過去問題の解説

慶應大学絶対合格情報
ここでしか手に入らない慶應合格・不合格情報、暗記法、思考法小論文対策を無料提供!
~メールマガジンについて~
メールマガジンでは、慶應大学に特化した情報をお届けします。小論文の点数を上げる秘訣や、記憶量を増やすコツなどの情報です。メールマガジンではサービス・役務のご案内もあります。その為に無料提供となっています。プライバシーポリシーはこちら・メルマガ解除はこちら

このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。 慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。

1994年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

こんにちは。 牛山です。

 

本日は、1994年度慶應大学文学部小論文問題解説です。

 

【1】問題概要

 

(1) 設問の要求

 

次の【A】、【B】二つの文章を読んで以下の問Ⅰ、問Ⅱのそれぞれについて答えなさい。

 

【B】の文章においてダークスンは、機械仕掛けのカブトムシに対する態度を変化させている。この変化は【A】の文章の著者の立場から見るとどのように説明できるかを述べなさい。

 

(2) 解き方

 

この問題は、A、B両方の問題文を読み、その後にAの視点で、Bの文章について何が言えるかを書く問題ですからまずはAだけを読み、Aの視点を大切にしつつ、問題文のポイントを探すようにBを読んでいきます。

 

それでは、課題文の要約とあらすじをご紹介します。

 

 

【2】問題文の要約とあらすじ

 

(1) 課題文Aの要約

 

 機械と心とは、昔から相対立する二つの原理を表してきた。日常的にも「機械的なやり方」といえば、ほとんど「心ないやり方」と同じものとされている。デカルトは、「機械」はいかに精巧に作られていても「心」を持たないので「物質」の世界に属するものであるとし、そうして人間以外の動物も「機械」にほかならないものとみなした。
ますます精巧なロボットが作られるようになってきた現在、将来において「心」を持つといえるようなロボットを作ることは絶対に不可能とは言えないのではないだろうか。
この問いに対する答えは、実は「心とは何か」ということにかかっている。
心とは何か。心とはまず「主観的な意識である」あるいは「意識しているという意識である」と言うことができよう。
そこで「機械は心を持つか」という問いは、「機械に意識があるか」ということに帰着することになる。機械には意識はないと答える人が多いだろう。しかし、上に述べたように、「心」の「本質ないし存在」と「心」の「機能・作用」とは区別しなければならないとすれば、機械が心を持つような動きをしないというだけでは機械が心を持たないということをいうのに必ずしも十分ではないであろう。裏返しにいえば、機械が「心を持つもの」と同じように行動するようになったら、「機械は心を持つ」といえるだろうかということになる。
機械は意識を持たないということは合理的な仮説であっても、それ以上の心理であるとは考えない方がよさそうである。
「機械が心を持つか」という問いに対するもう一つの答え方は、「心」の機能あるいは作用にかかわるものである。
「機械が心を持つか」という問いに機能の面から答えるには、機械の働きと心の機能の間には本質的な違いがあるといえるかどうかを考えねばならない。「心」の機能は情報を獲得し、それを処理し、そしてそれを具体的な行動に結びつけることにあると考えることができる。そうして現在では、機械もこれらの機能をはたすことができるようになっているのである。だから人間と機械の差は、情報に関して何ができるかできないかではなく、その作用の様式にどのような差があるかに求められなければならない。
機械の「情報処理」と、人間の「心」の動きとの最も大きな差は、機械は「論理」にのみ従うのに対して人間の心は「直観」や「情念」や「価値判断」を行うということである。問題は、人間の心の、機能が合理性や法則性を持たないということではなく、その法則性が直観や情念について知られていないということにある。「機械が心を持つことができるか」ということは、実はこれらの法則性を見出して、「心と同じ機能を持つ機械を作ることができるか」という問題であるといえる。

 

(2) 課題文Bのあらすじ

 

-------------------------------
機械に心はあり得ないと考えるダークスンに対して、ハントは機械仕掛けのカブトムシを使って一つの実験を試みた。
このカブトムシはセンサーにより電気コンセントを探して充電したり、金属に反応したりできるように作られている。
-------------------------------

 

 ハントとダークスンは、地下の実験室に向かった。そこでハントはアルミ製の大きなカブトムシをキャビネットから取り出した。

 

 車輪がついたそのカブトムシを床におき、スイッチを入れた。静かなうなり声をあげてこのオモチャは床の上を動き始めた。

 

 このカブトムシは、電源コンセントを探すような動きを見せた後、コンセント口に自分の身体を差し込み充電する。身体についているランプが緑に光り、ゴロゴロと喉を鳴らすような音が聞こえた。

 

 ハントは椅子の上にあるハンマーでこの機械仕掛けのカブトムシを殺すことをダークスンに提案する。ハントは「生と死の意味がわかる」と述べる。

 

 ダークスンがハンマーでこの機械を壊そうとすると、機械は恐怖の叫び声のような音をたてた。そして逃げた後、ダークスンの顔をじっと見つめた。

 

 カブトムシのランプは赤色になり、点灯している。十分たっても彼女はなかなか機械じかけのカブトムシをハンマーで捉えることができなかった。

 

 ハントは、カブトムシが金属に反応していることを教える。ハンマーを恐れるようにプログラムされているため、ハンマーを手放して近づけばよいとダークスンに教える。

 

 ダークスンが言われたままにカブトムシを手で触ると、カブトムシのランプは緑色になっている。この状態からどうすればいいかをハントに聞くと、ハントは、裏返しにして机の上に置けばいいとアドバイスする。

 

 ダークスンが言われたとおりに裏返しにカブトムシを置き、ハンマーを振り下ろすとカブトムシの足にあたる車輪が砕けた。ダークスンが最後の一撃を加えようとした瞬間、その動物の体内から赤ん坊がすすり泣くような調子の悲しげな声が聞こえてきた。テーブルの上に置かれた動物の体の下に血のように真っ赤な潤滑液がたまっていた。

 ダークスンはたじろぎはじめる。ハントは、機械には、自分の運命を感知し、助けを求めて叫ぶ機能がプログラムされていると説明した。ダークスンはスイッチを切ることを求めたが、既に最初の一撃でスイッチは壊れていた。ダークスンが治すことができないかを質問した瞬間に、ハントは最後の一撃をハンマーで加えていた。

 

 泣き声は止んでいた。そして二人はもと来た階段を戻っていった。

 

【3】考え方

 

(1) 設問の要求

 

-------------ここから-------------
【B】の文章においてダークスンは、機械仕掛けのカブトムシに対する態度を変化させている。この変化は【A】の文章の著者の立場から見るとどのように説明できるかを述べなさい。
-------------ここまで-------------

 

こんな問題でしたね。

 

これは、実質的には要約問題に近い問題です。

 

Aの文章の筆者の立場から言えることとは、Aの筆者が持っている考えですから、その考えがどうであり、したがってどうなのかということを述べていけばよいということになります。

 

課題文の中では、心についての考察が成されていますが、ポイントは以下の二つです。

 

(1)心とは主観的な意識である。
(2)心の作用は不明瞭である。※情緒や価値判断

 

この2点に結びつけて何が言えるのかを論じていくことが大切になります。

 

【4】解答例

 

 ロボットは心を持つかどうかという 問いは、心とは何かという問いに等し い。心とは、第一に主観的な意識であ る。あるいは、心とは意識している意 識と言える。従って、機械は心を持つ かどうかは、機械に意識があるかとい う問いに帰着する。ダークスンが途中 で態度を変化させた理由は二つある。 第一の理由は、特徴の符合である。前 述したような心の特徴をダークスンが 機械に対して見出したため、彼女は態 度を変化させたと考えられる。第二の 理由は、心の不明瞭さである。心の作 用の内、情念や価値判断については法 則性が分かっていないため、ダークス ンは機械と心を持った生き物の区別が つかなくなったと考えられる。

 

【5】問題2

 

(1) 設問の要求

 

Aの文章の著者の心に関する主張について、どのように考えるか、400字以内で述べなさい。

 

 

(2) 考え方

 

どう考えるか?

 

と問われた時、大変答えの難易度は上がります。

 

その理由は、どのレベルで答えることを求められているのかを考える必要があるからです。

 

これは日常会話でも同じです。

 

どうなんですか?

 

と大雑把に質問された時には、

(1)何について(範囲)
(2)どのレベルについて(レベル)

 

の両方を瞬時に考える必要があります。

 

もちろん、

 

「何がですか?」

 

と答えることもできますが、

 

「何がですか?」と答えてしまえば、

(この人は何か考えているのか?)

 

と思われかねません。

 

今回の問題は、

 

著者の主張を踏まえて、論じなさいという要求にはなっていないので、ある程度自由に問題を設定して論じていくことが許されていると考えていいでしょう。

 

それでは、上記の内容に気をつけて、解答の内容と、構成を考えてみましょう。

 

いつものように、3分でも、10秒でもいいので、考えてみましょう。

 

考えてみたでしょうか。

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

(3) 解答例

 

 機械が心を持つことができるかどう かについては、人間の心の法則性が知 られていないことが問題であり、これ らの法則性を見出すことができるかが 問題になると著者は主張する。この考 えは妥当だろうか。
 私は概ね賛成である。しかし、現状 のコンピューターは、能力面で人間を 超えていないため、自我をコンピュー ターが持ち、学習能力を人間と同じか それ以上に有するのはもう少し先にな るのではないかと推測する。
 機械の記憶能力は既に人間を超えて いる。しかし、将棋などの高度な推論 能力を競う闘いでは、機械は、ほとん ど人間に勝つことができない。この理 由は人間が感性的な判断を加えること にあると言われている。論理的に考え た場合、極端に情報量が制限される が、右脳的に考察する場合、脳内の情 報量が飛躍的に向上する。
 以上、私は著者の意見に概ね賛成で きるが、今の時代の機械は法則性を見 出すだけでは人間の心を持つことはで きないと考える。

 

【6】編集後記

 

今回の問題はチョット面白い問題でしたね。

 

そこで、ややネガティブな印象もあった解答例について、人工知能や、機械をポジティブに見る?解答例も作成してみました。

 

遊びで作ったものですが、参考にしてみてください。

 

 

 

【解答例2】
機械は心を持つことができるのだろうか。
あと数十年すれば、コンピューターの能力は人間の頭脳を十分に超えると言われている。人間の脳細胞は、コンピューターと同じ二進法で約数百億個の脳細胞によって電気信号が流れているが、コンピューターは規則正しく進化しており、あと数十年後には、人間の頭脳は機械をはるかに下回ると予測されている。従って著者の論考の内、機能面と作用面については、機械は能力的に問題が無くなる可能性がある。機械は特定のプログラム通りに作動するが、反応パターンを自動プログラムすることも理論上は可能である。意識を持つ能力と、情念を持つ能力を機械が手にする時代は近いのかもしれない。機械と生物の最大の違いは、生命の有限性である。有限の生命を持つ人間は、恐れや愛などの感情を持つ際に無意識に生命の有限性を感じている。
以上、私は生物が持つ生命の有限性から感じられるリアルな実感を伴う感情が、生物に特有の心理作用を産むと考える。

 

 

無料メルマガでも、慶應大学の小論文を詳しく解説しています

 



~なぜメルマガに登録するのがお勧めなのか?~
1.慶應受験と学習のスキルアップに詳しい人に教えてもらうので、成長しやすい。
2.点数が短期間で大きく引きあがった指導をうけることができるので、あなたも点数が上がる事が予想される。
3.慶應受験について多面的に詳しくなるので、合格しやすくなる。
4.お金が一円もかからない。(無料で教えてもらえる。)

 

《合格実績》大学受験だけではなく、大学院受験の合格実績も豊富です。

慶應大学合格/慶應大学大学院合格/北海道大学大学院合格
東京工業大学大学院合格/上智大学合格/早稲田大学合格/京都大学合格など


~メールマガジンについて~
メールマガジンでは、慶應大学に特化した情報をお届けします。小論文の点数を上げる秘訣や、記憶量を増やすコツなどの情報ですが、メルマガにはサービス・役務のご案内もあります。その為無料で提供しています。

プライバシーポリシーメルマガ解除

 

慶應大学絶対合格情報
ここでしか手に入らない慶應合格・不合格情報、暗記法、思考法小論文対策を無料提供!

メディア掲載: プレジデントFamilyClub様

 

『慶應大学に我が子を確実に合格させる教育法』

第1回 ⇒「従来の教育法では慶應に益々合格しにくくなる」

第2回 ⇒「慶應大学合格に必要な要素と中核」

第3回 ⇒「慶應大学合格に有効な受験対策(前編)」

第4回 ⇒「慶應大学合格に有効な受験対策(後編)」~「受け身の学習」から「攻めの学習」に変化させる~

第5回 ⇒「慶應小論文対策で失敗しないための根本的対策」

第6回 ⇒「信頼関係と素直な心で慶應受験に強くなる」

 

 

慶應クラスの資料請求・お問い合わせ

 



PAGE TOP
© 2007 - DIJI SYSTEM