X 判断基準
1 論点の再掲
《論点》「救うことができるいじめ被害による命は救うべきだ」という問題を考察する上での重要な判断基準とは何か。自殺は悪いことか?という論点がズレたものは判断基準にはなりえない。また論点がズレているだけではなく、自殺は悪いことかという漠然とした問いは論理的には意味をほとんど成さない。本来論考と呼べる次元の問いとは、真偽を判定できる命題と呼ばれるものである。
2 帰責性
ここまでに取り上げたように、本人の帰責性の問題も無視すべき問題ではない。しかしながら、このポイントは、本人に原因がある問題(原因論)と本人に責任がある(責任論)を混同している。仮にいじめ被害者に原因があったとしても、一方的な加害行為は許されない。したがっていじめ被害者に責任は無い。
3 対処可能性
対処可能性がどれほどあるのかということは重要な問題である。
4 文化、学校、教師、クラスメートなどの他の因子
(2と重複するため、同一軸で評価)
5 加害行為の悪質性
いじめのニュースでは次のような報告がなされている。
・加害者とされる生徒は「死んでくれて嬉しい」・「死んだって聞いて笑った」とアンケートに記載した。
・ミイラのように体中をテープでぐるぐる巻きにした。
・体育館の裏で暴行した。
・足にガムテープを貼り、勢いよくはがしていた。(被害者は痛がっていた。)
・葬式ごっこをした。
・フェルトペンで顔にひげを書き、踊らせた。
・サンドバック状態でプロレスごっこの相手にした。
・モデルガンの標的にした。
・野球拳を強要して服を脱がせた。
・継続的に集団で毎日悪口を言った。
・集団で毎日無視をした。
などなど、ここに挙げるときりがない。
Y 恐るべき社会の到来と自衛手段
1 思考力と議論力の重要性
ここまでに見てきたように、定量的に物事を把握しない場合、単純な論点のズレを、物事の前提に鋭くメスを入れているように錯覚してしまう。真に論理的に物事を考察する力が下がれば下がるほど、あなたが判断ミスをするシーンは増える社会となった。
2 テンプレート思考から実践思考への転換
このような社会で我々がしっかりと物事を考えるには、テンプレート思考を脱し、自分の頭で考える習慣が重要だ。人はテンプレートで考えれば考えるほど、考える力が無くなる。テンプレートを「正解」と認識するようになるためだ。
Z まとめ
議論を展開する上での最低限のポイントについて今回のウェブブックをまとめる。
・反論者の論点のズレに注意する。
・反論は、論点上で行う。
・定性的な考えを行わず、定量的に考える。
・重要な前提と些末な前提を見分ける。
・議論の前提は一つではないことを肝に銘じる。
・重要判断基準は何かを問う。
・何が問題になっているのか、前提の詳細を把握する。(いじめを苦にした自殺者の救済など)
[ 最後に「いじめ問題を考える」
最後に、以下の内容を共有したい。いじめ問題を社会的な視点で捉えるニュース映像と、レディーガガの映像である。
1 ゲイを告白した男の子が自殺したニュース
【ジェイミー君の両親と姉のインタビュー】
2 その男の子の追悼歌を歌うレディーガガ
【レディー・ガガ「Hair」ゲイでいじめられ自殺したジェイミー君に Lady Gaga】
今回のウェブブックで取り扱った議論の内容は、以下のウェブサイトで公開している。
⇒ 構造議論チャート
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