1. 進化するテクノロジーと変化する環境
テクノロジーは日々進化し続けている。また同様に、私たちが住む現代社会も、その最先端のテクノロジーが浸透し、変化し続けている。問題解決にいかに原理原則が存在しようとも、一定の思考方法ですべての問題が解決しない原因の一つはここにある。私たちが見聞きしていることはこの瞬間にもすぐに陳腐化し得る。今までは通用しなかった方法がある日突然産声を上げて、世界のルールを一瞬で変化させることもある。今までは有効だった方法が全く通用しなくなり、産業そのものが突然死することもある。それにも関わらず一定の方法がハウツーレベルで有効であるなどという考えそのものがおこがましいとしか言いようがない。
2. STP分析が無いと問題解決ではない?
私はSTP分析が無ければ経営学では問題解決ではないということばを聞いたことがある。なぜSTP分析というフレームワークを用いなければ、それは問題解決につながらないのか。その点についての有効で説得的な解は聞いたことは無い。もちろん、STP分析と言われる手法を用いて現状を分析すれば、スタンフォードの教授でも、文句は言わない内容になるかもしれない。しかしなぜその分析軸を評価するのかという問いにすらこたえられない人がそのフレームワークを使うようになれば、もはや形骸化した手法と言わざるを得ない。もちろんそのようなものの先に真に有効なアプローチが存在する道理はない。
3. 左脳的アプローチと右脳的アプローチ
物事を言葉で捉えるのは左脳的アプローチである。一方で、物事をイメージで捉えるのは、右脳的アプローチである。左脳は論理や言葉をつかさどる脳であり、右脳はイメージや芸術を捉える脳であると一般的に言われている。もちろんこれらの説明は極めて大雑把なものであり、実際の脳の活動は多岐に渡り、このように簡略化はできないものである。しかしながらあえてこのようなシンプルな対立構造で物事を捉えたのには理由がある。
物事の解決を試みる際に、その内容を質実剛健にするために、言葉で物事を捉え、定性的な勘や憶測に頼らず、定量的に分析すること(左脳的にアプローチすること)には、狂いを無くすという一定の意義と価値がある。
一方で、このような質実剛健なアプローチには、物事の複雑性を感じ取り、既存の枠組みの外で思考するという大胆な発想が欠落するデメリットも存在する。
現代は科学万能主義的な考えが支配的であり、総じて「人の心が大きくなった社会」と言える。情緒的には自然に対する畏敬の念があれども、科学により世界を支配し、世界を支配できているという考えも次第に根強くなってきた。
「科学的かつ分析的アプローチは、合理的であり、この合理性はいかなる状況下でも有効に機能し得る」という考えは逆説的だが、逆に思考力を落とすことが分かっている。極めて皮肉な現実がここにある。だからこそ私たちは「自分の心が大きくなること」と全力で戦う必要があるのである。
4. 問題解決に正解など無い
問題解決には、正解は無い。その理由はここまでに述べた。(1)変容性(2)複雑性(3)思考の主体などに原因がある。したがって特定のフレームワークで万能の問題解決ができるということも甘い幻想である。
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