慶應大学文学部 小論文1993年 過去問題の解説

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このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。 慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。

1993年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

こんにちは。 牛山です。

 

本日は、1993年度慶應大学文学部小論文問題解説です。

 

【1】問題概要

 

(1) 設問の要求

 

-------------ここから-------------
この文章の主旨を300字以内で要約しなさい。
-------------ここまで-------------

 

以上が設問の要求です。

 

それでは、課題文の要約を見てみましょう。

 

今回の文章は課題文の筆者が独自に使っている「寛容」「不寛容」などの言葉が何を指しているのかを理解することが大切です。

 

最初から最後まで直接説明はありませんので、文脈から判断していくしかありません。

 

(2) 課題文の要約

 

 過去の歴史を見ても、我々の周囲に展開される現実を眺めても、寛容が自らを守るために、不寛容を打倒すると称して、不寛容になった実例をしばしば見出すことができる。
 しかし、だからといって、寛容は自らを守るために不寛容に対して、不寛容になってよいというはずはない。不寛容に報いるに不寛容を以ってした結果双方の人間が、逆上し、狂乱して、避けられたかもしれぬ犠牲をも避けられぬことになったり、更にまた、怨恨と猜疑とが双方の人間の心に深いひだを残して、対立の激化を長引かせたりすることになるのを僕は、考えまいとしても考えざるをえない。寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容たるべきではない。
 人間は進歩するものかどうかは、むつかしい問題であろうが、人間社会全体の存続のために、人々が様々な掟や契約を作り出し、各自の恣意による対立抗争の解決に努力している点では確かに進歩があると言ってもよいであろう。
 寛容が不寛容に対して、不寛容になってはならないという原則も契約として獲得されねばならない。
 秩序は守られねばならず、秩序をみだす人々に対しては、社会的な制裁を加えてしかるべきであろう。しかしその制裁はあくまでも人間的でなければならぬ。
 寛容と不寛容が相対峙した時、寛容は最悪の場合に、涙をふるって最低の暴力を用いることがあるかもしれぬのに対して、不寛容ははじめから終わりまで、何の躊躇もなしに暴力を用いるように思われる。今最悪の場合にと記したが、それ以外の時は、寛容の武器は説得と自己反省しかないのである。したがって寛容は不寛容に対する時、常に無力である。
 人間の歴史は一見不寛容によって推進されているようにも思う。しかし例え無力なものでも、寛容は過去の歴史の中で決してないほうがよかったものではなく、不寛容の暴走の制動機になろうとしてきたのである。

 

(3) 考え方

 

「寛容」という言葉は、ここでは、暴力的な行為に及ばないことという程度に理解してもいいでしょう。

 

ただ、あまり安易に言葉を置き換えて理解していると、筆者が伝えたい意味からズレていくので、注意が必要です。

 

「不寛容」は上記の「寛容」の反対の意味ですね。

 

今回の問題では、主旨を書くことを求められています。

 

主旨とは、何でしょうか。

 

主旨とは、文章などの中心的な部分です。

 

要は、筆者は何を言いたいのかを書けというのが、今回の問題になっています。

 

(4) 解答例

 

 「寛容」は自らを守るために、「不 寛容」に対して不寛容たるべきではな い。歴史上の対立抗争や、人々が作り 出す掟や契約を作り出す過程は、この 点において進歩があると言ってもよ い。寛容が不寛容に対して不寛容にな ってはならぬという原則も、強く深く 人々の心の中に新しい契約として獲得 されねばならない。秩序を乱す人々に 対しては、制裁を加えてしかるべきで あるが、その制裁は人間的なものであ るべきだ。確かに寛容は、過去の歴史 において、説得や自己反省が主な武器 であり、非力であった。しかし、寛容 は、不寛容の制動機になろうとするこ とを通じて、過去の歴史において、一 定の意義と価値を有していると言える だろう。

 

【2】問題2

 

(1) 設問の要求

 

筆者の主張は、今日の状況においても妥当か否か、あなたの立場を明確にして、400字以内で論じなさい。

 

(2) 考え方

 

今回の問題は、やや危険な問題です。

 

例えば、著者の主張は、今日において妥当性を欠くという立場をとったとしましょう。

 

立論は、実質的に大変難しいです。

 

出題者側が一定の意義と価値があると考えてこの課題文を出している場合、適当なことを述べると、まったく説得力がありません。

 

また、多くのケースで、自分の知性に自信がある人は自信たっぷりに、このような感情の機微を無視した立場で論じがちですが、大体通用せずに、泣きをみることになります。

 

意外と超現実路線の論述は、ウケは悪いと考えておきましょう。

 

ざっくり言えば、課題文の著者の意見を否定するのは、1.5倍から2倍ほど賛成するよりも難しくなります。

 

ディベートの権威の言葉を「小論文技術習得講義」ではご紹介していますが、まさしく、

 

-------------ここから-------------
何を言ったかが問題ではない、どんなイメージが残ったかが問題だ。
-------------ここまで-------------

 

という言葉の通りになります。

 

先日、このような論述の技法を駆使するアプローチを紹介した「AO入試プレゼンテーション対策と合格法」を読んでいた子が、慶應大学合格後にビジネスコンテストで優勝したと連絡をくれました。

 

本で学んだことが役立ったと思いますという、うれしい報告だったのですが読み手のことを考えたメッセージの発信がうまくいった事例の一つだと言えるでしょう。

 

もちろん、ここまでにご紹介している内容は、自分の考えを曲げればいいということではありません。

 

自分が考えた通りのことを書けばいいのです。

 

ところで、危険と述べた理由は、もう一つあります。

 

「頭のなかがお花畑」と思われないようにすることの重要性です。

 

著者が述べる「寛容」という態度は、行き過ぎるとバカだと思われてしまいます。

 

現実を直視できないお花畑のような頭の中になっていると思われてしまえば、単なる理想論者というレッテルを貼られてしまいます。

 

このようなリスクを避けるにはいくつかの心理テクニックを用いるのが有効なのですが、ここでは一つだけご紹介しましょう。

 

きちんと反論を取り扱うということです。

 

自説の有効性だけを強調しても、人は納得しにくいのですが、反対側の人の意見を論破できれば話は別です。

 

もっとも大切なことは、

 

反論の論拠をたたいておくことです。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

下手をすると、純粋な「理想論者」になってしまいがちな問題は、どの学部でも数年に一度出題されています。

 

頻出と言ってもいいでしょう。

 

自分の意見を言いっ放しにならないように、普段の勉強で気をつけておきましょう。

 

それでは、論理構成や、自分の考えを思い浮かべてみましょう。

 

あなたならどのように書きますか?

 

いつものように、10秒でも、3分程度でもいいので、考えてみましょう。

 

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

 

(3) 解答例

 

 私は、著者の主張は今日においても 妥当であると考える。
 確かに、不寛容と著者が表現する戦 争行為に及ぶ国家が、侵略戦争を行う 可能性は否定できない。このような時 に寛容と著者が表現する態度は無力で ある。しかし、近代兵器の破壊力はか つての二度の対戦時の比較にはならな い。第三次世界大戦が本格的に行われ れば、一度のミサイルで数百万人の命 を奪うことも実質的に可能になってい る。このような状況下では危険だから 戦争に備えるという発想は陳腐化す る。戦争に備える価値よりも、戦争を 避ける価値の方がはるかに政治的、経 済的に高い社会が到来している。従 って仮に現実に戦争が起こるとして も、戦争が起こったからといって戦争 を避ける活動の意義が損なわれること にはらならない。
 寛容は、不寛容に対する安全保障条 約など現実的な政策と同時に実行可能 であり、著者の主張は今日においても 妥当である。

 

【3】編集後記

 

もしも、今回の問題が、今日においても・・・という条件が無かったら、、と考えてみましょう。

 

今回も遊びで解答例を作ってみました。

 

参考にしてみてください。

 

 

 私は、著者の主張は妥当であると考える。
 筆者の主張のボトムラインは、寛容の意義と価値である。従って「寛容という考えや思想」が理想的すぎるという反論が仮にあっても著者の主張は崩せない。寛容の意義については、以下の様な事例を挙げることができる。戦時下の反省から戦後ドイツが果たした平和への活動の価値は国際的にも大きなものである。同様に我が国が世界唯一の被爆国として、憲法第9条を有していることも同様に意義がある。平和に向けた民間レベルおよび国家レベルの取り組みは、多くの民主主義体制の国家に対して大きな圧力となることが予想される。著者が述べるように、寛容の立場は現実の社会で大変非力である。しかし、ガンジーやネルソンマンデラが、時代と地域を越えて多くの人の心を動かしたように、無力ではない。むしろ時代と地域を越えて、人の心を強く動かす巨大な力を寛容は有していると言えるだろう。

 

 

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