このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。
慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。
2013年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説
こんにちは。
牛山です。
本日は、2013年度慶應大学文学部小論文問題解説です。
さて・・
今回の問題は、問一で、本文の内容理解力を確かめ、問2で、論点を把握した上で、論述的に述べる事がどれだけできるかを間接的に問う問題となっています。
いくつか点数を得る為のポイントがありますが、どのようなことが書けていれば合格なのかについての大雑把な目安を今回のメールマガジンではお伝えします。
さらに詳しい内容は、慶應クラスの動画解説で行います。また、近いうちにこのメールマガジンの動画解説も行いたいと思います。本格的に過去問題の解説を行う際には、慶應クラスの受講生向けに動画を収録しますので、ご希望の方は、慶應クラスのウェブサイトをご覧ください。
【慶應クラス】
http://maishu.kir.jp/base/sixyouron/sr-2/keiou-crass.html
※中央の赤いボタンを押せば、フラッシュ動画を見ることができます。
【1】問題概要
(1) 解説
問1については、そのまま純粋な読解問題ですから、とりわけ大きな間違いがなければそれなりの点数を得ることができます。
(ちょっと手元に問題が無い人は申し訳ないのですが・・)
簡単に説明すると、
自己本位主義的志向が世の中で起こっている仕組みを、携帯電話と関連付けて、自己領域化が加速し、アノミーの状態となっていることを書き、携帯電話は、これらの状況を悪化させる道具になっているとの筆者の解釈を書けていれば大丈夫です。おそらくは大体書けたのではないでしょうか。
なんと、、、
一度に総合的に要約することを求められています。
(2) 解答例
携帯電話を使用する時、車内等の公共の場所が、携帯電話という自己本位主義的メディアにより、アノミー空間となる。携帯電話はこのように、個人の自己本位主義的志向を強める性質がある。携帯電話の使用者は、自己世界を閉鎖し、そこに没入する。このような自己領域化現象を携帯電話は加速させることとなった。具体的には、他者への無関心の加速である。老人に席を譲るなどの、他者のニードに関心があれば行うことが出来る行動をとることができにくくなるケースが増え、家庭での食卓においても、携帯を手放さない現代人が増えた。食卓というもっとも家族的な場に自己領域化が持ち込まれることにより、携帯電話は、食卓という家族にとって特別な空間のアノミーを加速し、社会空間の分割という影響を与えている。
【2】問題2
(1) 問題概要
設問の2は、『対幻想は衰弱する』という筆者の主張に対しての賛成か反対かを述べる問題となっていますね。
この対幻想というキーワードに対する注釈がついているのを見落とした人はいないと思いますが、しっかり注釈を読み、内容を把握していきましょう。
実際に言葉の意味を規定していく作業は文章の中で行います。
分かりにくい人の為に、簡単に言えば、家族がバラバラになるということです。今回の問題では以下のような文章の構造を理解しつつ、自分の立場をあきらかにすることが大切です。
【テーマの流れ】
1) 家族論の概要
2) コンビニ・・・・・・A
3) ケータイ・・・・・・B
4) 電車の中での社会現象・・C
5) 家族論と筆者の解釈
このような形で文章が展開されています。
(※このような読解の要領を磨くと合格しやすくなりますよ)さて、わりと暴露的な事を言うと、問題を解くのに簡単な路線で比較的合格しやすいのは、賛成の立場です。
ただし、どちらの立場であれば点が高いというわけではありません。あくまでも構成、内容、表現、発想などの総合点で評価されます。筆者の主張は上記のテーマ概要のA~Cを論拠としたものとなっています。
帰納法的に、いくつかの事例から一般原則としての一般化を行う様に考察しているんですね。
したがって、反論を加える場合は、これらの論拠を崩し、別の論拠を挙げ、それらの事実を理由の軸を設定することでまとめる必要があります。今回の問題は理由を述べる問題であり、理由を書く必要がある為です。できれば複数の理由が挙がっているか、具体的な事例を元に、論拠が記載されているのが理想です。
↑さささっと書いていて少し不安になりましたが、この部分大丈夫でしょうか。このような論理的な思考がササッとできるようになることが小論文の勉強でもありますからね。少しずつ慣れていきましょう。
論理的な思考を学び、論理的な考え方に慣れて、何が出ても対応できる力をつけることが大切です。
(2) いかにして反論するか?
筆者の解釈は上記の現象から導かれているので、上記の現象に対する別の解釈や、過去との対比は有効です。
例えば、過去にも自己本位主義的な行動が日本国民に普通に一般的に見られていた事実を挙げたり(現代に特有という筆者の論拠をつぶす)、コンビニを個人単位や個人主義の象徴視する解釈が無理矢理な安易な解釈であることを事例を挙げて理由化することを通して、述べることで、有効な反論が可能になります。
論理的な整合性を崩すやり方はいろいろとあります。ここが下手だと、有効な反論ができません。
(3) 賛成の場合
賛成の立場の場合は、筆者の論拠と同じ立場の解釈を導く事実を適示し、理由化することが重要です。筆者とは違う概念軸の理由を挙げると、いい視点を持っていると評価されやすくなります。自己本位主義的なものを感じさせる社会現象を適示し、論拠として、複数ある場合はグルーピングし、カテゴリごとに整理することを通して、論拠を整理し、説得力がある形に文章を設計することができていれば高い点数になります。
ダラダラと述べてしまったり、論拠がグルーピング化されていなかったり、一つの理由となっていたり、その際の妥当性を欠いている場合は、(内容にもよりますが)点数が低くなります。論理的に考察できていないということですからね。
小論文は単に(思う)だけでは不十分です。
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論理的に文章を見て、論理的に考える必要があります。ここをしっかり練習し、勉強を重ねていきましょう。今回の問題も、構造議論チャートを日頃から使っている人は、問題を解きやすかったのではないかと思います。
【構造議論チャート】
http://structure-debate.com/discuss/login.php
(4) 解答例
私は筆者が述べる「対幻想(意識の共同性)は衰弱する」という主張に対して、賛成の立場を取る。
理由は大きく二つある。一つは、手軽なエンターテイメントに対する接触機会の増加である。近年のスマートフォンには、魅力的なコンテンツが増え、現代人の多くはそのエンターテイメントに接触する機会が大幅に増加した。二点目の理由は、「スマーとフォンを用いながら話す行為」の増加である。携帯電話が無かったかつての社会では見られなかった行為である。若いカップルに限らず、電車、新幹線の待ち時間にカップルや夫婦がお互いにスマートフォンを見て、何かを操作しながら話をする光景は珍しいものではなくなった。同様に、喫茶店、レストランにおいても、待ち時間や食事の際に携帯電話を操作する光景は近年よく見られる。
このように現実に我々の生活の周りでは、自己領域化が拡大した現象が起こっている以上、筆者が述べる対幻想は衰弱するという意見については、個人による程度の差こそあれ、賛成せざるを得ない。
【3】ネタの無意味さ
今回の問題を解いて思った人がいるかもしれませんが、小論文の問題を解く時に、とにかくネタを入れておこうという考えは、簡単に打ち砕かれてしまうリスクもあります。
今回の問題は、理由を書かせる問題ですので、論理的な思考を純粋に見ることができるように問題が設計されています。
何かの知識を持っているかどうかを試されているわけではありません。
普段からしっかりと自分で論理的に考えるということはどういうことなのかを自問自答し、毎月の小論文の練習を通して、論理的に考える練習を行っておくことが合格につながります。
※慶應クラスでは、今年の問題の解説も時間をかけて詳しく行います。