慶應大学文学部 小論文1990年 過去問題の解説

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1990年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

こんにちは。 牛山です。

 

本日は、1990年度慶應大学文学部小論文問題解説です。

 

【1】問題1

 

(1) 設問の要求

 

本文の論旨を要約しなさい。
(三百字以内。)

 

この年の問題は、わりと長い文章が出題されています。

 

大雑把な要約をご紹介します。

 

今回の課題文は長いので変則的なまとめ方をしました。

 

要約的にあらすじをご紹介します。

 

(2) 要約的なあらすじ

 

 民俗学は以前心静かでいられた。民族学には、理論的にも実際的にもその存在を正当化する理由があった。
 観察者である民族学者の存在は、観察者であると同時に、社会生活に参加するものであるため、社会を変える恐れがあった。
 一九一五年、第一次世界大戦によりマリノフスキーが英国に帰れなくなったという事故があった。この時に、彼は現地人の村の真ん中にテントを張り
 現地人の生活に加わった。
 その時以来、いくつかの問題が起こるようになった。殺人のような自分の道徳的問題に反する事件があった時や病人が出た時の民俗学者の対応である。
 また、別の民俗学者は自分が行った人口調査の内容を発表することに戸惑いを感じた。政府に人口調査の内容を利用された場合、原住民集団の移動や他の地域への強制移住という結果を引き起こすことを恐れるためであった。
 最近の事例では、ベトナムを調査している民族学者が、この地域と住民に関する著作を発表したところ、米軍の戦争目的のために利用、悪用されてしまったことがある。
 キャメロット計画事件という有名な事件があった。六百万ドルにのぼる莫大な補助金を受けた研究計画で、「内乱の前提条件およびそれに対する現地人の地域的行動の影響についての基礎研究」を行うというものであった。しかし、その真の意図は政治的目的、軍事的目的にあった。
 最近の重大な事件はタイ計画である。タイ国の山岳地帯の生活と組織の実情を調べ、阿片の密売にどのような対策が可能かを研究するのが目標であった。次の三つの対策が考えられていた。第一は住民の強制移住、次は国境警備隊による直接統治、第三はこの地方に対する徴税班の派遣である。
 一九七〇年に実情が暴露され、世界中でもっとも強力な人類学者の組織である「アメリカ人類学会」で「倫理委員会」なる機構を設置し、それが内部統制を行うことになった。この内部統制には以下のような問題が提起された。社会科学に道徳がありうるのか、民俗学者が直面するきわめて複雑で多様なケースのすべてに、一つの同じ型によって作った解決法を適用できるのか、換言すればそれが善意に発するものであったとしても、正統派的立場を押し付けて良いのか、という問題提起である。
 民俗学は今危機的状況にある。一つは、研究対象の社会の事情である。今民俗学が対象としている民族は急速に消滅しかけている。この速さでいくと今から五十年後には民俗学的研究の対象として典型的な特徴をもつ社会は一つも残っていないだろうと言って差し支えない。
 その結果、これらの社会に属する人たちが物のように研究されることをますます許さぬようになっている。
 こうして奇妙なパラドックスが生じる。民俗学者は文化相対主義を打ち出した。いかなる文化も他の文化の道徳的・知的価値を判断できるような基準をもたない。文化はそれぞれがいくつかの可能性の中からの一つの選択であり、その選択は相互比較したり還元したりはできない。したがって特定の文化の価値の名において他の文化の価値に判断を下すことはできない。この相対主義理論こそ、研究対象の民族と深い親密な合意を作り出す手段だと思っていたが、相手の民族自身がこの考えを退ける。自民族の発展が妨げられることを嫌うためである。
 私には確信がある。十年後、二十年後、一世紀、もしくは、ニ、三世紀後にこれらの社会の人々も、自らの根源、ルーツとの接触を望む時がくる。この人達の子孫の精神的健康のために、またその独自性維持のために、必要なものを救うべく研究を遂行するのである。

 

(3) ポイント

 

今回の問題を解く上でのポイントは以下の様なものです。

 

・論旨を書けと言われているので、論理の前提を明らかにすることが大切。
・いくつの「重要な論理的前提 」があるのかを把握する。
・いくつか存在する論理の前提について、重要度の重みづけをする。
・必要のないものは入れ込まない。
・キーワードである、文化相対主義が主張されるようになる背景に言及する。

 

(4) 解答例

 

 かつての民俗学者は、観察対象に深 く関与することなく、研究を行うこと ができた。一方で、今日の民俗学者 は、観察対象の民族の生活に深く関与 してしまうことがある。観察対象に大 きな影響を与えてしまった事例とし て、研究成果を軍事利用、政治利用さ れる事件があり、その後民俗学は独自 の倫理基準を設けてこれらの問題に対 処した。しかし、文化相対主義等の観 察者側が用意する倫理的基準は必ずし も観察対象の民族からすれば好ましい ものとは言えない。彼らには発展を望 む動機があるためである。従って現代 における民俗学の意義とは、彼らの根 源、ルーツを歴史に残すことであり、 将来の彼らにとっての精神的健康にあ るのである。

 

【2】問題2

 

(1) 設問の要求

 

本文中にある文化相対主義について、今日の国際化した社会にいるあなたはどう考えるか、意見を述べなさい。

 

(2) 考え方

 

今回の問題は、文化相対主義という、やや理想的な考えが、現実論としての生活から遊離している矛盾について考えさせられる問題です。

 

したがって、この問題意識を組み込むことが最低条件になります。

 

文化相対主義は、彼ら現地人からすると迷惑なものかもしれません。

 

携帯電話を彼らが使って、ウェブで買い物をしていれば、民俗学者はどっちらけですが、便利な社会を彼らも望むでしょうし、携帯を使って話をしている人を見て、クールだと感じてしまうこともあるかもしれません。

 

同じ人間ですから、あこがれるものや楽しむものも似ていて当然です。

 

でもね、、、、、、、

 

じゃあ、文化相対主義という考えは、無意味なものなのでしょうか。

 

無価値なものなのでしょうか。

 

無駄なのでしょうか?

 

文学部として問題意識を感じているのはここです。

 

また、筆者が問題意識を感じているのもここです。

 

あなたはどう考えますか?

 

大事な視点は、

 

仮に文化相対主義が無価値なら、このような大層な課題文は必要ないということです。

 

現実路線だけを重視する物言いは、実は頭が良さそうに見せるには都合がいいのですが、あまり頭を使う必要はありません。

 

その前提を考えなくてもいいからです。

 

論証が難しいのは、理想を語る時です。

 

一応受験するにあたり、重要なポイントなので、お話しておきました。

 

何も考えずに、言葉だけで考えて、自分の考えを書いていくと、この作問者の問題意識もすべて無視することになってしまいます。

 

当たり前ですが、そうするとやや不合格になりやすくなります。

 

常に自分の考えを書けばいいのですが問題の意図を汲み取れていないことは評価が下がることに直結しています。

 

また、文学部は文化を大切にする考えが支配的であることも考慮に入れておく必要があります。

 

日本文化などどうでもいい、
アメリカ好き!

 

もっとアメリカにかぶれろ!

 

という歌がありましたが、、、、
(お笑い芸人さんの歌です。)

 

最後の方は、

 

アメリカ大好き!
ヨーロッパも好き!!!

 

とハチャメチャになっていくのですね、、、、、

 

(日本はどうでもいいんやないかーい!)

 

という感じなわけです。

 

こんな風になるとまずいです。

 

ですから、難しいかもしれませんが、文化相対主義については、いくらか賛成する考えについても、考察を深めていきましょう。

 

それでは、いつものように、10秒でも3分でもいいので、考えてみましょう。

 

 

 

 

それでは、解答例をご紹介します。

 

(3) 解答例

 

 先進国は常に優れているわけではな い。先進国は大量殺戮兵器を開発して 軍備を増強している。文化の相対性が 重要なのは、現実の安全保障や生活問 題だけではない。文化の相対性が重要 な理由は、文化の背景にある思想その ものがどれだけ妥当かは、分からない ことにある。日本国における安保法案 は、「(戦争をできる)普通の国へ」 というスローガンで可決された。しか し、戦争をできることが普通であると いう認識、思想哲学は、言うまでもな く危険なものである。私は現実論を否 定しないが現実論を重視しすぎる文化 はかつての日本と同様に危険である。 従って、文化相対主義は常に一定の意 義と価値を持つと、私は考える。

 

 

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