慶應大学文学部 小論文2012年 過去問題の解説

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このページでは、メルマガで流した慶應大学の文系学部の小論文問題の解説を掲載しています。 慶應クラスでは、構造ノートや構造議論チャートを使ってもっと詳しく細かく各学部の過去問解説を動画で行っています。

2012年度 慶應大学文学部 小論文過去問題の解説

 

~各学部が重視する価値観とはどのようなものか~

 

こんにちは。牛山です。
今日は慶應大学の文学部、2012年度の過去問題、第一回目を配信したいと思います。
ご興味がない方はここでメールを閉じてください。

 

【1】各学部の価値観

 

 今日はいきなり、過去問題の解説を行わず、まず小論文を書く時に重要になる価値観の解説を行います。慶應大学を目指している人は、どの学部を受験するとしても必見の内容ですからぜひ読んでおいてください。慶應大学を受験しない人も、その大学の価値観を調べる事で合格しやすくなることがありますから、今回のメルマガを読んでみてください。


 文章を書く時には、なるべく価値感を意識する必要があります。ここでいう価値感とは、各学部ごとで大切にしている価値観と言う事もできます。ちなみに、皆さんが感じている通り価値感に優劣はありません。例えば、皆さんが人を評価するときにある人は、頭がよければ、高く評価すると考えている人もいます。ある人は、ファッションセンスが、よければ、それだけ高く評価するという価値感を持っている人もいます。ある人は、精神的に高潔であれば、それだけ高く評価するという価値感を持っている人もいます。それぞれの人によって価値感は違いますし白か黒かというようにはっきりわかれているようなものでもありません。ですから、ここでお話していることは、このような価値感でなければならないというような価値感の押し付けの話ではありません。


 少しわかりにくいかもしれませんので、極端な事例を挙げましょう。慶應大学の文学部を受験する女のコがいました。このこの担任の先生が小論文の添削をしてくれることになりました。慶應大学の文学部の過去問題を解いて先生に提出しました。小論文の問題は文化とエンターテイメントについて自由に論じるというものでした。先生は、次のように添削をしました。


---------------------------------------------------------------------------------------------
この程度の論では慶應大学に合格できない。
エンターテイメントはお金になるからいいというくらいの極端な事を書かなければ合格できない。
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 もちろんですが、この先生は間違っています。まず第一に他の人が書いていないようなことを書くことによって、評価されるわけではありません。そしてここが最も重要な部分ですが、功利主義的な価値感から主張をすると評価が低くなります。


 実学を重視するというのは、利益を重視するということではありません。広く社会世の中のために利益を提供することを指して実となっているのです。


 社会の多くの人にとっての価値とは、価格が安いというような価値だけではなく社会の役に立つ、問題が解決するという事も大きな価値です。ましてや文学部でこのようなことを書くと、採点者に拒絶反応も生まれるかもしれません。


 それぐらいに慶應大学の文学部の価値感にそぐわない価値観と表現する事ができます。それでは私たちは小論文を書くときに一体どのような価値感でもって文章を書けばいいのでしょうか。それぞれの学部の価値感が違ったとしても、大学の価値感は同じですので、まず、大学が持ってる価値感はどのようなものなのかをしっかり理解する必要があります。

 

【2】慶應大学の価値観

 

~慶應義塾の価値観~

 

 価値観を知るには、目的を知ることが一番重要です慶應大学の目的を確認してみましょう。

 

===引用開始===
「慶應義塾は単に一所の学塾として自から甘んずるを得ず。其目的は我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、之を実際にしては居家、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、躬行実践、以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」
===引用終了===

 

重要なポイントをピックアップします。

 

1、 品格
2、 大志
3、 実践(知行合一の考えです。)
4、 リーダーシップ

 

 この慶應大学の目的を示した文章からは、少なくともこの四点が、伺えます。功利主義的な価値感ではありませんね。創立者の高いレベルでの気概を感じる事ができます。この創立者の精神に応えるべく、慶應大学のOBは政界、財界で広く活躍しています。単に活躍するだけに留まらず、独立自尊の精神に則り、インテグリティーを重視した活動を行っている方も多いかと思います。慶應大学の文学部の価値感とはこのような創立者が大切にしている価値感と文学部特有の価値感が一緒になったものだと考える必要があります。文学を学ぶ目的を考えてみましょう。もちろんこれは個人的な目的のことではありません。大学として文学を研究する本来の趣旨(本旨)は何でしょうか。

 

 文学には、我々国民の教養の為の教育的側面の価値もあれば、文化的遺産としての価値もあります。時代と世代を超えて、広く人類が共有する叡智であり、知の巨人が残した知の宝とも言えます。この文学を学ぶ文学部の入学試験で、儲かるからいいというような、功利主義的な価値観で自分の論を展開するような言説が果たして高い評価を得ることができるでしょうか。もちろんできません。このようにそれぞれの学部でどのような価値感があるのかということをきちんと意識した上で、大学と学部の価値感にそぐわない事を書かないようにすることは大変重要なポイントです。慶應大学の場合は、この価値感という意味で他の大学と大きく違います。

 

 日本最古の歴史を持つ大学として、そして福沢諭吉という稀有な人物が設立した学塾として特有の価値感がありますので、この点に十分注意をして文章を書くようにしましょう。独立自尊が最も慶應大学を象徴する価値観とも言えます。ここで大変重要なポイントですので、独立自尊を確認しておきましよう。

 

===引用開始===
「独立自尊」は慶應義塾の教育の基本である。義塾の創立者である福澤先生は、生涯を通じて終始、一身の独立を論じ、一国の独立を念じ、志操はあくまでもこれを高く堅持し、いやしくも卑屈賎劣なことは寸毫(すんごう)といえども仮借しないところがあった。しかも、ただ口でいうだけでなく、常に身をもってそれを示された。その福澤先生が、晩年に、小幡篤次郎以下数名の高弟たちに長子一太郎を加えて、義塾の主唱する道徳綱領の編纂を命じられた。明治33年(1900)2月11日に脱稿して、同月24日の第404回三田演説会で発表された29か条の「修身要領」がそれで、これこそは先生の右のような平素の主義主張を簡潔明瞭に集約したものなのであった。つまり、独立自尊の人たるべき真の在り方をまさに最も端的に説いたものといってよく、たとえば「心身の独立を全うし自から其身を尊重して人たるの品位を辱めざるもの、之を独立自尊の人と云う」(第2条)といったぐあいに、それが条を追ってしるされているのである。
===引用終了===
慶應大学ウェブサイトより引用

 

 ここでご紹介したような価値観に沿っている事が、まず一番重要なポイントです。今年の2012年度の慶應文学部の問題も、意味が分からない・・と思っていた人もいるかもしれませんが、このあたりの事を考えれば、もう少しイメージが膨らむと思います。

 

【3】規定軸による解法とは?


 ここからは、規定軸による解法をご紹介します。

 

 牛山が提供する新しい解法の一つです。2012年度、文学部設問2では、あなた自身のこれまでの読書経験を踏まえた上で、本の将来像について320字以上400字以内で論じなさいとあります。

 

 何を書くべきなのでしょうか。本の将来像について、どの方向に論じるべきなのでしょうか。この問題では、一見すると、どの方向にも論じることができます。ですから受験した人は面食らってしまった人もいるかもしれません。

 

 このように自由度が高い問題が出題された時は、いくつかの指針から解答の作成方向を規定していく事が極めて重要です。慶應大学のすべての学部について言える事ですが、特徴としてどのような方向にも書く事ができるような文章を書く事が求められる可能性があります。

 

 このようなどのような方向にでも書く事ができる場合には、観や直感で対応するのではなく、一つずつ規定していく事が、(あくまでも一つの)方法になります。このように、私が提唱する慶應大学専用の規定軸による解法は、テクニックではありません。設問の題意を正確に把握する方法として、考えましょう。

 

【4】自由度が高い場合の、論述方向を決める規定軸

(1) 〈規定軸1・・・趣旨〉

 

 

 例えば今回のケースで言えば、先ほどご紹介した慶應大学と、文学部の趣旨を鑑みて、【本の将来像】を考えた場合にどのような事が言えるでしょうか。(前回のメルマガで価値観についての考察を一緒にしましたね、趣旨は何かをそこから考えましょう。)

 

(2) 〈規定軸2・・・経験〉

 

 【あなた自身のこれまでの読書経験を踏まえた上で】とありますので、論拠に自分の経験も入れる事で説得力を出すのだとすれば、どのような経験を入れ込むのが理想的でしょうか。

 

(3) 〈規定軸3・・・テーマ(電子書籍)〉

 

 課題文の内容である電子書籍の台頭による従来の書籍と電子書籍の共存の未来像について書かなければなりません。※この年の問題では、課題文が与えられており、その課題文の中で電子書籍も含めた本の未来像について述べられています。これらのテーマから外れては理想的な答えになりません。電子書籍だけがもちろんテーマではありませんが、出題者の関心がどこにあるのかを考える事がテーマ以上に重要ですので、比重を電子書籍に置いて未来を考える事を規定軸の一つとして設定します。

 

(4) 〈規定軸4・・・設問の要求〉

 

 今回の問題は本の将来像について、論じなさいというものです。したがって、当然ですが、本の将来像について述べなければなりません。

 

(5) 〈規定軸5・・・論じなさい〉

 

 あとで詳しく説明しますが、今回の設問の要求は論じなさいとなっていますので、単に述べるだけではなく、論理的に述べる必要があります。

 

 論理的であるということは理由やデータが述べられている必要があるということです。単なる個人的な思い込みではなく、事実に近い考えを述べる事が要求されています。よくある解答例で文学部なので、文学の雰囲気を出すように書かれたものがありますが、論じなさいという要求でエッセイのように書いては、点数はありませんので気を付けましょう。

 

 これらを総合的に考えると、解答の方向性が見えてきます。もちろんこのような方向で書かなければ合格できないというわけではありません。あくまでの一つの無難な方向性の話です。まず、慶應大学は実学を重視する大学ですから、世の中に対しての価値という側面から、電子書籍の台頭を考え、それが文学部の価値観、人類の叡智の集積としての書籍・文化財産としての書籍という意味での価値を考察し、課題文を踏まえるわけです。

 

(6)〈解答例〉400字以内の場合

 

 私は今まで以上に、精彩を放つ価値を 本は持つようになると考える。従来の 紙媒体の書籍の価値をより引き上げる 電子書籍文化が生まれ、紙の書籍と電 子書籍が、相乗効果を発揮しながら共 存を続けていくと私は考えている。
 理由は大きく二つある。読書の質的側 面と、機能性の側面である。紙媒体の 書籍の価値は電子書籍が増えても無く ならない。私は積読を通し、インスピ レーションを生むことが多かった。本 を床に並べて20冊程度置いておき、 それを眺めて著者と対話をするのであ る。そして読みたい時に読む。このよ うに生活空間の中に存在する紙の書籍 は、積読の効果がインスピレーション や動機づけにつながる。二つ目の理由 は書籍の機能性にある。電子書籍は、 優れた書籍へのアクセスを容易にする。 著作権が切れた本は、ウェブ上で共有 されリンクされる。
 以上、将来における本の価値は益々共 存により高まり、より精彩を放つよう になると私は考えている。

 


【5】問題設定はなぜするべきなのか?

 

 問題設定は必ずしなければならないわけではありません。問題設定はしなくても大丈夫です。私は、小論文技術習得講義(エール出版社)で、モンイリケツという型を使う事をお勧めしていました。ですから何が何でも問題設定をしてその後に、この型にはめようとする人が中にはいますが、私は決してガチガチの型にはめることを推奨しているわけではありません。問題設定をしないことがあってもOKです。しなくてもかまいません。 私は小論文試験に関して最も、重要なことは、大学の期待にこたえることだと考えています。ですから、特定の書き方やテクニックで点数を確保するというような事は一切考えていません。

 

 それでは大学では一体どのような事を期待しているのでしょうか。一つだけ確かなことは、社会出てから活躍する人材を求めているということです。社会の先導者になる事を目指している大学が、社会で少しも使い物にならないというような厳しい判断をされる人をたくさん排出しようとしているはずがありません。

 

 従ってまず第1に考えるべきことは社会で活躍する人とはどのような人物かということです。社会で活躍する人は、次のような人物です。

 

1、 コンピテンシー能力がある。
2、 人に自分の考えをはっきり伝える事ができる
3、 自分の考えを持ち、自分の頭で考える事ができる
4、 本質を見抜くことができる

 

 この他いくらでもあるのですが、この辺で辞めておきます。右に列挙した2を見てください。人にものをはっきり伝える力、これが大変重要です。政治家になっても、企業の中でリーダーになっても、このような力が無いと世界で活躍できません。この意味で、問題設定をするのは、試験のテクニックではなく、社会に出てからも人材として活躍する為の力を養成する意味や、試験で最低者に対して礼を尽くす意味もあるのです。

 

【6】問題設定をする意味(入試だけではなく、入試後も)

(1) 理由1 人の注意をひきつける役割

 

 問題設定には、人の注意をひきつける役割があります。採点者は、楽しみながら採点をしているわけではありません。長時間興味のない文章を読み続けています。注意力も相当に集中力がある人が長時間耐えているわけではないならば、散漫になるのが普通の人間です。そういう状態の人の注意をしっかり引こうと思ったら、意見やデータを述べるのではなく、問題を設定して、興味を引く必要があります。なぜ○○なのか?という問いが目の前に現れると人間の脳はその問いに対する答えを頭の中で無意識に検索し始めます。採点者も同じく、頭を働かせる必要があります。

 

(2) 理由2 論点の明確化

 

 多くの小論文の答案には、論点がありません。恣意的にエッセイのようにあっちにいったりこっちにいったりと、話がズレる事も珍しくありません。若い受験生が書いた文章ですから、仕方がないことです。このような話のズレは当然ですが、低い点数につながります。問題設定をすれば、書き手も迷う事が少なく、論点を明確にしたまま論述していくことをやりやすくなります。

 

(3) 理由3 設問の要求に答える

 

 小論文は設問の要求に答えなければなりません。設問の要求(聞かれていること)に答えていない小論文は、点数はありません。問題設定をする時に、設問で聞かれている事(論点)を設定すれば、受験生も間違うリスクを減らしやすくなります。

 

(4) 理由4 採点者に分かりやすい

 

 問題設定をしている小論文は、採点者にとっても分かりやすいからです。採点者はまず第一に、設問に答えているかどうかを見ています。設問に答えていない小論文に点数を出すわけにはいかないからです。

 

(5) 理由5 話を分かりやすくする(テーマの明確化)

 

 問題設定をしている文章は、何について書かれた文章なのかがよく分かります。問題設定をしていない文章は、何について書かれた文章なのかがよく分からないものも中にはあります。何をテーマにした文章なのかを明確に伝えるのは、それなりに難し事ですが、問題設定をすれば、小学生でもそれが可能になります。

 

(6) 理由6 文字数を少なくすることができる

 

 社会背景を書いた場合、200文字くらい文字のスペースを使ってしまうこともあります。しかし、それによって自分の論述内容のレベルが引きあがっているわけではないので、(まだ考えも述べていない段階です)与えられた文字制限数を有効利用しているかどうかという点では大変大きな疑問があります。小論文の命は、論証であって、つらつらと自分の意見を述べる事ではありません。人の意見は評価できません。論証過程は評価の対象になります。したがって小論文の命である、論証部分の文字スペースを多く取る事が重要です。論証部分で文字のスペースを多く取るには、社会背景で文字数を使ってしまわない事が大変重要です。以上が問題設定についての解説です。参考になれば幸いです。

 

 

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